魔法少女リリカルなのは〜風を纏う者U〜
□〜聖王と騎士〜
1ページ/3ページ
刻は少し遡り、なのはと和人が聖王の玉座の間に辿り着いた頃。
ヴィヴィオの前に立ったリネオスの相手を買って出た和人は、ヴィヴィオとリネオスを引き離すためリネオスに魔法弾を放つ。
リネオスは魔法弾を避けて躱しヴィヴィオから少し離れるが、すぐにヴィヴィオに近付こうとする。それを和人はリネオスとヴィヴィオの間に割って入り、阻止する。
「お前の相手はオレがしてやる。ここを通りたければオレを倒すんだな」
「ふむ、私の前に立ちはだかった以上、死ぬ覚悟はあるんだな?」
「上等!こちとら命張って任務に当たってんだ」
「良い心がけだ。ならば私も全力で相手しよう」
リネオスはそう言うとカラドボルグを構え和人を真っすぐ見据えた。
その時、和人の後ろから巨大な魔力の放出があり、和人はそちらに目を向ける。そこでは虹色に輝く魔力光に包まれたヴィヴィオが、その姿を17、8歳の身体に変化させ、なのはと対峙していた。
「よそ見をしている余裕があるのか?」
和人は後ろからしたその声に反射的に障壁を展開するが、声の主リネオスは障壁を『すり抜けて』カラドボルグを振るう。咄嗟に前に転がりカラドボルグを躱した和人は、すぐにリネオスに顔を向けサイクロンを構える。
「……確かによそ見してる余裕はないな。だがヴィヴィオのあの姿はなんだ?」
「あれこそが陛下の真の姿であり、その身に宿す固有技能『聖王の鎧』。あれがある限り陛下には傷一つ付けることは出来ない」
「傷付くことはない……か……。それは好都合。元よりヴィヴィオは保護対象だ。無傷で済むならそれに越したことはない」
「保護とはよく言ったものだな。陛下を連れていきたければ、私を倒してからにするのだな」
「アンタの身体の主はオレの保護対象なんだよ。言われなくても動けなくしてアンタも連れていくさ」
和人は言った後リネオスを倒すための算段を練る。
(このAMF下だと消耗の激しいエアリアル・バインドは使えない。そしてさっきの攻撃から察すると障壁を張ってもおそらく意味がない。となると常に付かず離れずの距離で射撃を中心に攻めるしかないか)
そう考え至った和人は、リネオスへ攻撃を仕掛けた。
「あなたは私のママじゃない!」
「ヴィヴィオ!私だよ。なのはママだよ!」
「違う!あなたは私のママをどこかに隠した。ママを返して!」
ヴィヴィオはクワットロに言いくるめられてしまったため、なのはと激突してしまう。ヴィヴィオが纏った聖王の鎧を危険と判断したなのはは、
「ブラスターU!リミットブレイク!」
切り札をもう一段解放しヴィヴィオを止めるため動きだす。
それと同時に和人とリネオスの戦いにも変化が生じる。
和人はリネオスの射程のギリギリ外の距離で攻撃していたが、リネオスは和人が放つ魔法弾をいとも簡単に切り裂いてしまい、攻め手に欠けていた。
「このままやっても魔力の無駄遣いなのがわからないほどバカではあるまい?」
「確かにな。だからと言ってアンタの射程に入るのも嫌なんでね」
「それは私の能力を知っているからだな?」
「当たり前だろ。冷静に考えればグレイルの稀少技能は、接近戦でこそ真価を発揮する」
「いかにも。私の能力は『視認した相手に防御不可能の攻撃を放つ』ことができる。君の判断は正しいだろう。しかし、このままでは追い込まれるのは君自身だ」
「だろうな。オレもそろそろ腹くくろうと思ってたところだ」
移動しながらの攻防を繰り返していた両者は、そこまで話をすると一度足を止め距離を開ける。
そして和人は両手に持つサイクロンを腰のホルスターに納め構えた。
「ほう。私に接近戦を挑むか。それは勇気か、あるいは無謀か。この手で確かめてやろう」
リネオスは和人との戦いに期待してカラドボルグを構え急接近していった。
そして自らの射程に入ると和人の首を刎ねんと右手に持ったカラドボルグを横に振りぬく。が、リネオスの右腕は振りぬく前に和人の右手で肘を押さえられてしまい止まってしまう。間髪入れずに和人は左手でリネオスの右手首を掴み一本背負いで投げ飛ばす。
リネオスは自分の足が浮く瞬間に自ら地面を蹴って跳び、和人から掴まれた右腕を振り切り空中で一回転して和人の前方に着地しすぐ和人に身体を向ける。
「……なるほど。どうやら無謀なわけではないようだ。それに私が戦ったことのないタイプだな」
「それはオレが有利と捉えていいのか?」
「いや、それでも私の勝利は揺るがないだろうな。そちらが私に触れてくるなら私も『二つ目の能力』を使うことができるからな」
リネオスの自信に満ちた言葉に和人は逆に燃えていた。それと同時にグレイルに以前教えられた『会心の一撃』の能力について思い出していた。
(確かグレイルの話では二つ目の能力発動には条件があったはず。それに注意すればまだ勝機はある)
和人がそう思った時、リネオスはすでに動きだしていて、カラドボルグを振り上げ和人の頭に振り下ろす。
和人は後ろに跳び退きそれを躱すが、リネオスはそれを予期していたのか振り下ろしのあとに立ち止まらずに和人との間合いを詰め、鋭い突きを放つ。
和人は足を止めカラドボルグの側面を左手で身体の外へ流し右肘でリネオスの腹にカウンターを食らわせようとする。
リネオスは和人の右肩に左手を置き、そこを軸に和人を飛び越えてカウンターを躱し飛び越しついでにカラドボルグで和人の背中を切り付ける。幸い攻撃は浅く、和人はバリアジャケットを切られただけで済んだが、予想外の死角からの攻撃に冷や汗を流す。
一瞬の油断も許されないことを再認識した和人は、リネオスの動きを集中して観察し始めた。
リネオスはそれを察したのか、動きを悟られまいとすぐに距離を詰めていく。そして先程と違い側面が上下となる突きを和人の腹目がけて放つ。
.