アクセル・ワールド〜蒼き閃光U〜
□Acceleration Second101
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「どういう状況だこれ……」
宗像3女神の試練を乗り越えて、無事に3種類の強化外装を入手したテルヨシ達。
これで現実世界に戻ってカラオケという雰囲気の中、テルヨシやサアヤが気になっていた東京湾アクアラインに密集するエネミーを調べに行きたいと言うと、その理由を聞いた一同はもうひと仕事といった感じで同行を了承してくれる。
《タギツヒメ》と《イチキシマヒメ》も引き連れて何の障害もなく東京湾アクアラインの海上にある人工島。海ほたるPAまで辿り着き、まずはとテルヨシが偵察。
その視界に入り込んできたのは、10体のエネミーに囲まれる《シーバ・カタストロフ》に、エネミーを操る《ブラック・バイス》と見物人と思われる《アルゴン・アレイ》だった。
もう1つ、謎の発光空間もあるが分析するのに必要な情報が不足しているため、とりあえず保留して飲み込めない状況を把握しにかかる。
会話はさすがに聞こえない距離で難易度は高くなるものの、雰囲気は明らかにカタフが加速研究会と対峙している。
《ISSキット》の一件以来、その安否が心配されていたカタフがとりあえず無事だったことはテルヨシとしても安心することだが、状況は呑気なものではなかった。
何かを話しているっぽい雰囲気があるうちは動きがなかったカタフ達だったが、その会話が終わったかと思われた瞬間にバイスの命令を受けたエネミーが一斉にカタフを攻撃。
この海ほたるPA全体が軽く揺れるほどの総攻撃を避けられるわけもなかったカタフは、今ので即死。
土煙が晴れた場所には死亡マーカーが浮かんでいた。
まさかこんなことを繰り返していたのか?
テイムされたエネミーによる《無限EK》はある意味で最も残酷な手段と言え、そのやり方を平然と実行する加速研究会には反吐が出る。
だが同時にあの加速研究会がこんな『地味な作業』を延々とやってるのかと疑問も浮かぶ。
単にカタフを全損させる目的なら、あの組織はもっと効率の良いやり方があるのではないのかと考えてしまう。
それだけの悪い意味での信頼と実績があるだけに今の状況を正確に理解するに至れなかったが、不意にカタフの死亡マーカーの周囲に白い光がキラキラとまばゆき、マーカーを包み込む。
すると死亡マーカーは光が収まるのと同時に消滅して、カタフが蘇生待機時間を無視して蘇生。
それに驚く様子もないカタフは、すでにこの行為に慣れているのか、或いは……
「強制蘇生の必殺技? だとするとあそこにいるのか」
元から知っているかの2択と考えたテルヨシは、今の現象が分類として《回復》に当たると見て、未だに加速世界で2人しか現れていないという回復師(ヒーラー)が頭に浮かぶ。
3人目と言われているチユリは厳密には回復アビリティではないし、強制蘇生もできないのでもちろん違うし、残る2人のうち1人は悲劇のヒロインのごとく自分を巡る争いに耐えられず自らアンインストールしたと黒雪姫などからも聞いていた。
そして残る1人は《白の王》である《ホワイト・コスモス》。
《オシラトリ・ユニヴァース》のレギオンマスターにして加速研究会の会長である黒幕が、今あそこにいるのだ。
だとすればアルゴンの隣に現れている発光空間の中。いるとするならそこしかない。
まだカタフをどうしたいのかはハッキリとしないが、何かの目的が遂行中と見て偵察を切り上げてサアヤ達のいるところへ戻り、見てきたものをそのまま伝える。
「コスモスがいるのね。なら向こうもそれだけ重要な計画を進めてるんじゃないかしら」
「じゃな。バイスとアルゴンもおるなら尚更じゃ」
「お、おい。お前達は普通に受け入れているが……」
「コスモスって、白の王ではありませんの。そんな人がISSキットをばら蒔いた方々と一緒にいるのですか?」
「いや、話からして白の王は協力者どころの話じゃねぇだろ」
「黒幕はそいつか」
さすがに伝えていないことを一気に話したから、カイを始めとした面子はコスモスがいることに明らかな同様を見せてしまう。
だからといって物証もないことを話しても、はいそうですかと素直に納得できることでもないから、テルヨシ達もその辺の話はあとでゆっくり話すしかないと、今はシズクの解釈でいいと疑問に対しては無理矢理に終える。
問題なのは現在進行形でカタフが延々と死亡と蘇生を繰り返されているかもしれない事実と、放置すれば全損もあり得ることだ。
話をしている間にまた微震動が伝わってきて、これがエネミーによる総攻撃だと説明すれば、いよいよ危機感を抱いた一同もカタフ救出のためにどうするかを考え出す。
『話を聞くに、操られたビーイングに小戦士が1人、蹂躙されているのですか』
『妾達にはどうでもよいことではあるが、その者達の行いはビーイングを軽視している節がある。そこは見過ごせんな』
無策に飛び出してもエネミーに殺されるだけなのでシズクすらさすがに先行したりはしなかったため、少しの沈黙が続き、そんなタイミングでタギツヒメとイチキシマヒメがいたことを思い出させるように存在アピール。
カタフに関してはどうでもいいという価値観の違いこそあれど、加速研究会のしていることが気に食わないという点では合致した以上は、協力してくれる流れにはできる。
「タギツヒメ、イチキシマヒメ。エネ……ビーイングは10体。たぶん全部2人と同じレベルのビーイングだけど、まとめて相手できるか?」
『妾達の力はエリア制限があるゆえ、ここでは本来の70%ほどの力しか出せないでしょう。ですが全てのビーイングをまとめて相対する必要はありません』
『突破口は妾達が作ろうぞ。そなた達は小戦士を救い、忌まわしき頚木を破壊することに集中せよ』
一応の問題点として10体のエネミーを相手取ることを挙げてみても、どうやら問題なく対処できる自信があるようで、そこまでの自信があるならテルヨシ達もそれを信じて行くしかないと決意。
何をどうやって相手するのかも具体的に説明せずに善は急げみたいな行動力で移動してしまったので、そこはもうちょっと慎重に行こうよと思いながらも、もう止められない流れには乗るしかないので、半分くらいは破れかぶれな気持ちで進軍していった。
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