魔法少女リリカルなのは〜魔の探求者〜

□STAGE02
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あの化け物と少女とフェレット? に会った翌日。災難に見舞われたせいで質素な朝食になった朝を乗り越えて、いつも通りに登校していったオレは、あの少女に再び会うためにいつもより少しだけ歩く速度を遅くして周りに目を向けていた。しかし学校に着くまで少女を発見することはできなく、玄関で待ち伏せするのもなんか嫌だったので、朝はそのまま自分の教室へ行き授業を受ける。通学バスでも使ってるのか、あるいは家の方角が全く違うのか。どちらにせよ会えなかったわけだし、昼休みにでもフラフラ下級生の教室の近くを歩いてみるか。そんなことを考えながら授業をほとんど聞かずにいつものように新しい術式などをノートへと書き込んで昼休みまで過ごしてみることに。
昨日の一件のおかげで少なからず実戦データが取れたのは思わぬ収穫だった。
風掌はちょっと威力が分散して範囲が拡散する感じになったから、大砲のイメージを固めた方が良さそうだな。一点に集中した方が威力も上がるし、練り上げる魔力で威力の調整もできるだろう。
エアリアル・バインドはそれなりにイメージ通りの効果が出たな。ただ消耗する魔力がそれなりに多いのが欠点か。対1で使うと燃費も効率も悪そうだ。課題は効果範囲と使いどころってところか。
今後もあんな感じの化け物……フェレット? が言うには思念体らしいが、頻繁に現れる可能性があるのか?それならそれでこちらとしてはありがたいかもしれない。クロノさんは『必要ないから』って魔法の攻撃運用を教えてくれなかったけど、それなら『必要になったから』と言い張れる。完全な私情だが、あの思念体とやらを『実験台』に色々試してみたい。
とりあえず昨夜のあの青い宝石。ナンバリングが]]Tだったってことは、少なくともあと20個はあるという予想ができる。くぅ! なんだか楽しくなってきたぁ!

そんな危険かもしれない事態にあろうことか『楽しい』と感じてしまってる辺り、オレはもう結構危ないやつに認定されてもいいかもしれない。だが日常に飽き飽きしていたオレにとってこれは最上級の楽しみになりえてしまう。それほどまでにオレは非日常を求めていたのだ。

そんなこんなでいつの間にか午前の授業も終わっていて、時間は待ち望んでいた昼休みに。
オレは普段は教室の窓際最後方を陣取ってのほほんと1人で弁当を食べるのが日常なんだが、今日は弁当を持って教室を出ていく。それにはクラスの奴等が驚愕しざわついたが、「オレがどこで食おうとお前らが気にすることでもないだろ」とツッコミたくなった。
そうしてやってきたのは一つ下の三年生の教室。皆一様にオレを見てくるため、非常に居づらかったが、それとなく教室の中を廊下から順に見て回る。しかし目的の少女の姿はない。うーん、あの背丈と言葉使いだと一、二年生ってことはないと思うんだが……それとも別の場所で昼食を食べてる?そういや昨日は金髪の子と紫の髪の子と一緒に下校してたけど、あの子達の姿も見えないな。とりあえず屋上でも行ってみるか。
考え至ったオレは、周りの視線を一身に受けながら三年生の教室エリアを抜けて屋上へと足を運んでみる。ってか、やっぱりオレのアダ名って学年問わずに広まってるらしいな。あの目は上級生ってだけで見てた目じゃない。悪い意味で目立ってるなオレ。


「あ、ああ!」


屋上へと辿り着いて、落ち着いて昼食を食べられそうな場所をまず見てみたオレは、そこでやっと目的の少女を発見した。少女は昨日の二人と一緒に三人掛けくらいのベンチに腰を下ろして昼食を食べていて、屋上に入ってきたオレに気付いてそんな声をあげた。目立つからやめてくれ。


「よう少女。思いの外スッキリした顔してるな」


オレは少女に近付きつつそんなことを言って目の前まで行ってからその場で腰を下ろして弁当を広げる。当然それには少女の友人二人も驚く。


「あ、あの、なのはちゃんのお知り合いの方ですか?」


「ん? なのはっていうのか少女。昨日は名前聞く前に別れちゃったから呼び方に困ってたんだよな。そして紫の髪の少女B。オレは少女Aとは今言った通り知り合いってほどでもない」


「少女B……」


「少女Aって、私のこと?」


「……その緑色の髪……ああ! あんた破壊者ね!?」


「なんだ金髪少女C。オレのこと知ってるんじゃないか。だがオレ的に気に入ってないアダ名だからその呼び方はやめてくれると有り難い」


「ヤバイわよなのは! なんでこんな危ないやつと知り合いなのよ! こいつにコテンパンにやられた生徒がいったい何人いると思ってるの!?」


「少女C。やけに挑戦的な物言いだな。試しに君の自慢の特技を一つ潰してあげようか? フフフ……」


「No Thank You! 精神病棟なんかに行きたくないわ!」


プッ、この金髪少女面白すぎる。個人的に一番からかいやすいタイプだ。紫の髪の子は清楚で上品な感じがするな。良いとこのお嬢様かなんかだろうか。そしてなのはと呼ばれた少女。彼女は隣でわあきゃあ騒ぐ金髪少女をたしなめつつ、オレに視線を向けて苦笑。なんだその顔は。


《あのぅ、ちょっと話を合わせてもらえませんか?》


《お? もう念話が使えるのか。オレもすぐ使えるようになったけど、大したもんだ。いいよ、合わせてあげる》


《ありがとうございます!》


オレの返答を聞いたなのははそれで笑顔を向ける。苦笑の理由はそれか。それにしても可愛い笑顔だなおい。


「えっと、破壊者さんとは……」


「霧島和人。名前でいいから破壊者はやめてくれ」


「あ、はい! アリサちゃん、すずかちゃん。和人君は昨日のあのフェレットさん……あ、ユーノ君って言います。ユーノ君が動物病院から逃げ出していたのを偶然見つけてくれて、私に渡してくれたの」


まさかの君付け……まぁアダ名よりは全然良いけど、年下の女の子から君付けはむず痒いな。それはまぁ慣れるとして、あのフェレット? ユーノっていうのか。オレの見立てではミッドかその近辺の出身だと思ってるが、まさかあれが『本来の姿』ってこともないだろう。目的を持ってここにいるなら、あんな小動物が明確な意志を持って単独行動するのはおかしいのではないか? 誰かの使い魔なら、なのはに助けを求めたりもしないはずだしな。


「そうなんだ。ユーノ君を……あ、申し遅れました。私は月村すずかって言います」


「……アリサ・バニングスよ」


「あ、そうだ! 私も自己紹介してなかった! 私、高町なのはって言います!」


「おーう、よろしくー。って言っても、そっちとしてはあんま仲良くもしたくねぇよな。オレといると良い噂が出ないし」


自分で言ってて悲しくなるが、それが事実なのだから仕方ない。オレもこの子達とは出来るだけ距離を置かないといけないんだな。そうなると学外でなのはと会わないとなぁ。アリサとすずかとはこれっきりにして……。
そう考えながら弁当に手をつけ始めたのだが、返ってきた言葉はオレの予想を裏切った。



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