アクセル・ワールド〜蒼き閃光U〜

□Acceleration Second9
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「…………どういうことだテイル?」

「成り行きでな」

「誘ってきたのはアンタでしょ。成り行きは適切じゃないわ」

「ここは話を合わせてくれても良かったのでは……」

「真実を語らずに言い逃れしようとするなんてカッコ悪いわね」

 現実世界では午後8時15分を過ぎた頃に《無制限中立フィールド》の《帝城》がある千代田戦域。そこの南門付近で予定通りに黒雪姫達《ネガ・ネビュラス》と合流したテルヨシとサアヤだったが、話に聞いていないサアヤがいたことから、合流して早々に《ブラック・ロータス》こと黒雪姫からそんな言及を当然ながら受けてしまう。
 偶然ってことにすれば或いは……なーんて甘い考えが浮かんでシラを切る選択はしたみたものの、サアヤの裏切りによってあえなく失敗。
 仕方なしに誘ったことを話すと、最初こそイラッとした雰囲気を出した黒雪姫だったが、ハルユキ達もいることからリーダーとしての立場で思い留まり《エピナール・ガスト》となってるサアヤへと話しかける。

「いいのか。これは我々のレギオンの問題だ。参加する義理も強制もないぞ?」

「誰も参加するなんて言ってないわよ。でもアンが助けたいって言ってる《緋色弾頭》を助けるのはやぶさかじゃないわ。もちろん、アンがそれを望むならだけど」

 来たからには作戦に参加するものという前提だった黒雪姫に対して、ツンツンなサアヤは素直に協力するとは言わず、お願いされたならいいわと成り行きを見守っていた《ソレイユ・アンブッシュ》となったマリアへと視線を向ける。
 たぶんサアヤは始めからこうすることで協力するのは決めていたのだろうが、性格が素直にそうさせてはくれなかったといったところか。
 案の定、心強いサアヤの参加の可否を委ねられたマリアは、即答に近い「お願いします!」でサアヤに抱きつき、それによってツンデレなサアヤも無事に参加を表明し波風立てずに合流は成功した。

「それはそれとしてロータス。ちょっと話があるんだけど」

「奇遇だな。私も話すべきことがある。内容は一緒の気がするが、まずは聞こう」

 改めて今回の作戦を集まったメンバー全員で取り組むことになってから、作戦の開始はこっちがタイミングを取る関係上、話すべきことは始まる前にとサアヤと黒雪姫が明らかにテルヨシを見ながら怪しい会話を繰り広げて2人で内緒話をするので、絶対にリアルについてだと確信しつつもレイカー達の方に移動して今の段階での作戦を聞いておく。

「やることは簡単ですよ。まずはこの中の誰か。おそらくはパイルになるでしょうが、離脱ポイントからこちらに見える離脱の合図を出して離脱。現実世界の《アーダー・メイデン》に加速してもらって、そのタイムラグの間にタイミングを見てわたし達が南門に向けて進撃。スザクの足止めをしつつメイデンの出現と同時に最大速度の鴉さんがキャッチして、急上昇からスザクを振り切って全員が離脱。話せばその程度の内容ですが、その程度と言うにはあまりに危険です」

「あくまで救出が最優先の動きになるわけね。クロウは大役だけど大丈夫?」

「は、はい。メイさんのために精いっぱい飛びますので、フォローをお願いします」

「おっ、言うねクロウ。テイルさんや姉さんの前だからってカッコつけなくていいんだよ?」

「クロウがやる気になってるんだから、ベルも余計なことを言わなくていいじゃないか」

「そ、そうだぜベル。こんな俺は珍しいんだから、作戦前にやる気を削ぐなよな」

「そのやる気とやらをいつも出せばいいのにねぇ」

 聞けばなんてことはない作戦ではあるが、南門へと続く大橋は500mもあり、その橋に足を踏み入れた瞬間からスザクが出現し攻撃してくるのだから、その橋の最奥に鎮座する祭壇辺りまで行って封印されているという謡のデュエルアバター、アーダー・メイデンを拾って戻ってくることがどれほどの危険か。
 その謡を拾い上げて戻ってくるという重大な役目を担うハルユキも事前に言われていたのか、すでに開き直りにも見える覚悟は出来ているようだったが、茶々を入れるチユリと仲裁に入るタクムとの幼馴染みのやり取りは和やかな雰囲気で緊張はいくらか和らいだろうか。
 テルヨシも足止め役になるはずなので、その方法についていくらか考えつつ、すでに《シャープネス》を呼び出して黙々と溜めていた必殺技ゲージを使って銃弾を生成するマリアに近づいて様子をうかがう。

「アンは橋に侵入する必要はないから、フォローをお願いな」

「うん。でもロータスさんとレイカーさんに閃光弾と音響弾は効かないだろうって言われちゃったから、炸裂弾や貫通弾でどれくらい足止めになるかわかんない」

「相手が火熱属性だしな。それでも目とか狙えば有効かもしれないし、頼りにしてる」

「テイルも無茶しちゃダメだよ。1人の無茶がみんなに迷惑をかけるんだってロータスさんもレイカーさんも言ってた」

「お、おう。気を付ける……」

 ここに来て凄く冷静なマリアにド正論を言われて親子としての立場が逆転したような気がしないでもないが、自分よりずっと無茶はしなさそうなマリアにはひと安心して、内緒話を終えたサアヤと黒雪姫が戻ってきたことで改めて全員での作戦会議を行い、細かい段取りやそれぞれの役割を明確にする。

「まずは私とテイル、ガストで先行し心意技も惜しまずに出現したスザクへと攻撃しタゲをもらう。ベルとアンは橋の外から我々をサポート。それとほぼ同時に大橋より200m後方からクロウを背負ったレイカーが《ゲイルスラスター》での加速で橋に突入し我々の頭上を越えたところでクロウを射出。クロウはその加速と翼でスザクを飛び越えて祭壇付近に出現したメイデンを抱き抱えて浮上し、転回して戻ってくる。その際に我々も防御を最大にしてベルの回復も頼りに後退。概要としては以上だが、質問はあるか?」

「へいロータス。考えたらキリがないのはわかってるけど、不測の事態には誰の判断に従う?」

「無論、私だ。と言いたいところだが、切羽詰まった状況で人の判断を待つ時間が致命的になることもあるだろうからな。その時は各々でリスクのない判断で動いてくれ。いいか。リスクを負って無限EKになることが最悪の事態だ。それを念頭に置け」

「何故にオレを見ながら言うかね。信用ないわぁ」

「女のためなら無茶も平気でやるからでしょ。作戦じゃクロウ以外みんな女で心配しないわけないでしょ」

「何故オレが不安要素みたいな扱いを受けねばならんのか……」

「それはテイルさんが素敵な人だから、ついつい気にしちゃうんです」

「姉さんのそう言っとけばいいだろ感が凄い……」



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