魔法少女リリカルなのは〜風を纏う者U〜
□〜協力〜
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〜時空管理局地上本部・第一演習場〜
聖王教会を後にした和人は、その後すぐにここへやってきて何やら忙しそうに模擬戦の準備をし始め、その近くにはすでにバリアジャケットを着用した武装隊が整列していた。
そんな準備をしている和人に近づいてくる人物がいて、和人の傍まで来ると話し掛ける。
「和人君。いくら自分の持ち込んだ案件だからって急ぐことはないんだよ?まだ疲れも残ってるでしょ?」
話し掛けてきた人物、高町なのはは心配そうに言うが、和人は笑って言葉を返す。
「別に疲れちゃいないさ。確かに万全じゃないが、生憎オレにはゆっくり休んでる余裕もないしな」
言いながら準備を完了させた和人は、なのはの肩をポンと叩いていて続ける。
「まあチャンスを棒に振るようなマネはしないさ。だからしっかり審査の方頼むぜ?」
「……無理だけはしないでね」
なのははそんな和人に一言だけ言うと、和人は軽く手を振って整列している武装隊のところへ向かっていった。
「うし、そんじゃあこれからオレの立案した『新ポジション』の採用審査の模擬戦を始める。全員本気で戦うように!」
和人の掛け声に「はい!」と元気な返事を返す武装隊員達。
和人がここへ来た理由、それは自分の立案した『新ポジション』の審査採用を行なうためである。
なのははその模擬戦を観て審査する一人であって、他にも管理局のお偉いさんも審査員として観戦していた。
和人は適当に武装隊員を分けてチームを作ると、自らも加わって準備を整えると、審査員に合図を送る。
そして採用審査が始まった。
一時間後、模擬戦を終えた和人は地上本部の休憩室へと移動して休憩していた。
そこへなのはがやってきて和人の隣に座り話をする。
「一応審査の結果は採用の方向で決まりそうだよ」
「当然だろ。オレがどれだけ練り上げて立案したと思ってる?採用されなかったら殴り込みに行ってたさ」
「にゃはは、それは我慢してもらわないとね。それで報告が一つあるの。和人君の立案した新ポジション。『Free Attacker』なんだけど、やっぱり表記する関係で『Front Attacker』と略称が被るから別の名称を考えてほしいって」
「やっぱりダメか。まあ名称はテキトーに決めたからそっちで勝手に変えてくれても良かったんだが」
「和人君の立案だからそこはキチンとしてほしいんだって」
「う〜ん、なら『Short Stop』[遊撃手]でどうよ?」
和人の提案になのはも賛成し、和人の新ポジションの名称はそれで通ることになった。
「それと和人君、明日は暇かな?」
話を突然変えてなのはが和人にそんな質問をする。
「明日?なんかあるのか?」
「うん、明日はフェイトちゃんとヴィヴィオと一緒にグレイル君のお見舞いに聖王教会に行くんだけど、和人君もどうかなって。ほら、和人君が保護したメアリスちゃんだっけ?その子も教会に保護してもらったんだよね」
「……悪い、明日はティアナに押し付けてきた案件を片付けなくちゃいけないんだ。だから一緒にはいけない。メアリスはいい子だからきっとヴィヴィオと友達になれると思うからよろしく頼む」
「……そっか、残念だな。でも和人君はなんでそんなに暗い顔をするのかな?」
なのははメアリスの話をした時に和人の顔が暗くなったのを見て問い掛けたが、和人は「別に」とだけ言うと、
「これから本局に戻らないといけないんだ。新ポジションの件は何かあったら連絡してくれ。それじゃあな」
言った後和人は休憩室から出ていってしまった。
そんな和人を心配しながらも、なのはは休憩室を後にして審査員のいる部屋へと向かっていった。
その日の夜。本局の自分の仕事部屋に戻ってきた和人は、終始浮かない顔で事件の資料に目を通していた。
そんな和人を心配しながらもティアナは黙々と自分の仕事をしていく。そこへティアナに突然通信が入り、慌てて応答する。そんなティアナに目もくれずに和人は資料を読んでいた。
「……はい、わかりました。和人さんに伝えておきますね。それでは」
ティアナは丁寧に言葉を返して通信を切り、その後すぐに立ち上がり和人の前へ移動する。
「和人さん。お伝えする事があるのですがよろしいでしょうか?」
「ん?ああ、どうぞ」
和人はかしこまって言うティアナに心ここにあらずな感じで返す。
「『霧島執務官に一週間の有休を言い渡す。これは命令であるため、問答は許さない』。以上であります」
突然ティアナから有休をとるように言われた和人は、目を丸くして驚く。
「ちなみにこれは『ある方』からのお達しなので、私に何か言われても困ります」
言葉を返そうとした和人に付け加えるようにティアナがそう言ってきたため、言葉に詰まる和人。
「……な、なら仕事はどうするんだ?ただでさえオルテス司令が逮捕されてバタバタしてるのに、有休なんてとってられないだろ?」
「それなら心配には及びません。上層部からも許可が下りていますから、なんとかなります。ですから和人さんはさっさと帰る支度をしてください」
言ってティアナは和人を立たせると、荷物をまとめて部屋から追い出した。
「……ここ、オレの仕事部屋なんだけどな……」
和人は追い出された自分の仕事部屋のドアを見ながら呟き呆然とする。
そして何が何だかわからないままミッドチルダにある自分の家へと戻っていった。
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