詩2
□【旅立ち】
1ページ/1ページ
結局君には話していない
この町を出て行くと決めたこと
なかなか切り出すことができずに
その日は確実に近づいていた
ここでこうやって
町を眺めるのも
最後になるのかな
今までの思い出が
浮かんできては
景色に溶ける
歩道橋の上から見下ろす町は
賑やかだけどどこか寂しげで
旅立ちの日が近づいているのを
ばれないように涙をそっと拭く
今から電話をすれば間に合う
せめて最後にさよならを言いたくて
番号押しかけ受話器をもどす
10円玉がカランと音を立てる
そろそろ君の部屋で
目覚まし時計鳴り響く頃かな
僕が乗った電車は
駅を離れ知らない町へ
流れる窓から見渡す町は
僕に何かを語りかけてくる
忘れるわけなんてあるはずないよ
僕らが生まれて育ったこの町を