ミジカイユメT
□愚者物語
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「俺は‥‥‥‥」
少し長めの沈黙。
「何??」
お前は強い女だと思うぜ
何を言い出すのかと思えば、そんな意味の分からないこと。
でも、そう言ったあんたの顔は、ガラにもなく耳まで真っ赤で、とても冗談とは思えない。
ほんの少し、いじめてみようかな。
「いきなりどうしたの??」
私は上目遣いにあんたを見上げた。
あんたがこれに弱いって知ってるから。
「いや、別に‥‥‥」
そう吃るあんたが、何だか恋しくて。
何でかわからないけど、どうしようもないくらい愛しくて。
「何よ、気になるじゃない。」
私は、自分の頬がニヤついたのがわかった。
自分でも、こんな表情が手来たのかと驚くぐらい、素直に‥‥‥
あんたは照れてそっぽ向いているけど、耳まで真っ赤なその顔は、隠せてないよ。
鬼の副長さん。
まぁ、こんなこと考えてる私も、墜ちたものだけど。
本当の自分は‥‥、どこに行ってしまったんだろう。
いや、本当は、これが本当の自分かもしれない。
もう、自分で自分のことがわからない。
あんたと視線を合わせる度に、言葉交わす度に、抱かれる度に‥‥
‥‥本当の自分が分からなくなる。
埋もれていく。
自分のことがわからない。
自分がどこにいるのかも。
何者なのかも、わからない。
わ か り た く な い
「好きよ。」
あぁ、あんたの背中は広くて温かい。
後ろから手を回せば、かろうじて届くぐらい。
大きい。
「お前こそなんだよ。」
「フフッ
『いや、別に‥‥‥』
ウフフッ」
お前は悪戯めいた瞳で俺を見上げてくる。
「‥‥‥‥‥」
俺は今、どんな顔をしてんだろう。
きっと、豆鉄砲食らった鳩みてぇな顔してんだろな。
負けたよ。
お前には。
その真直ぐに見つめてくる瞳も、唇から紡ぎ出される言葉も、表情も、全部。
計算しつくされたものだとわかっていても、こんなに惹かれてる。
お前のその、瞳に、唇に、表情に、仕草に、匂いに、全てに、惹かれてる。
そうやって、後ろから抱きついてきて、俺を見上げるその顔にも。
お前の頬に触れれば、こんなに熱い。
どんどん熱が広がっていく。
そうして溶けていき、固まって‥‥。
ほら。
離れねぇ。
お前の瞳を見つめれば、お互い見つめ合えば、もう視線は剥がせねぇ。
言葉なんてもん、必要ねぇ。
でも、分かり過ぎるのも問題だ。
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