ミジカイユメT

□似た者同士
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あんたって、あんなに真直ぐ戦うのに





返り血がないよね





仕事帰りの満月の夜



二人には浪人を切った帰り道



「そうですか?」



月明りに照らされた沖田の顔は、きょとんと、漆黒の衣装を纏った少女を見つめた



「そうですよー」



少女はそっぽ向いて、頬を膨らませた



「何拗ねてるんですか?」



沖田はちょっと意地悪く笑う。



「別に…。」



少女はチラッと沖田を垣間見た



(警戒心の強い黒猫みたいですね)



なんて思ったことは、沖田だけの秘密にしておくべきだ。
そうしないと、鋭い爪が飛んで来るだろう。

少女はずっと笑みを浮かべている沖田を睨み付けた。
どうせまた、よからぬことを企んでいるのだろう。

沖田はその視線に気付いて、少女に笑いかけた。

少女はため息を吐く。



「どうして、そんなに真直ぐ敵を見るの?
後ろから殺れば楽よ?
ピストルで殺ればもっと楽。」



少女の顔には笑みがない。
沖田の顔からは笑みが消えた。
そして、次の瞬間には、先程とは違った笑みが零れた。



「そうですね。
でも、私はこれがいいんです。」



愛しそうに刀の柄を撫でる沖田。

少女は何故?
と聞きたそうな顔で沖田を見つめる



「後ろからだと、殺す相手の顔が見えません。間際に、何を見ているのか、どんな表情をしているのか。」



沖田の横顔が、怖いくらい綺麗に、月明りに照らされている



「ピストルで殺すのは非常に簡単です。でも、相手を殺した感触、感覚が残りません。
何も、感じません。」



不意に、背中がゾクリとした。
気味の悪い寒気なのか、心地よい高揚感なのか。



「怖いんだ。」



少女の顔もまた、月明りに照らされている



「何も感じなくなるのが。」



あたしは、そんなもの、とうの昔になくなったわ



「ええ。
そうなんです。怖いんです。」



哀愁漂う、そんな笑み



怖いから、失わないように刻み付ける。

何度も、何度も…



「でも、その恐れは、武士には必要な恐れよ。」



忍のあたしには必要ないわ。



沖田は笑いました。
ひどく嬉しそうに。
優しげに。










「あたしはそんなあんたが、好きよ」







「私だって、そんなあなたが好きですよ」











これが、あたし達





そう





似た者同士

(でも、実は似てない)
(でも、もしかしたら)





似てるかも















似た者同士:


一ヵ月遅れのhappy birthday!
あいむそーりー。


2008:9/6

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