02/05の日記
17:45
逆ハー補正少女と狂愛少女
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※ハトアリ
「これからこの屋敷に滞在する、余所者のリリィだ。」
帽子屋屋敷でブラッドにそう言われたのが、始まり。
その言葉に、クラリスは目を見開いた。
他の役持ちから溺愛されている、“メアリアン”の役持ち。
それがクラリスだ。
彼女は、その性格から役なしにも慕われていた。
ブラッドの隣で甘く笑う、リリィ。
その時から、世界は変わった。
役持ち達は、リリィを愛した。
クラリスの事など忘れたかのように。
リリィは、クラリスが役持ちといると不愉快だと言った。
―わたしの居場所は、無くなった。
『寂しい…』
誰も、わたしを見てくれない。
そんなクラリスを気に掛けたのは、恋人のユリウスと役なしだけだった。
クラリスは、それでも。
―寂しかった。
帽子屋屋敷から追い出され、時計塔広場で暮らし始め。
クラリスと関わるのは、いつしかユリウスと役なしだけになっていった。
メアリアンは、愛される存在。
役持ちに愛さなくなったからか、その分役なしがクラリスに捧げる愛は、重くなってゆく。
重く、狂ってゆく。
「クラリス様、あいしています!ああ本当に可愛らしいですね!私だけのクラリス様、大好きです。こんなにあいしてるんです。ねぇ?」
「クラリス様は俺だけのものでしょう?他の奴らなんて見ないでくださいよ。あ、そうだ。傷付けたら俺のものっていう印になりますよね?」
『ぃ、やぁああああああっ!』
付けた傷を自慢し、殺し合う。
クラリスは、こんな愛を知らなかった。
だから、逃げた。
そして、クラリスの家に役なしが押し掛けた、時。
「いるんだろうクラリス。リリィがお前に会いたいと言っていてな。」
「早く開けろよ!」
「リリィお姉さんを待たせるなんて生意気だよね」
「そうそう。」
扉の向こうで、声がする。
開けたいけれど、怖い。
彼らにあるのは、わたしへの拒絶とリリィへの愛。
「リリィ、誰それ?俺たちはクラリスさんがいればいいんス。それ以外はいらないんスから。」
「そうだよ、クラリス様さえいれば、他のものなんていらない。クラリス様だけ。僕らの愛を受け取ってください!」
役なしと言えども、この世界の住人。
容赦の無い暴力…否、“愛”に、クラリスの身体が耐えられるはずがなかった。
『、ぃや…痛っ、あ、やああぁああぁ!』
「!?…おい、クラリス!?」
「な、何が…おい、ここ開けるぞ!」
「く、クラリス?」
「ひよこウサギ、どいて!僕らがやる!」
ドガッ、ガシャンッ!
破壊音と共に、わたしの意識は途切れた。
目を覚ましたて最初に見えたのは、懐かしい天井。
『ぼ、帽子屋、屋敷…?』
霞む頭に、ドタドタと足音が響く。
「大丈夫か、クラリス!」
「お、俺たち…ごめん」
「怪我はまだ治ってないから」
「じっとしてて、クラリス」
帽子屋屋敷の皆を筆頭に、役持ちが集まっていた。
(何で、リリィがいるのにわたしなんか心配するんだろう)
クラリスは、ただただ不思議だった。
ふと、こちらを見るリリィと目が合う。
「…気持ち悪い。」
「っ、お嬢さん!」
ブラッドがリリィの肩を掴む。
「なぁに、ブラッド?リリィを殴るのかしら」
「…っ、」
「いい加減にしろ!」
リリィは目を見開く。
何故なら怒声をあげたのは、大好きなユリウスだったのだから。
「ゆ、ユリウス?なんでそんな子…っ!」
「黙れ。私が愛しているのはクラリスだけだ。」
すると、今まで黙っていた帽子屋屋敷のメイドや構成員も加勢しだした。
「そうですよ〜ボスもリリィ様が来てからおかしいです〜」
「クラリス様を追い出すなんて〜」
「な、何なのよ!顔無しのくせに…リリィは愛してあげたじゃない!」
その少女の醜い言葉に。
役持ちは、目を覚ます。
さながら魔法が解けたように。
「ち、ちょっと皆?何で黙ってるの?リリィが侮辱されたのよ?」
「…悪いがお嬢さん、私はやはりクラリスが大事だ。」
ゆっくりとブラッドが紡ぐ言葉に、クラリスとリリィは驚愕に顔を染める。
「な、何いってるの、ブラッド!」
「リリィ。俺も…ブラッドの言うとおりだと思う。」
『え、…あの?』
次々と、役持ちがリリィを拒絶してゆく。
「何で、何なのよ…っ!神様に逆ハー補正、付けてもらったのに…」
リリィは余程ショックだったのか、意味がわからないことを呟いている。
『…え…?』
驚きに声を上げたのは、クラリスだけじゃなかった。
リリィの身体が、白い光に包まれてゆく。
「え、ぃや…っ!何でぇ!どうして、や、ぁあああぁあ!」
醜い悲鳴を上げながら、少女は消えていった。
残ったのは、白銀の少女と少女に寄り添う青い男、呆然とする役持ちだった。
〜〜〜〜〜
傷付いた少女は再び役持ちを愛するのでしょうか。
☆コメント☆
[白雪] 02-08 00:02 削除
面白いです。ぜひ、連載して欲しいです!
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