薫炉<現ぱろ>

□E=MC2 2時限目
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先生と毎日二人きり……。
いやいや、ここでしくじったらもう完璧に嫌われる。一生懸命、真面目に頑張ろう。

そう決意したんだけど……二人きりの時の先生は、からかっては来るけど眼がとても優しくて…どこか甘くて…。ノートを横から覗き込む時に、先生の髪が頬に当たる位近かったりして、ドキドキさせられっぱなしだった。

そんな中でも補習自体は、順調に進んでいた。
最初から物理に拒否反応を示している私のカチコチな頭を解すように、とっても判り易い初歩的な所からスタートしてくれた。判りやすい先生の説明はするすると頭に入って行った。

「ふぅ…そろそろ休憩にするか。珈琲煎れるぞ。」

先生は内緒で持ち込んでいるインスタントの珈琲セットを出しながら、実験用のガスバーナーでお湯を沸かし始めた。内緒だぞと言って補習が始まってから毎日二人で飲んでいる。私は棚から先生と私の分のカップを出して珈琲の粉を入れる。先生にはスプーン3杯のブラック、私にはスプーン2杯に角砂糖1つ。
先生が珈琲を口に含んだ。

「私の好みをよく覚えたな。」

たわいもない話しをしていると急に頬っぺたをキュッと摘まれて、偉いぞとでも言う様ににっこりと微笑まれた。それ以外にも時々じっと見られている事があったりして

……先生の優しさに勘違いしちゃいそうだよ……。


そんな想いを抱えてはいたけれど、次のテストで高得点を取って先生の喜ぶ顔が見たい。その一心で補習以外の勉強も頑張った。
そして、学力テストの日をを終えた。

テストが返されて来た日、うきうきと準備室に向かうと先生が丁度部屋から出ようとしている所だった。そして私を見つけると

「蔦森。個人授業は今日で終わりだ。頑張ったな、解放してやる。もう帰っていいぞ。」

先生は笑顔で帰り支度をしながら私にも帰るよう促す。

「………。」

一瞬、頭の中が真っ白くなった。でも、成績が上がれば補習は要らなくなるのは当たり前だ。私の今回のテストの点数は86点だった。そうだった…つい忘れそうになっていたけど、先生は私の物理の成績を上げる為だけに補習をしてくれていたんだった……。他に理由なんて…無いんだった…。私は精一杯、無理矢理に笑顔を作って見せると

「やったぁ…補習から解放されるんだ。嬉し…ぃ…。」

元気良く嬉しそうに言った。…つもりだった…のに…駄目だ、最後は涙声で言葉にもならない。
先生が私をじっと見てる。長い沈黙が続く。
ああ、私の想いが先生にばれちゃう。





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