アクセル・ワールド〜蒼き閃光U〜

□Acceleration Second101
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『《トリカゴ(キューブ・ケージ)》』

 物凄く堂々と道路の真ん中を突っ切ってエネミー達のいる場所付近まで接近したタギツヒメとイチキシマヒメは、さすがにその存在に気づいたバイスとアルゴンに反応されてしまう。
 しかし《変遷》によって復活したタギツヒメの武装類の1つである水晶を1つ砕いた後、エネミー、カタフを含めた対象が力の試練の時に出てきたキューブに閉じ込められる。
 あのキューブは対象の大きさに絶妙なサイズで調整するようになってるのか、エネミーには超巨大なキューブが出現し、カタフ達デュエルアバターには相応のサイズが出現。
 そして予想通り、あの発光空間も丸ごとキューブに閉じ込められたところから、そこにコスモスがいたことが確定する。

『《タケミカヅチ)》』

 タギツヒメが個々で捕らえたのを確認するかしないかで、今度はイチキシマヒメが剣を抜いて雷を纏わせると、固まっていたエネミー達に向けてタケミカヅチを放ち、衝撃に強いキューブはそれに耐えながらもその威力で吹き飛び、10体いたエネミーは一気に3体にまで減少。
 キューブを破って戻ってくるまでの時間稼ぎでしかないかもだが、それにしても結構な勢いで飛んでいったので、千葉県まで吹っ飛んだかもしれない。
 残るエネミーもタギツヒメがキューブを操作して互いにぶつけ合うことで左右に吹き飛ばし海上へと放り出され、バイスごとキューブに閉じ込めていた最後の1体を処理しようとしたところで向こうも反撃。
 キューブは確かに強固な檻としての機能を持つが、そのステータスを無視する心意攻撃にはあまり効力はないようで、コスモスが放った破壊の心意によってカタフ以外のキューブが一撃で破壊されてしまう。

「いやぁ助かったわ会長はん。いきなりカッチカチの檻に入れられて閉所恐怖症になるとこやったわ」

「いやはや、毎度のことながら君には驚かされるよ、テイル君。まさかそちらのエネミーはお仲間というわけでもあるまいに……テイムもされた様子がない。不思議なものだね」

「御託はいい。それよりもこんなところでなぶり殺しとは良い趣味してんな、コスモス」

「なぶり殺しですか。端から見ればそう見えてしまうのかもしれませんが、私はカタフに対して悪意や敵意など一切ありませんし、全損させるつもりもないのですよ」

「だったらもっと平和的な話し合いってのができないのかしら。それが出来ないほどバカってわけでもないでしょ」

「カタフの決心はすでに話し合いのみでは揺らがないほど固まってしまっていますから、説得にも強引さが出てしまうのは致し方ないことなのです。とはいえ、こうして邪魔が入っては説得などと言ってもいられませんね」

 テルヨシ達の乱入にもまだ余裕がありそうな雰囲気の加速研究会は、短い時間で戦力分析をするように会話に応じてきて、超然とした雰囲気のコスモスの話に嘘がないのがわかる。
 どういうことなのか理解するには情報が不足しすぎているので、その辺を探ろうとしたら会話など不要とばかりにイチキシマヒメが風を纏った剣を振るってコスモス達を攻撃。
 その風はバイスの操るエネミーが持つ巨大な尻尾が振るわれることでかき乱されて威力を大幅に減退させられてしまったが、好戦的なイチキシマヒメとタギツヒメを面倒と見たか、バイスもエネミーの背中から影に沈みこんでコスモスの隣まで移動する。

「そちらのエネミーとはリンクが形成されているわけではなさそうですね。何かしらの利害が一致しているといったところですか。となると《四神》クラスのAIに成長していると見て良さそうです。そのようなエネミーがどこにいたのかはわかりませんが」

『ホワイト・コスモスとやら。そなた達のビーイングに対するぞんざいな扱いは目に余ります。その傲慢な振る舞い
。この世界の神にでもなったつもりですか』

『愚かな小戦士よ。その蛮行はいつかそなた達自身に返ってくることになろうぞ』

「バチでも当たる言うんか? ハハッ、そやったら会長はん含めてウチらはとっくの昔に裁かれとるわ。そうやないってことは、神様もウチらのやっとることにも寛容やってことやろ」

「少なくとも、我々は我々のしていることが絶対的な悪であるなどと思っていない。それはすでに伝えているとは思うんだがね」

「そのわずかな正義を貫くために犠牲になるものが多すぎるって話もしたと思うんだが、その辺は考え直したのかよ」

「多大な犠牲を払ってでも成さねばならない。そうしなければこの世界もまた滅びの道を辿る。これも以前にお伝えしましたよ」

「話すだけ無駄でしょ。世界を救うとか大義名分を掲げて悪にでもなろうってヒーロー気取りのコイツらは、そこに生きる私達を見ていない。救うっていうなら私達もまとめて救いなさいよ。それが出来ないからアンタらは受け入れられない。独りよがりの正義ほど滑稽なものはないわ」

 バイスの影移動も位置的に千葉方面に逃げるトンネルまで伸びてしまっているので、撤退するとなればもう止められないことは確実。
 話しながらバイスのそばに寄ったアルゴンの動きからもそこはもう諦めるとして、相変わらず話が通じない感じが否めない加速研究会にテルヨシも無駄な会話をしていると思う。
 そこをバッサリと切り捨てられるサアヤの言い分には拍手を贈りたいところではあったが、向こうも分かり合おうなどという気持ちは毛頭ないからか、肯定も否定もせずに言葉を飲み込んだようだ。

「私達は止まりません。あなた達もあなた達が守るもののために戦うのでしょうが、その結果がどうなるかは、楽しみにしておくとしましょう」

 結局はぶつかることでしか決着はないと言い切ったコスモスは、そのまま一礼して影に沈んだバイスと呑気に手を振ったアルゴンと一緒に影の中へと沈んでいき、あっという間にこの場から逃走。
 このまま戦っても向こうに分がありそうな気配はあったが、撤退したならそうしたくない理由もあるのだろうと考えて、コスモス達の撤退で沈黙していたエネミーが動き出し全員が臨戦態勢に。



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