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□うばって欲しいの
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「本当にいいのかい?」


貴方の困った顔を月が照らした。




今宵、私は貴方に盗まれる―――





















「覚悟はもうできているわ。」



そこそこ名のある大名を父にもつ私は今まで何不自由したことがなかった。


着物も食べ物も充分過ぎる程あった。



ゆっくりと流れる日々の中では全てが満ち足りていて、何も欲しいものはなかった。









たまたま散歩に出掛けた海辺で貴方に出会うまでは。








「もう今までのような生活は出来なくなるぜ?」


「いいの、元親以外何もいらないわ。」





初めて海で出会ってから貴方は私に色々な話をしてくれた。


雨上がりに架かる不思議な七色の橋や一面に黄色の花が咲く丘など、貴方が今までに見て来たものを教えてくれた。




そうやって二人で時を重ねていくうちに私は恋に落ちていた。



貴方がいつも語る外の世界はとても興味深かった。


でもそれ以上に、貴方の銀糸や優しさを秘めた瞳、微笑をたたえた唇が私を夢中にした。












「変わった姫さんだ。」

「もう姫じゃないわ、名前で呼んで。」





雲が流れた。

月が隠れて貴方の表情が見えなくなる。






「そうだな…名無し、行くぜ。」


「…えぇ。」





貴方の腕が私を抱いた。














さようなら故郷、

私は全部貴方のモノになる







end


(かけて、おちる)

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