魔法少女リリカルなのはViVid〜時を越える願い〜

□〜アインハルト〜
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翌日の早朝。おもむろに目を覚ました覇王は、全く知らない場所のベッドで寝ていたことに驚き飛び起きる。


「よう、やっと起きたか」


そんな覇王の隣から話し掛けたのは、ノーヴェだった。


「……あの、ここは……?」


自分の置かれている状況がわからなかった覇王は、ノーヴェに尋ねるが、その時丁度部屋のドアが開き、一人の女性が入ってきた。


「おはよう、ノーヴェ。それから……」


中へ入ってきた女性、ティアナはノーヴェに挨拶して覇王に目を向ける。


「自称覇王イングヴァルト。本名、アインハルト・ストラトス。St.ヒルデ魔法学院中等科1年生」


「ごめんね。コインロッカーの荷物出させてもらったの。ちゃんと全部持ってきてあるから」


ティアナは言いながら持ってきた荷物を指差し申し訳なさそうにしていた。


「制服と学生証持ち歩いてっとは、ずいぶんとぼけた喧嘩屋だな」


それを聞いたアインハルトは恥ずかしそうに顔を赤めて言葉を返した。


「学校帰りだったんです。それにあんな所で倒れるなんて……」


アインハルトがそこまで言うと、


「あー、みんなおはよー」


また一人顔を出してくる人物がいて、その人物は両手に料理を持ってやってきた。
ノーヴェとティアナはそれを見てテーブルへと移動を始め、戸惑うアインハルトに話し掛ける女性。


「あ……はじめましてだね、アインハルト。スバル・ナカジマです。事情とか色々あると思うんだけど、まずは朝ごはんでも食べながらお話聞かせてくれたら嬉しいな」


スバルは自己紹介をしてからそう優しく語り掛けた。









「んじゃ一応説明しとくぞ」


席に着いて朝ごはんを食べる前にノーヴェがアインハルトに現状を簡単に説明した。


「ここはこいつ……あたしの姉貴スバルの家。で、その姉貴の親友で本局執務官……」


「ティアナ・ランスターです」


「お前を探して保護してくれたのはこのふたり。感謝しろよ」


そこまで言ってノーヴェは朝ごはんに手をつけ始める。


「でもダメだよノーヴェ。いくら同意の上の喧嘩だからってこんなちっちゃい子にひどい事しちゃ」


「こっちだって思いっきりやられてまだ全身痛ェんだぞ」


スバルはノーヴェの行動を注意したが、ノーヴェも引き下がらなかった。そんな二人を余所にティアナはアインハルトへ確認のための質問をする。


「格闘家相手の連続襲撃犯があなたって言うのは……本当?」


その問い掛けに素直に頷くアインハルト。ティアナはその行動の理由を聞いたが、それにはノーヴェが大雑把に話した。


「大昔のベルカの戦争がこいつの中ではまだ終わってないんだとよ。んで、自分の強さを知りたくて……あとはなんだ、聖王と冥王をブッ飛ばしたいんだったか?」


「最後のは……少し違います。古きベルカのどの王よりも覇王のこの身が強くあること。それを証明できればいいだけで」


「聖王家や冥王家に恨みがあるわけではない?」


「はい」


それを聞いたスバルはホッとしたように笑顔を見せた。


「スバルはね、その二人と仲良しだから」


ティアナが不思議そうにしているアインハルトにそう説明する。


「あれ?それだとグレイルさんもリネオスって人のクローンだし、対象になったりするのかな?」


そこでスバルはうっかりそんなことを言ってしまい、


「バカスバル!それは極秘事項だから話すな!」


ティアナはすぐに怒ったが、その話を聞いたアインハルトは目を丸くしていた。


「……リネオスって、リネオス・ヴァルトですか?あの人のクローンが存在するのですか?」


そしてスバルへと詰め寄るアインハルト。


「あ〜、え〜と……ティア〜」


「はぁ、アンタはいつもそうね。アインハルト。確かに私達の知り合いにその人はいるわ。でもこれは管理局も知らない秘密だから、絶対に他言無用よ?」


話してくれることがわかったアインハルトは素直に頷いた。


「リネオスのクローン、グレイル・V・ロウラン三等空佐は、今聖王教会で深い眠りに就いてるの。いつ目覚めるかもわからないし、その秘密が公になれば必ず注目されてしまう。だからこれ以上は聞かないでほしいの」


「……わかりました。その件についての追求はやめます」


その回答にホッと息を吐くスバルとティアナ。


「話が脱線したわね。それじゃあこのあと近くの部署に行ってきましょ。幸いまだ被害届は出てないわけだし、正直に話せば厳重注意だけで済むわ」


「あっ!そういえば和人さんとも戦ってんだったか?アインハルト」


それに何かを思い出したのか、アインハルトはあたふたし始める。


「あの、えと、あの方には何故か私の正体がバレていたみたいでして、どうすればいいでしょうか?」


「それなら心配することねぇよ。和人さんは余計なことは言わない人だからな。っていうか二人とも和人さんをどうにかしてくれ。あの人は掴み所がなさ過ぎる」


アインハルトにそんなことを言った後、ノーヴェは突然和人への不満を二人にぶつけだした。するとティアナはノーヴェの肩に手を置き答えた。


「ノーヴェ。あの人は人をからかうことを楽しんでるの!だから理解しようとしちゃダメ!どツボにはまるわよ」


「ティア、それは言いすぎ……」


「アンタはわかってないのよ!あの人の下で働いてみなさい?補佐官が長続きしない理由がわかるわよ?」


何故か涙目に訴えるティアナにスバルとノーヴェは苦笑いを浮かべるしかなく、アインハルトに至っては何が何だかといった感じだった。
しかしそれは実際に和人の下についた人にしかわからないものだった。



その後、近くの部署に移動したスバル達は、アインハルトにもう街頭試合をしないことを誓わせた後、途中からでも学校に行くというアインハルトを学校まで送ってあげ、放課後にヴィヴィオ達を紹介することになった。



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