緋弾のアリア〜影の武偵〜

□Bullet67
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放課後。予定通り夾竹桃のところへ行く前に武偵病院に寄って、目的の4人がまとめて入れられた病室へと足を運んだオレは、入って早々飛び付いてきたバカ理子を軽やかに避け――体調が万全に近ければ余裕だ――つつ、もう完全に制服を着てここにいること自体がおかしな3人に目を向けると、リーダーであるアリアはようやく来たかみたいな感じで腰に手を当てオレを見てきて、白雪はササッとオレ用にお茶を準備し始め、レキはいつも通りジッとオレを見ながら足元のハイマキの頭を撫でていた。


「もう退院しろよお前ら……入院もタダじゃないんだぞ」


「何で入院費なんて気にするのよ。京夜はちょっとズレてるわ」


ああ……そういやリアル貴族だったな、このピンクツインテールは……
オレのズレた発言は挨拶代わりの冗談ということで流しつつ、勧められた椅子に座り白雪からお茶をもらって、その隣にわざわざ移動して座ってきた理子はとりあえず無視して、時間に余裕もないので早速用件だけ伝え始める。


「ジーフォースは想像以上に手強いな。弱点という弱点が現状さっぱりだ」


「それはある程度予想済みよ。まさかそんなことだけ報告しに来たわけじゃないでしょ。要点はまとめて簡潔に」


「そのつもりだ。学校に通ってるジーフォースは今、戦闘力を面に出さないで『可愛い後輩』って感じで周りの女子生徒を味方につけていってる。今は1年連中に拡大してるが、その影響力は侮れないな。個人的には催眠術の類いに近いものを感じてる。だから今ジーフォースに何か仕掛けるといらんやつらを敵に回しかねないな。親衛隊みたいな守り方されてるし」


一応、穏健派としてアリア達が慎重になるような情報を前に出して報告してはみるが、それを聞いても簡単に引き下がらないのが困りもの。それならそれでどうやって1人にするかとか、本性を暴き出してやろうかとか会議を始める始末。


「んで、行く末は自分を頂点にした新体制を武偵高に敷く予定らしい。弱いやつが強いやつに従うっていう合理的な、な」


どうせ言ったところで意味もないので止めもせずに報告を続けると、それがとどめになったのか怪しい笑みを浮かべたアリア達――レキは無表情だが雰囲気がちょっと変わった――は、揃って同じようなことを口にした。


「そういう分かりやすいのいいわね。やれるもんならやってみなさいって感じ?」


「キンちゃんとの平穏な日々を取り戻すためなら、星伽の禁忌を破ってでも下らない野望を阻止して、あの女を討ち取ります!」


「調子に乗ってるやつを地獄に叩き落とすとか胸熱ぅ! 理子ワクワクしちゃう! くふっ、くふくふっ!」


「…………以下同文」


結局のところ今のアリア達に何を言ってもポジティブに考えるくらいにはやる気に満ち溢れてるので、これ以上アドレナリン的なものが出ないようにこの辺で報告はやめておく。というかこれ以上出しようもない。
ので、やる気満々な4人に対してやれやれといったため息を吐いてから、最後にアリアだけを病室の外へと連れていって、出てすぐの廊下で立ち話。内容は当然間宮のことだ。


「お前は間宮の戦姉だから一応伝えておくが、ジーフォースの形成するグループに反抗的な間宮とその仲間がピンポイントで狙われて追い詰められてる。訳あってジーフォースが直接手を加えてこない状態ではあるんだが、それでも危ないところまで追い込まれてる」


「あかりが? そう…………あの子には手が負えないと思って遠ざけたつもりだったけど……。あかり達が本当に危なくなったら教えてちょうだい。最悪こっちが強行することであかり達を助けられるかもしれないし」


「了解。オレの役割的に真っ先に加勢はしにくかったから、最悪の場合はそうさせてもらうよ。そうならないことを祈ってはいるがな」


間宮のことを話してもすぐには動かない辺り、感情的になっていても思考は冷静なようだな。
それが確認できて安心したオレは、そろそろ顔を出さないと夾竹桃からどんな文句を言われるかわからないのでアリアに一言告げてから足早に病院を出て夾竹桃のいる女子寮へ直行。幸い次のページの執筆に集中していたので、グチグチ言われることもなく仕上げろとばかりにテーブルに置かれたページを指示通りに仕上げにかかる。


「そういえば今日の昼休み。自殺させられそうになってた間宮に加勢してたが、その後何がどうなって屋上から追い出されたんだよ」


その作業中に、少し余裕があったので何気なく昼休みの件について問いかけてみると、急に手が止まった夾竹桃は途端に禍々しいオーラみたいなものを放出してまた手を動かし始めた。こ、怖い……


「ああ……あなたあの場を覗き見てたのね。さすが覗き趣味の変態。才能の無駄遣いとはこの事ね」


「…………かなめをマークしてただけだ。オレへの悪口はいいから、差し支えなければ教えてくれ」


「くだらないことよ。あの女、どういうわけか急に自分の顔を殴って倒れて、あたかも『私達に暴力を振るわれた』かのように場を仕立て上げて、そこにあの取り巻き達がやって来て弁明の余地もなく追い出されたってわけ。おそらくは自殺した間宮あかりを発見する人間をあらかじめ仕込んでおいたのでしょうけど、それが叶わないと見て心象を悪くする方向にシフトしたんでしょ。悪女っていうのはああいう女を言うんでしょうね」


と、予測も兼ねた夾竹桃の話にオレも大方納得。確かに暴力を封じられた状況で夾竹桃と未熟なりにも間宮の2人を相手にするのは骨が折れそうだし、時間をかければ呼び出していたのであろう取り巻きに自分にとって不利な場面を見られかねないとあってはそうせざるを得なかったのだろう。


「あれに関わるのはあまり乗り気ではなかったのだけど、女の友情を弄んだ罪が重いことを思い知らせてあげることにしたわ。あの女にはいずれどこかで痛い目を見てもらうとして、今は口を動かすより手を動かしなさい。こちらもこちらで重要案件よ」


そんな話を聞いていたら、こいつまでアリア達みたいなことを言い出して頭を悩ませるが、いつのまにか手が止まっていたのを指摘されて、色々思うところがありながらもすぐに作業を再開させた。

なんか……問題がどんどん面倒臭い方向に進んでいってないか、これ……



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