魔法少女リリカルなのはViVid〜時を越える願い〜

□〜覇王と和人とノーヴェ〜
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覇王と別れた和人は歩きながら誰かに通信を繋ぎ話をしようとしていた。


「ほいほーい。なんか用か?和人」


通信の相手、テイルは繋がると陽気な挨拶とともに用件を尋ねてきた。


「いや、用ってほどじゃないが、今さっき道端で街頭試合を申し込まれてさ。その相手をしてたんだよ」


「へぇ〜。その相手ってもしかしてバイザーした女じゃなかったか?」


「おお!よくわかったな。ドンピシャリ!」


「捕まえろよ!仮にも管理局員だろ!」


「何でだよ?街頭試合っつったろ!」


「はぁ〜、もういいや。そいつは今ちょっと騒がれてる格闘技者を襲う通り魔なんだよ」


「だろうとは思ったがな。じゃなきゃ人物像なんてわかるはずねぇし」


「……お前と話してると腹立ってくるわ。それで?何が知りたくてオレに通信を繋いできたんだよ?」


「話が早いな。さすが我が友人だ」


「いいから話せよ」


「はいよ。その通り魔、今は別に手配されたりはしてないんだな?」


「ああ、ちょっと騒がれてる程度で被害届も出てねぇって話だ」


「……その情報、ギンガ経由だろ。まあいいや。話はそれだけだ、じゃあな」


和人は言った後テイルの返事を待たずに通信を切った。


「さて、そうなると明日にでも本人に話をしないとな……」


和人は歩きながらモニターを開いてメアリス達が通う学校の顔写真付の学生名簿を映し出し、ある一人の女生徒の名前を引き出して見る。


「アインハルト・ストラトス。名前のイニシャルと顔の印象で引っかかったけど、あの姿はヴィヴィオと同系統の変身魔法か?」


和人は一応学生名簿で生徒の顔と名前は全員憶えていたため、彼女の名前を聞いた時からどこか見覚えのある顔だと思いその記憶と照らし合わせていたのだ。


「まっ、人物特定の決め手はあの瞳だな。ヴィヴィオと同じ虹彩異色はなかなか見ないからな」


そんなことを言っていると、家が近くなったため開いていたモニターを閉じて考えるのをやめた和人。













「質問すんならバイザー外して名を名乗れ」


救助隊での用事を終わらせて帰路についていたノーヴェは、先ほど和人が相手をした覇王に呼び止められていて、和人同様に名乗るように促すと、覇王は素直にバイザーを外して名乗った。


「噂の通り魔か」


「否定はしません」


覇王は言いながら少しノーヴェに近付いた。


「ん?そのデコはどうしたんだ?赤くなってんじゃねぇか」


そこでノーヴェは覇王の額が赤くなってることに気付き尋ねると、


「これはお気になさらずに」


覇王はそう言って額を手で隠してしまう。


「あ〜、まあそれには心当たりがあっからいいや」

(絶対和人さんだな。一応あとで確認とっとくか)


ノーヴェはそう判断してそれに関しては追求しなかった。
そして覇王は和人に尋ねた内容をノーヴェにも尋ねるが、


「知らねえな。聖王のクローンだの、冥王陛下だのなんて連中と知り合いになった覚えはねえ」


ノーヴェは一刀両断しさらに続ける。


「あたしが知ってんのは一生懸命生きてるだけの普通の子供達だ」


それを聞いた覇王は聞いても無駄とわかり引き下がると、もうひとつの目的をノーヴェに話した。


「防護服と武装をお願いします」


「いらねえよ」


「そうですか」


その話を聞いたノーヴェは何故こんなことをするのかを聞き、覇王はただ「強さを知りたいから」と答えるが、


「ハッ!馬鹿馬鹿しい」


それを笑ったノーヴェは構えたとほぼ同時に覇王へと距離を詰めて左の跳び膝蹴りを放った。
しかし不意打ちだったにも関わらず、覇王は両腕でしっかりガードし防いでいた。そこへたたみかけるようにノーヴェが右のスタンショットを打ち込むが、それも両腕のガードに阻まれてしまう。


(ガードの上からとはいえ、不意打ちとスタンショットをマトモに受けきった。ち……言うだけの事ぁあるってか)


今の二発で決めるつもりだったノーヴェは、二発とも防がれたことに舌打ちして懐からクリスタルタイプのデバイスを取り出し、


「ジェットエッジ」


『スタートアップ』


その言葉に応えたデバイス、『ジェットエッジ』はすぐ起動してノーヴェに武装を施した。それでやる気になったことを確認した覇王は、丁寧にお礼を述べた。


「強さを知りたいって正気かよ?」


「正気です。そして今よりもっと強くなりたい」


「ならこんな事してねーで真面目に練習するなりプロ格闘家目指すなりしろよ!単なる喧嘩馬鹿ならここでやめとけ。ジムなり道場なりいい所紹介してやっからよ」


「ご厚意痛み入ります。ですが私の確かめたい強さは……生きる意味は『表舞台にはないんです』」


覇王はそう言い切ると初めてノーヴェの前で構えた。しかしノーヴェとはかなり距離があり、


(構えた。この距離で?空戦[エリアル]?射砲撃[ミドルレンジ]?)


ノーヴェもそれには警戒していたが、次の瞬間にはノーヴェの目の前に迫って右腕を振りかぶっていた。


(突撃[チャージ]!!)


ノーヴェはそれに驚きつつ放たれた右拳を躱したが、覇王の独特の歩法に翻弄されて腹へ一撃もらってしまう。
怯みつつもノーヴェは後ろへ飛び退き一旦距離を開ける。


「列強の王達を全て倒し、ベルカの天地に覇を成すこと。それが私の成すべき事です」


覇王の強くなる理由を聞いたノーヴェは、


「寝惚けた事抜かしてんじゃねェよッ!」


言って覇王と打ち合いを始める。


「昔の王様なんざみんな死んでる!生き残りや末裔達だってみんな普通に生きてんだ!!」


それで一旦距離を置く両者。


「弱い王なら、この手でただ屠るまで」


「このバカったれが!!」


それには我慢の限界になったノーヴェ。あまりの怒りに身体中から凄まじい魔力が溢れだした。



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