アクセル・ワールド〜蒼き閃光U〜

□Acceleration Second8
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 加速世界に拡散しつつあるISSキットの脅威がまだ弱いながら、対応が遅れるのは危険と判断したテルヨシ達がその対策に乗り出して一夜が明ける。

 火曜日となった今日も変わらぬ日常から始まり、現実世界の平和さで加速世界の問題を忘れそうになるのを引き締めて、マリアとの登校を終えかけたが、何故かこのところ直前で何か言い忘れるマリアの「あっ」を聞いてやれやれと立ち止まる。

「今日は有田さんのお家にお邪魔してくるから、バイト先には今日も行かないね」

「ハルユキ君の家はまぁめっちゃ近いし別にいいけど、マリアだけじゃないよね?」

「えっと、黒雪姫さんと黛さんと倉嶋さんとうーちゃんとレイカーさんが一緒のはず」

「……レイカーのリアルが気になる」

「私も楽しみ」

「行くのは」

「バイトでしょ」

「ですねぇ……はぁ」

 なんか最近バイト先に来てくれないなぁ、なんて思わなくないが、ユニコも駆け回ってるようで店に来ないから暇にさせるしなと納得して、マリアのことは黒雪姫に一任。
 黒のレギオンが集合するからには何かしらの会議が行われるのだろうが、そこにマリアが参加するのはちょっと疑問もある。
 それでもマリアが納得して参加するなら咎めることではないし、何かあればマリアから連絡くらいはしてくれるはず。

「それからメールするかもだから休憩時間にでもグローバル接続しておいてね」

「詳しいことは姫に聞くからいいよ。マリアが関わるなら姫も話さないわけにはいかないだろうし」

 案の定、何か計画があるようでそのメールとやらの受け取りはするように言われて、それを受け取ってからあれこれと思考するのもあれだから学校で事前に聞いておくと返せば、まぁそれならいいかみたいな雰囲気でマリアは行ってしまうのだった。

「勘違いしないでほしいが、私はマリアに強制など一切していないぞ」

 それで実際に学校で黒雪姫から話を聞き出すと、まだ全容も話していない段階で前置きみたいにそんなことを言う黒雪姫は、どうせ話すことになるだろうと予測していたからかすぐに今日の計画を説明。
 全てはハルユキの《災禍の鎧》浄化計画の第1歩とかで、浄化の心意を使える元幹部《四元素(エレメンツ)》だった謡をレギオンに引き戻すのが目的。
 それ自体は今日にでもすぐに復帰してもらえるように説得すると豪語するも、問題は復帰して「よし浄化だ!」といけないことにあるらしい。
 というのも過去に第一期《ネガ・ネビュラス》が3年前の《七王会議》のあとに無謀にも《帝城》攻略へと挑み見事に失敗し、それが実質的にレギオン解散の理由となったのだと衝撃的な事実を告げる。

 《無制限中立フィールド》にある難攻不落の最難関ダンジョンと噂される帝城は、現実世界での皇居に位置し、そこが丸々ダンジョンとなっているのだが、ここは先日、サアヤが話していたようにまだその内部へと足を踏み入れた者すらいないまさに鉄壁のダンジョンなのだ。
 進入すら実質的に不可能となっている理由は、帝城内部へと続く東西南北の4つの門。これも現実世界の半蔵門などと一致するが、巨大なその4つの門をそれぞれ守護する《神獣級》エネミーすら越える《超級》エネミー。《四神》とも呼ばれるエネミーがいるから。
 その力は王が束になっても1体にすら敵わないと言われるほどに強力で、さらに1つの門を強行突破しようとしても、四神は相互リンクがあるらしく、弱らせたそばから他の出現していない四神からバフをもらって回復したり、より強力になったりして詰み状態になるとか。
 だから帝城攻略の第1歩からして四神を同時に相手するのが最低限で、それほどの戦力が大レギオンと言えど準備できるかと言えば、まぁ不可能に近い。

 その帝城攻略に無謀にも挑み、敗北した際に黒雪姫達は大きな犠牲を伴い、謡と《グラファイト・エッジ》《アクア・カレント》の3人が四神のテリトリーの奥深くで《無限EK》に陥ってしまったのだとか。
 そして鎧の浄化には多大な時間を要するため、とても通常対戦の時間内では無理。だから無限EK状態の謡を救出するのが、今日の計画ということらしい。

「それって言うほど簡単じゃないよね?」

「当たり前だ。結果いかんによっては謡のみならず、他の者も無限EKとなる可能性がある」

「それでもマリアは行くって?」

「『親友のうーちゃんのためなら火の中水の中』だそうだ。正直なところ、トラウマになるレベルの相手にマリアを連れていくのは気が引けるのだが……何故こういうところはお前に似るのか……」

 包み隠さず今日の計画の全てを話した黒雪姫に対して、もちろんその危険性についても考えられたので、その辺での配慮もマリアにはしたと付け足す。
 だが親友のために危険にも飛び込もうとするマリアの覚悟は相当なようで、頑固なところはテルヨシに似てると言われて照れるが、黒雪姫には呆れられてしまう。

「そういうわけで連れていかないとレギオン加入の話を蹴られてしまうのでな。ここは芽を摘むよりも赤いのから1歩リードしておきたい」

「そういう魂胆は話すなよ。ニコたんにチクるよ?」

「構わん。それとどんな理由であれマリアを同行させる以上、お前をセットとして考えている。バイトもあるだろうが、都合は合わせてやるから、計画に参加しておけ。マリアのストッパーはいて損はない」

 そんなこんなで色々とあるみたいだが、マリアが言っていたことも大方で理解できたので、計画のリーダーから直々に参加の了承ももらえて一段落。
 別に黒雪姫は参加は認めたが、計画に力を貸せとは言わなかった。
 これは最悪、安全圏でマリアを守るだけでもいいといった意味が含まれるが、やはり似た者のマリアの《親》である以上、気持ちはマリアと同じ。

「じゃあオレもうーちゃんを助けて『テルお兄さん素敵です!』って言われたいし参加しよっかな」

「…………ういういはそんなあからさまにデレはしないぞ」



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