特別小説
□時代の正月
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〜テルヨシ管理 クローズド・ネット内〜
テ「年明けから二時間……時刻は2時となろうとしております。入室許可をオンにしてっと。3、2、1……」
パ「Hi、テル。HNY(明けましておめでとう)」
テ「流石すぎる……待ち合わせピッタリにダイブしてきた。あけおめー、パド。アバターを動物縛りにしたらやっぱり豹なのね。お気に入り?」
パ「Y。テルは狼?ウサギも殺せないくらい弱そう」
テ「これは幼馴染みがオレにお似合いだって作ってくれたもんなの。弱いって言われたとか言ったらあいつが笑って喜ぶから黙っとこう……」
パ「二人はまだ?」
テ「パドが早すぎるの。2時以降に暇なら来てって言っただけだし、寝てるのかもな。このままパドと二人きりでトークってのもオレとしては幸せなんだけど」
パ「あと30秒で誰も来なかったら帰る」
テ「酷い! 酷いよ美早ん! そんなにオレと一緒が嫌なら来なきゃいいじゃん! 同情するなら愛をくれ!」
パ「次にその呼び方したら本気で帰る」
テ「すんませんでした……お願いだから構ってくださいパドさん……」
ボ「っと、ここで合っとるかの……なんじゃテイル。早速パドを怒らせたのか?」
テ「やーん! バーちゃんいらっしゃい&あけおめー! っていうか普段と違うアバターなのに一発でオレとパドを見分けるのやめて……」
ボ「パドのアバターは普段から見とるから見分けるなどすぐじゃて。それに土下座などという謝罪をするのはテイルくらいじゃろ」
パ「Hi、バーちゃん。HNY」
ボ「相変わらず早いのぅパド。明けましておめでとう。ところでテイルのそれは狼かの?」
テ「みんなその質問しなきゃ気が済まないの? そうですよ、貧弱な狼ちゃんですよ。バーちゃんは……ナマケモノ、だよね、それ……」
ボ「如何にも。可愛いであろう?」
テ「あー……うん……そうだね、可愛いよ」
パ「バーちゃんの感性はちょっとズレてるから、変なら変って言った方がいい」
ボ「なんじゃと? この世にナマケモノを可愛いと思わん人間がおるのか! おるなら其奴は人間にあらず!」
テ「凄いナマケモノ推しだな……まさか家で飼ってるとかはないよね?」
ボ「うむ、そうしたいのは山々なのじゃが、一匹で100万ほどしての、ワシントン条約にも引っ掛かっておるようで曖昧なところがあるから手が出せん。もっぱら動物園での観賞で自分を慰めておる」
パ「この前、鷹か何かに鷲掴みされて狩られる動画を見た。野生だと狩ってくださいって感じでぶら下がってた」
ボ「これパド! 儂を前にしてそんなエグい話をするとはいい度胸じゃな! ナマケモノはの……」
ガ「いやぁ! なんか待ってる時間って異常に眠くなるのよねぇ。ちょっと寝過ごしちゃったわ」
テ「やっほー! ガッちゃんだー! あけおめー! ことよろー!」
ガ「深夜なのにうざいテンションね……でもまぁ、テイルらしいっちゃらしいか。あけおめ、ことよろ」
パ「ガスト、NT(ナイスタイミング)」
ガ「えっ? 何の話よ……っていうかボンバー……あんたってやっぱりあんたなのね……動物縛りって聞いて絶対ナマケモノだって思ってたけど……」
ボ「…………」
ガ「え……ちょっと、何であからさまにテンション低いの?」
テ「そりゃバーちゃんがナマケモノについて熱く語ろうとしたところで来ちゃったし」
ガ「あー、それなら良かったわ。プロミの頃にそれ聞いて一時間くらい拘束されたから軽いトラウマなのよね」
テ「バーちゃんパネェ……。そ、それよりガッちゃんのそれはあれだよね。孔雀!」
ガ「エレガントな私にはピッタリのアバターでしょ? 我ながらこれ以上ハマりアバターはないと思うわ」
パ「綺麗な尾羽を広げてるところ悪いけど、孔雀でその尾羽を持ってるのはオス」
ガ「うえぇっ!? そ、そんなこと知ってるしぃ! レパードったらジョークが通じないわね! し、知ってる上で喋ってたんだから!」
テ「ガッちゃんって、どこかしらで頭悪いところを披露するよね……」
ボ「言ってやるでないテイル。世の中勢いも大切じゃと身を持って教えてくれとる良い子なんじゃよ」
ガ「やーめーてーよー! もう! そんなアホの子見る目で私を見るなー!」
パ「テイル、これで全員。立ち話は嫌」
テ「ん、そりゃそうだ。んじゃ正月らしく……ほいほいっと」
ボ「おっ、和室に炬燵かの。如何にも日本の冬じゃの」
ガ「今のご時世だとこのスタイルを導入できる家もそうないわよね。VRでも体験できるとワクワクするわ」
パ「お先に」
テ「んじゃオレ、パドの隣ー!」
ガ「何で四人いて隣に行く必要があんのよ! 普通に一辺を独占しろバカテイル!」
ボ「ふむ、やはり炬燵の暖房機能はないようじゃの。まぁ気分だけでも正月になれば良いか」
パ「炬燵、初めてで新鮮」
テ「ガッちゃんがその姿で炬燵に入るとシュールだな……」
ガ「鳥類なんだから仕方ないでしょ。そんな気になるなら変えようかな……」
ボ「動物アバターで炬燵を囲んでる時点でおかしいんじゃから気にするでない。それよりテイルよ、そんなに長居をする予定もないのじゃから、盛り上げられるだけ盛り上げてくれ」
テ「んじゃ四人で頭数も揃ってるし、麻雀でもやるか」
ガ「それ帰らせる気ないわよね? 半荘一局でも結構時間かかるでしょ」
パ「NP。東風戦なら半分で済む」
ボ「どうせやるならビリは罰ゲームじゃろ」
テ「おっし満場一致! えーと……麻雀のアプリは……っと……」
ガ「待ちなさいよ! 私は賛成してない!」
パ「罰ゲームはトップが決めて良いルールで。ここでできること限定」
ボ「ここはアバター同士の接触は不可の設定じゃから、罰ゲームも考えねばの」
テ「オッケ。あったあった。この炬燵の上でやるけど、山は自動だから積み込みとかできねーよ。点数計算も点棒の移動も勝手にやるから楽だぜ」
ガ「…………もういいわよ! あんたら全員倒して、全員恥ずかしい罰ゲームさせてやるんだから!」
パ「負けフラグ」
ボ「御愁傷様じゃな」
テ「生け贄乙でーす」
ガ「ぶ……ぶっ潰す!」
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