魔法少女リリカルなのは〜魔の探求者〜

□STAGE00
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『それじゃあまずは君がここにいる理由からね。君は私達が乗るこの次元航行艦アースラの次元航行ルート上に気絶した状態で突然現れたの。それをうちの執務官が救助して今までそこで寝かされていたんだけど、だーいぶわからないって顔だねー』


「あー……えーと、要所要所の単語がよくわからないんですけど、とりあえず自分があなた達に助けられたことは理解できました」


「その理解だけで深くは教えず何事もなかったように帰してあげる手もあるのでは? 艦長」


そう言って医務室に入ってきた第三者は、黒髪の青年だった。青年は言ったあと入り口のドア付近の壁に寄りかかって腕を組みこちらを見てきた。


「それも一つの選択ではあるけど、エイミィの話だとこの子、和人くんには高い魔法適性があるみたいだし、うやむやなまま帰すのも危ない気がするのよねぇ」


「な!? エイミィ! 僕はそんな話聞いてないぞ!」


『だってクロノくん忙しそうにしてたから知らせるタイミングがなかったんだよぉ』


「……そうなると説明は不可欠か。紹介が遅れたな。僕はクロノ・ハラオウン。次元空間にいた君を助けてここに連れてきたのは僕だ」


「ハラオウン?」


「私の息子なの。お堅い子だけど、悪い子じゃないのよ」


「えっと……さっきから話がまったく見えないんですけど、僕は話を聞いていればいいわけですか?」


『そだねー。とりあえずは聞くだけ聞いて、あとで質問を受け付ける形にしよっか』


「和人君は落ち着いてるわね。大抵の人はこういう状況だと困惑しちゃうんだけど」


「いえ、十分困惑してますよ。ただ、騒いでも仕方ないので」


「なんだかクロノに似てるわ。妙に大人びてるところとか」


「母さ……艦長! そんな話は今はいいでしょ! エイミィ、さっさと話を再開してくれ」


『はいなー。それじゃあ始めは次元世界についてかなぁ』


それからエイミィさんは、何もわからないオレにも理解できるように、丁寧な説明で話を始めていった。

話によれば、この世界には異なる次元にいくつもの世界が存在しているということらしい。ここはまあ、宇宙を次元と例えれば理解できなくない。見えないだけで存在はするといった感じだろう。
そしてその数多の次元世界の秩序と平和を守り管理する組織『時空管理局』が存在するということ。その組織にリンディさん達は所属しているらしい。

それからそのために発達した技術が『魔法文化』であるということ。こればかりはファンタジー世界の産物だと思ったが、実際にクロノさんが使って見せてくれたことで信じるより他なかった。ただし、その魔法は完全ファンタジーということもなく、オレの世界でも利用される科学のプロセスやロジックが存在するらしい。つまりはちちんぷいぷーいと、アニメのように使えるわけではないということだ。

そんな魔法もやはり万人が扱えるわけではなく、体内にリンカーコアと呼ばれる魔力を生成する器官がなければ魔法は使えないとか。
話によると、オレにもそのリンカーコアが備わっているらしく、きちんと学べば魔法を扱えるようになるとのことで、話の途中ながらオレは今自分の置かれてる状況などどうでもよくなるほどにワクワクしていた。


『とまあ、こんなところかな。それで何か質問はあるかな? っていうか、一気に話したからわからないよね……』


「いえ、だいたい理解しました。わかりやすい説明ありがとうございました」


そんなオレの言葉を聞いてリンディさん達はきょとん。まるで予想してなかったのであろう答えが返ってきて、目を丸くしていた。


「君は今の説明だけで全部理解し飲み込んだっていうのか? ついさっきまで魔法の存在すら知らなかった君が?」


「話して下さったことすべてが嘘でないとわかったので、あとはそれを受け入れるかどうかで頭への入り方が違いますから。状況もなんとなく理解できたので、質問にも答えられるかと」


「こういうのを適応力っていうのかしらね。それじゃあ和人君が意識があるまでに覚えてることを言ってみてくれるかしら」


「えっと、公園で暇潰しをしていたら、風に乗ってチリッとした感覚がして、それを辿って行ったら黒い亀裂みたいなのがあって、石をぶつけてみたら急に周りの物を吸い込み始めて、僕もそれに吸い込まれて気が付いたらここに……って感じです」


「次元の裂け目か。あれは干渉しなければ何も起こらずに消えてしまうし、一種の人払いの作用も働くから、遭遇することもないに等しいんだが、魔導師はそれを感知してしまうからな。しかし出現率に至っては10年に1度くらいの確率なんだが、君は運がいいのか悪いのか」


『でもそのチリッとした感覚ってのが、無意識で魔力サーチしてたとしたら、やっぱり高い魔法適性があるのは間違いないねぇ。しかも風から得た情報ってことは、レアな魔力変換資質もあるかもだしねぇ』


「風の魔力変換資質かい? 確かに僕が知るかぎりでは両手の指で数える程度の魔導師しか知らないが……」


「それじゃあ、このまま元いた場所に帰して、はいさようならってわけにもいかないわねぇ。魔法適性が高いってことは、魔法の存在を知ったことで暴走の危険もあるわ。ここは安全策として魔法の基礎を教えておくのが最善だと思うけど、クロノ執務官はどうかしら?」


「僕もそれがいいかと思います。君も異論はないね?」


おっ、自分から教えてほしいって言い出そうかと思ってたけど、必要なかったみたいだ。ラッキー。


「異論はないです。むしろこちらからお願いしたかったくらいでしたし」


「そうなるとしばらくアースラに滞在してもらうことになるんだけど、一度戻って親御さんに連絡とか……」


「あ、大丈夫です。僕一人暮らしなんで。学校も風邪引いたってことにしますから」


どうせくそじじぃは帰ってこないしな。問題ないだろ。


『和人くん一人暮らししてるの!? ひゃあー、まだ小さいのに偉いねぇ。ってか色々大丈夫なの?』


「平和な街なんで。これからよろしくお願いします!」



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