魔法少女リリカルなのは〜風を纏う者U〜

□〜交渉〜
1ページ/3ページ


〜第23管理世界『ルイゼン』森林地帯〜


まだ日が昇りきっていない早朝。そんな時間帯にティアナ・ランスターは生い茂る木々の中を疾走していた。


「最悪!まさか奴等が私を先に狙うなんて!」


ティアナはそんな悪態を吐くと、動いていた足を止め周囲を見やる。


「完全に包囲されてるわね。これは戦うしかなさそうね」


ティアナが観念して応戦の態勢をとると、三方向からフラム、ボルト、ウインの三人が姿を現した。


「君達はどうやらかなりやり手の局員らしいな。現に僕達を欺きこうして逃げ抜いている」


「お褒めの言葉ありがとう。でもあなた達の目的はメアリスのはず。生憎だけど私はあの子がどこにいるのか知らないわ」


「あなたが知ってなくても関係ないの。多少強引ではあるけど、あなたを捕らえて『交渉の材料』として使うわ」


ウインの言葉にティアナは彼等の意図を理解した。


「つまり私を捕らえてメアリスと交換するのね?」


「そーゆーことだぜー。つーわけで大人しくしてもらうぜー?」


「そんなこと言われたら意地でも捕まってやらないわ!」


ティアナは三人に言い放つと、三角形で包囲する三人のフラムとウインの間を抜けようと走りだす。
フラムとウインはそれに立ち塞がるように移動し行く手を阻み、ボルトは背中からティアナに真っ直ぐ向かう雷系の攻撃を放つ。
ティアナは直前で真横へ進路を変えて雷の攻撃を躱しフラムとウインを襲うよう仕向けた。
フラムとウインもそれを左右に分かれて躱しティアナの後を追う。ボルトもフラムとウインに続き追い掛ける。それによりティアナはなんとか包囲を抜けることができた。

しかし相手は三人。しかもチームである。たとえ包囲を抜けたとしても、それで逃げ切れるほど甘くはない。さらに言えばティアナには飛行能力がないが、三峰将の三人はその飛行能力すら持ち合わせているのだ。


「クロスミラージュ。現状で逃げ切れる可能性はどのくらいかしら?」


『まず無理かと思われます』


「はあ、そうよね。なら多少無茶でも奴等を倒すしかないか。やるわよ、クロスミラージュ!」


『了解です。マスター』


ティアナは自らのデバイスと会話を済ませると、走るのをやめて三峰将と対峙するため振り返った。三峰将もそれを確認しある程度の距離で止まり構えた。


「ふむ、逃げ切れないとわかって応戦に切り替えたか。だがその選択が無茶だとは考えなかったか?」


フラムは落ち着いた口調でティアナに質問する。ティアナはそれに答えることなく頭上に誘導弾を作り出し、


「クロスファイヤー・シュート!」


先制攻撃を仕掛ける。
三峰将は三方向に別れて攻撃を躱し、フラムがボルトとウインに声をかける。


「さっさと片付けて霧島執務官を引きずりだす。『一の陣・堅』だ」


フラムの命令に二人は応えると、ティアナを正面に置いてボルト、フラム、ウインの順で縦列編隊を組んだ。

そしてボルトがティアナに突っ込んでいき、後続のフラムが炎の誘導弾でそれを援護しウインは大きな魔法を放つため魔力を溜めだした。

ティアナはボルトを近付けさせまいと誘導弾を放つが、そのすべてをフラムに撃ち落とされてしまう。
仕方なくクロスミラージュをダガーモードに変えボルトとの接近戦に応じたティアナは、デバイスを思い切り振りかぶってきたボルトに先制攻撃を仕掛けようと前に出たが、フラムが誘導弾でそれを阻止する。
その隙にボルトが雷を纏ったデバイスでティアナを吹き飛ばし近くの木に叩きつけた。木に叩きつけられたティアナはその衝撃で咳ごむが、すぐに持ちなおし三人を見据える。しかし三峰将は満足に立て直す時間すら与えなかった。


「ハリケイン・スラッシュ!」


最後列にいたウインがそう叫ぶと、ティアナを中心に竜巻が発生しティアナはその勢いによって竜巻に飲み込まれてしまう。


「フレイム・ダンス!」


続けてフラムがその竜巻に自らの炎魔法を織り交ぜ狂暴さを増させた。当然巻き込まれているティアナは、竜巻の勢いと炎の熱でダメージを受けていた。
やがて竜巻は威力を弱めて消えてなくなりティアナの姿が現れるが、そこは地上から遥か上に当たる場所だった。
すでにダメージによって満足に動けないティアナにボルトは止めの一撃を放った。


「サンダーボルト!」


ボルトの攻撃はティアナのさらに上からの落雷攻撃で、ティアナはそれにより完全に戦闘不能にされてしまい、その身柄を三峰将に取り押さえられてしまった。








一方、その戦いを魔力反応だけで探っていた和人は、ティアナの反応が途切れたことを確信すると、まだ懐で眠るメアリスを起こさないように、おそらくもう到着しているであろうはやてに通信を繋いだ。通信が繋がるとそこには寝起きであろうはやてが、目をさすりながら映っていた。


「おはよう和人君」


「……今のはやてを見てると無性に殴りたくなるのは何でだろうな?」


「ちょっ、何でそないに怒っとるん?私が何かしてもうたん?」


「……まあいい。それよりこっちにはもう着いてるのか?」


「それなら昨日のうちに到着しとったよ。夜遅くってこともあったから連絡は控えたんやけど、何かあったん?」


そこで初めて事態を察知したはやては真剣な顔になる。


「ああ、おそらくティアナが敵の手に落ちた。だから今のうちにはやてには現状の説明とこれからの動きについて話しておく」


「了解や」


和人はそう言葉を交わした後、はやてに説明をしていった。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ