魔法少女リリカルなのは〜風を纏う者U〜

□〜協力〜
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「ヴィヴィオ、この子があなたに会わせたかったメアリスです。歳はあなたと同じだから、仲良くしてあげてね」


シャッハに紹介を受けたメアリスは、ヴィヴィオと顔を合わせると不思議そうに見つめていた。対するヴィヴィオはメアリスをキラキラした瞳で見つめて、


「私、高町ヴィヴィオって言います!よろしくね、メアリスちゃん!」


ヴィヴィオはハイテンションでメアリスに近付いて両手をとって自己紹介をした。
ヴィヴィオのハイテンションについていけなかったメアリスは、キョトンとした顔をしていた。


「ヴィヴィオ。始めからそんなハイテンションだとメアリスがついていけないだろ?」


そんな二人を見た和人はヴィヴィオに注意すると、ヴィヴィオはハッとしてメアリスの両手を放して謝る。


「ご、ごめんなさい!メアリスちゃんに会えたのが嬉しくて舞い上がっちゃいました」


そんなヴィヴィオを未だに呆然としてみていたメアリスに和人は言葉を掛ける。


「ほら、メアリスも自己紹介をしてあげろ」


和人に言われてオドオドしながらもメアリスは自己紹介をした。


「……メアリス……です。よろしく」


お互いに自己紹介を終えた二人は、そこで話題が無くなってしまい黙ってしまう。
見かねた和人はベンチから立ち上がり、


「メアリスはヴィヴィオほど言葉を知らないから、ヴィヴィオが色々教えてやるといい。オレとシャッハさんは席を外すからあとはヴィヴィオに任せるよ」


言ってメアリスの隣の席をヴィヴィオに譲ると、和人はシャッハと一緒に中庭から離れた。
二人になったヴィヴィオとメアリスは、しばらくの沈黙の後ヴィヴィオが積極的に話を始めた。

その様子を中庭を望める廊下で見ていた和人とシャッハは、笑顔で会話をしていた。


「ヴィヴィオに任せて正解でしたね。メアリスもまだぎこちなくはありますが、ヴィヴィオを受け入れているように見えますし」


「メアリスは多分、同年代の子とまともに話をしたことがなかったと思うんですよ。今は戸惑っていますが、ヴィヴィオとならすぐに仲良くなれるはずですよ」


「それは良いことなのですが、やはりメアリスがこのまま教会に居ついてくれるとは思えません」


「その話は昨日カリムさんともしました。それでもオレじゃあメアリスを幸せにはしてやれないんです」


頑なに拒む和人にため息混じりの息を吐くシャッハ。そこへ近付いてきたのは、先程まで話をしていたカリムとなのはだった。


「それでしたらその和人さんの不安を取り除いてみましょうか」


カリムは和人に笑って言ってみせる。それには和人もキョトンとしてしまう。


「カリムさんから話は聞いたよ。メアリスちゃんは和人君と一緒にいたい。和人君も本当はそれを望んでる。でも一人にしてしまう時間が多くなるからそれを拒んでるんだよね?」


なのはの問い掛けに素直に頷く和人。


「なら和人君がお仕事でいない時には、『私達』がメアリスちゃんを預かるよ。それなら和人君も安心でしょ?」


「『私達』?」


和人はその複数形の言葉が気になり問い掛ける。


「うん、『私達』。私とフェイトちゃん。それにはやてちゃんやヴォルケンリッターさん達も、協力してくれるって」


「……良いのかよ?」


それを聞いた和人は、少しの沈黙の後なのはに問い掛けると、


「なのはやフェイト達にだって仕事はあるし、ヴィヴィオもいるんだぞ?それなのに……」


そんな和人になのはは優しく言葉を掛ける。


「そんなの全然平気だよ?それにヴィヴィオだってメアリスちゃんと一緒にいられれば喜ぶはずだもん」


言ってなのはは中庭で楽しそうに話をするヴィヴィオとメアリスに目を向ける。


「……和人君は何でも一人でやろうとするからダメなんだよ。だから私達をもっと頼って良いんだよ?」


なのはのその言葉に自然と涙が溢れだす和人。それはメアリスを引き取れる嬉しさとなのは達の優しさに対しての感謝の涙だった。
突然泣き出した和人に慌てるなのは。それを嬉しそうに見ていたカリムとシャッハは、なのはを落ち着かせて和人が落ち着くのを待った。

しばらくして泣き止んだ和人は、なのは達と一緒に中庭にいるメアリスとヴィヴィオへと歩み寄り、メアリスの前でしゃがみこんで話を切り出す。


「メアリス。オレはお前を『オレの子供』として引き取りたいと思ってる。つまりはメアリスと一緒に暮らしたいんだ。メアリスはどうしたい?」


突然の申し出に驚くメアリスだったが、和人と一緒に暮らせるとわかると、瞳に大粒の涙をためて和人に抱きつき、和人の胸の中で泣きだしてしまった。
メアリスはその言葉を聞きたかった。ずっとその言葉を言い出せなかった。『一緒に暮らしたい』この一言が嬉しくて、ただただ嬉しくて、それが溢れたのである。

和人は自分の胸の中で泣くメアリスの頭を優しく撫でてやり、その温もりを実感していた。



数分後、泣き止んだメアリスを連れて一同はカリムの部屋へと移動し、これからの話を始める。その場にはグレイルの部屋にいたフェイトも合流していた。


「なのはさんの話では、現在なのはさんの家の隣の一軒家が空き家なんだそうです。そこでここは思い切ってそこに引っ越してみるのもよろしいかと思いまして」


楽しそうに言うカリムに「へっ?」といった顔をする和人。


「それなら色々と便利だし、和人君も仕事帰りにすぐに寄って帰れるでしょ?」


なのはが続けて言うと、和人はこれからなのは達に迷惑を掛けることも考慮して、それに賛成する。何よりメアリスのためである。そのくらいの出費は安いものである。
和人の了承を得たなのはは、ヴィヴィオにこれからのことを説明しだし、フェイトもメアリスに色々と話をしていた。


「……カリムさんでしょ?オレに有休をとるように根回ししたの」


和人は隣にいるカリムにそんなことを言うと、カリムは「なんのことかしら?」と言ってはぐらかしてしまう。そんなカリムに感謝しつつ、和人はメアリスとのこれからの生活に心踊らせていた。



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