魔法少女リリカルなのは〜魔の探求者〜

□STAGE00
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そうして魔法の基礎を学ぶことになったオレは、クロノさんに連れられて、アースラ内にある資料室に来ていた。


「君はずいぶん丁寧な話し方だが、それが素かい? そうじゃないなら今後は最低限の丁寧語だけで構わない。僕も年下に気を遣わせるのは気が引けるからね」


「あ、そうですか? いやぁ、実は敬語とかあんま使うの好きじゃないんですよ。僕とか言うのも違和感ありまくりで、普段はオレなんで助かります」


「君を教育した人はだいぶ苦労しただろうね。さてと、まずは聞いておこうかな。君は頭で覚えるタイプなのか、体で覚えるタイプなのか、どっちが効率がいいかでいいんだが」


「ああ、オレは頭から入るタイプです。まずは頭に入れてから体に馴染ませるって感じで今までやってきたんで、その方向で頼みます」


そうオレが言い切ってから、クロノさんは資料室のテーブルにどかどかと本を積み上げていき、オレを席に着かせて話をする。


「とりあえずこれ全部に目を通してくれ。僕も忙しいから、常に君に付けるわけじゃない。わからないことがあったら僕かエイミィが必ず対応するから、気軽に連絡してくれ。連絡は手元のパネルで操作できる」


言いながらクロノさんは手元のパネルを操作してみせてくれる。


『ちなみに私は魔導師経験ないから、ホントに基礎の基礎くらいしか教えられないよ』


「元から基礎だけ教えるんだ。それで十分だよ。それじゃあ僕も仕事に戻る。なるべくこの部屋から出ないようにしてくれ。エイミィ、身の回りのフォローは任せたよ」


『まっかせなさい! 和人くんもエイミィお姉さんをどんどん頼っていいからね!』


「はい、ありがとうございます、エイミィさん」


それからクロノさんは資料室を出ていってしまい、エイミィさんもいつでも声をかけてねと言ってからモニターを切っていき、オレはテーブルに山積みされた本を見て少し冷や汗が出つつも、これから学ぶ魔法に心を踊らせながら本を開いていったのだった。

読んでみると、意外にも理解できる。というより、オレの世界の科学に近い内容でつまずく部分もほとんどない。専門用語っぽい部分はクロノさんやエイミィさんに聞いて解決。読み始めて1日でわからない部分はほぼ解決させ、開始から3日目でテーブルに積まれた本は全て読み終えてしまった。
しかし、オレが内容をなんとなく理解できたのには、もう一つ理由があった。それはオレが小さい頃に『見たことがあるような文面』だったからだ。それは両親の仕事の資料なんだが……帰ったら少し調べてみるか。

それからどうでもいいが……いや、どうでも良くないが、この3日でエイミィさんを筆頭にアースラの女性スタッフから何故か好かれてしまい、1時間置きくらいで誰かが資料室に来るというおかしなことも続いていた。皆さん仕事してください。

そうして魔法の基本理論を頭にたたき込んだオレは、4日目からクロノさんの指導のもと、魔力運用の仕方を覚えていった。

魔力コントロールから始まり、念話、軽い身体強化、障壁の作り方とそのバリエーション、バインドのバリエーションと使い分け、魔力サーチに簡単な結界、封印魔法、最も基礎の治癒魔法と多種に渡る魔法を教えられていった。
クロノさんの話では、教えていくうちに得手不得手を見極めるつもりだったらしいのだが、教えられたことを苦労の度合いは違えど全て修得したことにかなり驚いていた。

そして魔法指導から6日目。魔力コントロールも暴走の危険はないレベルに達したとして、指導が終了。正直物足りなさがあるが、時間的にもこれ以上はオレもヤバイ(ズル休みうんぬん)ため、渋々ではあるが納得せざるをえなかった。


「クロノさん。やっぱり飛行魔法や攻撃魔法は指導して貰えないんですか?」


「飛行魔法は今から教えても修得には1月……いや、君なら半分の2週間といったところかもな。それくらいはかかる。時間的猶予もないし、君にこれから必要とも思わないからね。攻撃魔法も同様の理由だ。君には必要ないし、過ぎた力は禍も呼ぶ。それがわからないほどバカじゃないだろ?」


「……使い方を間違えなければ……」


「本来であれば! 君は一生魔法を扱える必要などない人生を送るはずだったんだ。求めすぎるのは人の業だよ」


『まあまあクロノくん。和人くんも魔法を悪用しようとしての言葉じゃなくて、純粋な向上心からの言葉だから。ね、和人くん?』


「……はい……」


「……エイミィ。君はこの数日で和人をずいぶん気に入ったようだね。和人に聞いたよ。2人の時は『エイミィお姉ちゃん』って呼ばせてるらしいね」


『か、和人くん! クロノくんに話しちゃダメだって言ったじゃない!』


「いや、オレもかなり恥ずかしいですし……実はエイミィさんだけに強要されてないんで……」


『え……ええ!? 私以外にも!? っていうか強要してないよ和人くん!』


「とにかくだ! 和人は今後、飛行魔法及び攻撃魔法を修得しようとしないように! 僕も教えるつもりはない。わかったね?」


話が脱線しかかったのを正して、クロノさんはオレにそんな念を押してきた。確かにクロノさんの言ってることは正論だ。ここでどんなに粘っても意見を曲げないだろう。


「わかりました。ですが、オレが将来、クロノさん達と同じ管理局員になりたいって言ったら、どうです?」


「軽い気持ちでそう思ったなら、君はこの仕事には向いてないな。よく考えてものを言うんだね」


やっぱダメか。簡単に見抜かれた。


「将来の選択肢として考えてみたいと思います。その時は改めてご指導をお願いしますね」


「その時に僕が教えることになるとは限らないよ」


『私は和人くんに管理局員になってもらいたいなぁ。それで私の後輩ってことになるし。ねぇ艦長?』


『そうねぇ。その時は私が根回ししてうちに引き抜いちゃいましょうか』


そういうの職権濫用って言うんじゃ……とは言えなかったオレは、そのあと最後の基礎固めを終えて、今後のためとアースラの連絡先を貰ってから海鳴市へ帰され、元の生活に戻っていったのだった。


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