特別小説

□女だけの正月
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〜京都・真田家inこたつ〜


幸音「あー……やっぱり京夜いないとつまんないわー」

鳥「そんなあからさまに残念そうにこたつに突っ伏されても京夜先輩は来ませんよ?」

幸帆「京様は眞弓さん達の依頼に駆り出されて大活躍しているんですから、いい大人が不貞腐れないでください」

幸音「そーんなこと言ってー。本当は幸帆が1番残念に思ってるんでしょう? 『お正月は京様とゆっくりまったりしたかったなぁ』みたいなね」

鳥「私も年越しは実家でしたし、京夜先輩、年末から急に駆り出されて約束だった幸帆さんとの2人きりで元日が叶いませんでしたからね。まぁそれでも理子先輩とかが割り込んできてた気はしますけど」

幸帆「わ、私はお仕事熱心な京様のことをお慕いしてますし、眞弓さん達からのご要請とあっては断るわけにもいかなかったでしょうから、別に悲しいとかそんなことはなかったですよ。ほ、本当ですからね!」

幸音「まっ、その代わりにジャンヌとイチャイチャラブラブ戦姉妹で年越し迎えたとかだし、寂しくはなかったかもねぇ」

幸帆「誤解を生む表現はやめてください姉上。ジャンヌ先輩とは普通にお話ししながら年越しそばを食べて初詣に出掛けただけです」

鳥「ジャンヌ先輩美人だから、初詣とか注目集めたんじゃないかな? 幸帆さんも可愛いですし」

幸帆「私なんてジャンヌ先輩に比べたら月とすっぽんで。でもそうですね……人で溢れてたはずなのに、何故かジャンヌ先輩と歩くと人が道を開けてくれたりなんてことが。あとクラスの子達が一斉にジャンヌ先輩を取り囲んでもみくちゃに。相当目立って恥ずかしかったなぁ……」

幸音「幸帆は元日からネタがあっていいわよね。私なんかあなた達が帰ってこなかったから年越しはふて寝してやったわよ。眞弓達も何でこのタイミングで仕事入れるかな……私が暇になったら死ぬ生き物だってこと知ってるはずなのに」

鳥「死ぬって大袈裟な……」

幸音「そういえば小鳥ちゃんは実家でどんな感じだったの? やっぱりあのパワフルなご両親も帰ってきた?」

鳥「ですね。毎年この時期だけは家族が揃うので1年のちょっとした楽しみではあります」

幸帆「貴希さんから聞きましたけど、ご実家はずいぶん賑やかみたいで楽しそうですよね」

鳥「もう家族が揃うと凄すぎてどう言っていいやら……お爺ちゃんがいなくなったらお父さんが1日怒鳴り散らす羽目になるかもです。ご近所さんが家から遠くて良かったと思う数少ない時期でもありますね」

幸音「えっ……何それ怖いんだけど……確か小鳥ちゃんの家って動物がたくさんいるのよね?」

鳥「はい。ですから私達が帰ってくるとここぞとばかりに甘えてくる子が絶えなくてちょっとした争奪戦が始まっちゃうですよね。特にお母さんの膝の上を賭けた猫達の毛の逆立ち様は本気と書いてマジですから、見ててハラハラしっぱなしで中学に上がった頃から見ないようにしてます」

幸帆「小鳥さんのお母様の膝の上には何か猫達を惹き付ける魔力でもあるのでしょうかね……」

鳥「どうなんでしょうかね。昔お母さんにどうして猫達が寄ってくるのかって聞いたことがありますけど、決まってお母さんは『ただ普通に過ごしてるだけ』だって言ってて、真相はさっぱりです」

幸音「ああ、でもわかる気がするわ。猫ってこっちから構うと素っ気なかったりするけど、どうでもいい時に限って寄ってきたりってあるじゃない? だから小鳥ちゃんのお母さんって猫達にとって自然体だから居心地良いのかもね」

鳥「な、なるほど。私はどうも自分から寄っていっちゃうところがあったので、次は素っ気なくしてみようと思います。犬猫と一緒だとその辺が盲点になったりするんですよね。どっちもどっちなんじゃないかって」

幸帆「そうなんですね。あっ、美麗と煌牙は元気でしたか? 京様もたまに気になるようなことを言っていたので」

鳥「元気も元気。もう家に馴染んで庭で遊んだりもしてたよ。美麗はおばあちゃんの膝に顎を乗せて寝るのが好きになったみたいですっかり牙が抜けたワンちゃんみたいに……って、幸音さんどうしたんです? なんだか険しい表情で考え事してますけど」

幸音「うーん。いやね、京夜も私から構って構ってって寄っていくと最初はちょっと困ったような顔する時が多くて、何にもしない時は京夜から話しかけて来てくれたりしたから、それと同じなのかと思ってね。はっ! つまり京夜は猫の血を……」

幸帆「引いてないですから」

幸音「名前は猿飛なのにね。ぷふっ」

鳥「幸音さんのツボがわからない……」

幸音「ていうかこの面子だとボケ担当が必然的に私になるから路線変更したんだけど、急に舵きりすぎたわね。メンゴメンゴっ」

鳥「なんでしょう、この幸音さんから漂う昭和の香り……」

幸帆「実際に昭和生まれですし仕方ないですよ。ジェネレーションギャップです」

幸音「ちょっと待った幸帆。私ギリギリ平成生まれなんですけど! 平成元年生まれの二十歳! ベルリンの壁崩壊の年に生まれましたから!」

幸帆「あれ、そうでしたか? それは失礼しました。姉上が実年齢より老けて見えるのがいけない気もしますが」

幸音「ねぇ小鳥ちゃん。妹の毒が割と強いんだけど、私が何かしたように見える?」

鳥「私からはなんとも……でも私は幸音さんは実年齢よりずっと大人らしく見えて素敵だと思います」

幸音「ねー。小鳥ちゃんは可愛い上に正直で大好きー! 幸帆も小鳥ちゃんを見習って私を褒め称えなさい」

幸帆「実年齢より大人らしくって、捉え方を変えると老けて見えるって意味になりますけどね」

鳥「ええーー!! 幸帆さん私を巻き込んで事故起こさないでよー!」

幸音「もーお! 口の悪い妹はお仕置きですよ! 小鳥ちゃん、今から幸帆に『地獄脇こちょこちょの刑』を処すから拘束お願い!」

鳥「それはちょっとやりすぎ……いえやりますやらせていただきます!」

幸帆「ちょちょちょちょっ! 小鳥さん酷い! 姉上に睨まれたくらいで味方するなんて!」

鳥「もとはと言えば幸帆さんが変に毒を吐くから悪いですよぉ!」

幸帆「私は思ったことを言っただけで悪気は全く……あははははははははっ! ちょっと! 姉う、えぃ! ひぃいいいいい!」



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