魔法少女リリカルなのは〜風を纏う者U〜

□〜決着〜
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〜時空管理局本局〜


三峰将を逮捕した和人達は、テイルの調査が完了した知らせを聞き帰還していた。
和人は連れてきた三峰将をフェイト達に任せて、ティアナとメアリスと一緒にテイルの元へ向かった。

テイルは本局の休憩室にいて、車椅子に乗ったまま天井を見上げながら寝ていた。和人は何か思いついたのか、メアリスに耳打ちをしてテイルに近付く。
メアリスは眠っているテイルの顔を両手で勢い良くサンドする。
パァーンと清々しい音を立てたあと、テイルは何事かと飛び起きる。


「な、何だ!?何が起きた?」


「おはよう、テイル。よく眠れたか?」


「和人!てめえか」


「怒んなよ。どうせ反射的に『瞬光』使って痛くないんだろ?それにやったのはメアリスだ」


和人は言ってテイルの前にいるメアリスを指差す。メアリスはテイルと視線が合うと視線を泳がす。


「……どうせお前が入れ知恵したんだろ?じゃなきゃこんなにオドオドするかよ」


テイルはすぐに和人に向き直りそう返す。和人もバレたかと言った顔をする。


「……お二人とも、ずいぶん余裕ですね……」


そんな二人を見ていたティアナは、あまりの緊張感の無さに呆れてしまう。


「いやいや、決戦前の息抜きみたいなもんさ。そんな露骨に呆れるなよ」


和人は息抜きだと言ってティアナに説明すると、一呼吸置いて話を本題に切り替える。


「それで?オルテス司令は逮捕に持ち込めるのか?」


その質問にテイルは「当然」と言ってみせる。そのあと、和人は本局の放送でオルテス司令に呼び出しを受ける。


「さて、あちらさんもお待ちのようだし、ぼちぼち行くとしますか」


言った後、和人はメアリスの手を取ってティアナとテイルと一緒に休憩室を出て、オルテス司令の待つ執務官司令室へと向かった。







〜執務官司令室〜


ここのドアを叩く音がして、この部屋の主であるオルテス・ライルグ執務官司令は、一言入るように言って開いていた資料を閉じる。
了承を得て入ってきたのは和人とティアナで、和人の横にはメアリスもいた。
オルテスはメアリスを見ると一瞬目の色を変えたが、すぐに落ち着いて言葉を掛ける。


「ご苦労だったな。と本来なら言いたいところだが、君はまた無断で個人行動をとったようだな」


オルテスはそう言って腰掛けていた椅子から立ち上がり和人の前に移動する。


「さらに今回は通信拒否まで行う始末。これは厳罰は免れないな」


落ち着いた口調で続けられる言葉には威圧感があったが、そんなことで怯む和人ではない。


「変ですね。私は局員に『この子は自分が本局へ連れていく』と伝えてほしいと言いました。それはもちろんご存じですよね?」


和人の問い掛けにオルテスは「ああ」と認めた。


「事件の被疑者を逮捕、または保護し本局へ連れてくるまでが執務官の仕事です。私は今回その枠から逸脱した行動はとっていませんが?」


「それを言葉遊びと言うのだよ霧島執務官。君の処罰に関しては追い追い決めることとしよう。それよりこの少女が報告にあった被疑者の身内だな?」


オルテスは口が達者な和人を知るため、その件に関しては保留として、目の前にいるメアリスに視線を移して質問する。


「はい、この少女が『診察詐欺に力を貸していた少女』です」


「ふむ、この少女が……では試しに私の身体を診てはくれないか?」


オルテスはそう言ってしゃがんで『右手』をメアリスに差し出す。それを見た和人はにやりと笑い、


「あれ?オルテス司令、なぜ『右手を差し出している』んですか?」


それには横にいたティアナもハッとする。その質問にオルテスも表情が歪む。


「調査資料と私の報告書には『診察詐欺を手伝う少女』としか記載されていなかったはずです。つまりこの少女が『どうやって診察をしていたか』は一切知らないはずですよね?」


続く和人の言葉に焦りの色を隠せないオルテス。
そして少しの沈黙の後、オルテスは立ち上がって和人に言葉を返す。


「それは現地に赴いた局員から直接話を聞いたから知り得たんだ」


まぁ無くはないかと和人が納得しかけるように見えたが、またも怪しく笑う。


「それが本当ならすごいことですよ?オルテス司令?」


「何?」


オルテスがそんな声をもらすと、断りもなく部屋に入ってくる人物がいた。
その人物は、乗っている車椅子を動かして和人の横で止まる。


「今の言葉に嘘はないですね?オルテス執務官司令」


車椅子に乗る人物、テイルは、オルテスにそんな確認の言葉をかけ、オルテスもそれを認める。


「え〜っと、本人への聞き込みによると、事件解決時に現地に赴いた局員全員が、この少女がどのように診察をしていたかは一切知らなかったです。さらに逮捕された詐欺師は移送中に舌を噛み切り自殺。聴取も出来ないままとなったため、それを知ることはまず出来ないはずです」


テイルの説明に顔を青ざめるオルテス。実は和人は事前にこの発言を引き出すことを前提でテイルに先ほどの発言が虚言であることを証明するために裏付けに行かせていたのだ。


「つまりあなたは以前からこの少女、メアリスの能力について知っていたことになります」


そんなオルテスを見て畳み掛けるテイル。
オルテス自身、このような展開を予測していなかったためか、何かを必死に考えていた。



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