魔法少女リリカルなのは〜風を纏う者U〜

□〜交渉〜
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〜時空管理局本局・フェイト・T・ハラオウン執務官の仕事部屋〜


ここにテイル・マクレミッツはやってきていた。しかしその部屋の主人であるフェイトの姿はどこにもなく、いるのはフェイトの執務官補佐であるシャーリーだけであった。


「フェイトの奴はどこに行ったんだ?シャーリー」


「フェイトさんなら調べ物を私に任せて霧島執務官のいる世界に向かわれました」


「……何で?」


「戦力は多いに越したことはないって言ってましたから、おそらく救援に行ったんだと思います」


それを聞いて大きなため息が出てしまうテイル。


「まあいいや。それならそれでオレとシャーリーが頑張ればいい話だしな。何としてもオルテス司令の陰謀を暴く。やるぞ、シャーリー」


「はい!頑張ります!」


二人はそう意気込んで調査を開始した。







調査開始から二時間弱。テイルはここ最近のオルテス司令の行動を調査していると、気掛かりな点を発見しシャーリーに話し掛ける。


「なあシャーリー。オルテス司令直々に出向いて管理世界内の病院の視察に行く理由ってあるもんなのか?」


「救助者の受け入れ先の確保や変更の際は直接交渉に出向いたりはするでしょうけど、ここ何年かはそんな事例は聞きませんよ」


「……和人の保護した少女は『触診で病状を正確に診察する能力』を持ってる。ならその能力を十二分に発揮できる場所は……」


「病院……ですか」


「だな。となればオルテス司令が視察に赴いた病院を片っ端から調べていくぞ。おそらくそのいくつかがオルテス司令と繋がってるはずだ」


「ちなみにどのくらいの数の病院を回ってますか?」


「最初の視察からだと全部で56件だな」


「……半分ずつやりましょうね。テイルさん」


「当たり前だ。56件なんて一人でやってたら一日かけても終わんねえよ」


「ですよね〜。はあ……」


シャーリーは一つため息を吐くと、気を取り直して作業に取り掛かり、テイルはコーヒー片手にすでに作業に取り掛かっていた。













場所は戻って和人のいる世界。ここでも変化が生じていた。


「オラー!霧島執務官!隠れてないで出てこい!こっちにはてめぇの部下がいるんだ!こいつが見えてんならおとなしく出てこい!」


森林地帯一帯に響くであろう大音量で空に上がりながら叫んだのはボルトだった。その右腕には手足を縛られたティアナが持たれていた。
ボルトの声は当然和人の耳にも届いていた。


「これでおとなしく出てくるかしら?」


ボルトの真下の地上にいたウインがフラムにそんな質問をしたが、フラムは至って落ち着いて答えた。


「出てくるさ。彼が資料通りの男なら、仲間の命の危険で黙ってはいないさ」


「資料通りの男なら、ねえ……」


ウインはその言葉が気になったのか、何かを考えていた。


(本当に資料通りの男なら、たとえ出てきてもおとなしく交渉に応じるとは思えないけどね……)


ウインがそんなことを考えていると、森林地帯の一角から空に上がる一つの魔法弾が見えた。その魔法弾は飛行機雲のように光を残し、上げたであろう地点を表していた。


「……どうやら資料通りの男だったらしいな。行くぞ、ウイン」


フラムはその魔法弾を上げたのが和人であると確信し、ウインに促すと空にいるボルトにも声を掛け移動を開始した。








数分後、和人の下へとやって来た三峰将は、少し開けた場所で和人と対面した。和人はバリアジャケットを着たまま、メアリスを傍に置き三峰将を見据えていた。


「さて、頭の良い執務官様なら我々の考えはわかっているはずだがどうかな?」


「……メアリスとティアナを交換するってことだろ?」


和人の言葉に満足そうな顔をするフラム。


「わかっているなら話は早い。まずは武装を解除してデバイスを置いてもらう」


「ならそちらも同じ条件で頼むぞ」


そう言って和人は武装を解除してサイクロンを地面に置いた。
フラム達もデバイスを地面に置いて離れて、フラムがティアナを連れて和人に近付いていった。

そして和人とフラムが後一歩の距離でお互いに立ち止まり言葉を交わす。


「まずはその少女を渡してもらおうか」


「ならティアナの拘束を解いてもらうのが条件だ」


「念話や怪しい挙動を見せないならな」


フラムのその言葉に頷く和人。それを確認したフラムは、ティアナの拘束を外し腕の関節を固め押さえ込む。


「これで文句はないな。では少女をこちらへ」


フラムは余裕の笑みを浮かべて和人にそう言う。和人は一瞬だけティアナと目を合わせ、そのあとメアリスをフラムの前に出した。


(……おかしいわ。『素直すぎる』。こうもあっさりことが進むなんて……)


フラムと和人を見ながらそんなことを思っていたウイン。
そしてメアリスがフラムの手に渡ると、フラムはティアナを和人に投げ渡しゆっくり和人から離れていく。

そして少し離れた辺りでウインがこちらに近づく魔力反応に気付き声を上げる。


「フラム!何か大きな魔力反応が近付いてる!早くこっちに……」


ウインはフラムに叫ぶとほぼ同時に和人とティアナが動きだした。
和人はフラムへと急接近してメアリスを奪還しようと動き、ティアナは和人と反対方向に走りだした。

ウインはそれを見てフラムのデバイスを投げ渡し自らもデバイスを拾い和人を迎撃しようとした。
その時和人はフラムがデバイスを手に取った瞬間に、得意の接近戦でフラムを吹き飛ばしメアリスを取り戻し、それと同時にティアナがサイクロンを和人に投げ放ち、和人はそれを見ずに受け取りすぐに武装して急いでティアナの下へ移動し両腕にメアリスとティアナを担いでその場から離脱した。

その後を急いで追い掛けようとした三峰将だったが、後ろから近づいてきた特大魔法に巻き込まれ、足止めされてしまった。



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