魔法少女リリカルなのは〜風を纏う者T〜

□〜決意〜
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「……忘れてた……。」


現在、自宅前でうなだれている和人。


「アースラに滞在するって事はつまり、学校を休まなきゃいけないのか……」


管理局の手伝いをすることに浮かれ過ぎて、和臣との約束をすっかり忘れていた和人は、現在どうするか考えていた。


「……じいさんにはどうせ言い訳は通用しないし、正直に話してみるしかないな……」


その結論に至り、意を決して家の中へと入る和人。
家の居間にはソファに座りテレビを見る和臣がいた。なにか前にも見た光景だとか思ったが気にしないことにした。


「おお、帰ったか。おかえり」


顔だけ和人に向けて声をかける和臣。


「ああ、ただいま。じいさん、少し話があるんだがいいか?」


和人の問い掛けに了承したようにテレビを消して和人と向き合う和臣。
和人も和臣と対面する形で座り、話し始めた。





数分後、事の経緯を話し終えた和人は、和臣の返事を待つ。


「和人よ。すぐに着替えて表の庭へ出なさい」


突然の要求に戸惑いながらも、いたって真剣に言う和臣を言葉に従い、着替えにいく和人。

しばらくして、着替え終えた和人が庭へ行くと、そこには使い古された道着を着る和臣を姿があった。


「来たか、和人よ」


「な、なんだよじいさん、道着なんか着て何する気だよ!?」


「余計な詮索は要らん!構えろ、和人」


和人の言葉を切り捨て、自らも構える和臣。


「ちょっと待ってくれよ!まるで展開が読めな……!」


和人が言い切る前に和臣は仕掛けてきた。
その老体とは思えない俊敏さに対応が遅れた和人は、和臣の放った右掌底によって吹き飛び、塀に叩きつけられた。
その衝撃と痛みで怯んだ和人だったが、そこへ畳み掛けるように追撃の右回し蹴りを放つ和臣。
咄嗟に横に転がり躱す和人。和臣の蹴りはコンクリートの塀を粉々に砕いた。


かつてこれほどまでに本気の和臣を和人は見たことが無かった。
そして、やらなければやられると悟った和人は、ゆっくりと立ち上がり、真剣な眼差しをして構えた。








数十分後、柳流柔術の使い手同士の闘いはまだ続いていた。
お互いに一歩も退かない闘いに、いつの間にか近所の住民が駆け付け観戦するようになっていた。
闘いを見る者は皆、格闘技などわからない素人ばかりだったが、その人達から見てもわかるほどに二人の動き一つ一つは美しかった。まるで見る者を魅了するように、そして舞っているかのように闘う二人はただただすごかった。

しかし、それも永遠には続かない。遂に限界の近づいた二人が距離をとり呼吸を整える。
そして、一度大きく深呼吸し、その後すぐに二人は同時に前に出る。


先に仕掛けたのは和臣。和人の胸目がけて左の掌底を放つ。それを和人は時計回りに回転させて躱し、その勢いで右の裏拳で和臣の胸を狙う。和臣はそれを右肘ですくい上げ、身を屈めて躱し右回し蹴りで和人の足を払う。
足を払われ、背中から落ちる和人に和臣は止めといわんばかりに腹目がけて右の瓦割りを打ち下ろす。
和人にそれが直撃したと思われたが、当たる瞬間に自ら身体を時計回りに半転させてダメージを受け流し、両手足で着地しすぐ様和臣の腹へ渾身の右掌底を打ち込んだ。
それを受けた和臣は三メートルほど吹き飛び、仰向けに倒れた。


「うむ、儂の負けだな」


自分の負けを認めた和臣は上半身だけ起こし、和人に言葉をかけた。


「お前は強くなったな。その実力があれば、向こうの方々に迷惑をかけることもあるまい」


「ということは、行ってもいいのか!?じいさん!」


「ああ、学校の方には儂の方から連絡しておく。しっかり役に立ってこい!」


その言葉を皮きりに周りにいた観客が一斉に拍手を送った。
その拍手は、両者の健闘と和人の門出を祝うかのように辺りに鳴り響いた。



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