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□夏の日差し
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容赦なく日が照りつける午後。
風もあまりの暑さに参ったのかまったく吹く気配がない。
日陰でもじわじわと迫るような暑さは体力を削っていく。
「暑い…。」
あまりの暑さに着ていた着物もはだけさせ、団扇で無意味な風を送っていると一筋、ひんやりとした風が頬を撫でた。
「こーら、女の子がそんな格好するんじゃありません!」
風の正体は天井裏から降り立った佐助だった。
腰に手を当て怒る佐助はいつもと同じ露出の少ない忍装束。
見ているだけで暑苦しい。
顔に当てた鉢金は蒸れないのだろうか。
「佐助ってばそんな格好で暑くないの?」
「ぜーんぜん、俺様忍だからね。」
得意げに言った佐助は汗一つ掻いておらず、寧ろ涼しそうだった。
手を伸ばして頬に触れるてみるとひんやりしていた。
「あら、本当に冷たいわ。」
「体温調節くらい出来なくちゃね。」
むにむにと頬の柔らかさと冷たさを楽しみながらふと良からぬことが浮かんだ。
「ねぇ、佐助。」
「なーに?」
「ここも…、冷たいのかしらね?」
人差し指で佐助の唇を撫でる。
「名無しちゃん…っ!?」
佐助の言葉を遮り自らの唇を押し付けるとそこは熱かった。
あまりの熱さに溶けるのではないかと思うくらいだ。
掠める程度に重ねた唇を離すと佐助の顔は目に見えるほど朱色に染まっていた。
手を添えると先刻より熱かった。
「熱い、わね。」
「名無しちゃん、…卑怯だよ。」
今度は佐助から、熱を押し付けた
あぁ暑い、熱い
夏の日差しより熱い愛を
end