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□猫心
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「元親っ!」
振り向いた貴方に力一杯抱きついた。
たくましい胸板に顔を埋め、肺いっぱいに空気を吸うと海の匂いがした。
貴方の匂いをうつすように、身を擦り寄せると擽ったそうに貴方は笑った。
「くすぐってぇよ、名無しはホント猫みてぇだな。」
まるで愛猫を撫でるように、私の頭を行き来する貴方の手。
もっと、と強請るように私はぎゅうぎゅうと貴方を抱き締める。
そうすると貴方は頭だけじゃなくて顎の下も、優しく撫でるように擽った。
「私は…、猫になりたいわ。貴方に一生囲われて、一生愛される猫に。」
撫でる貴方の手を取って、猫のように舌を這わせた。
擽ったいのか、それとも別の何かか、貴方の体が震えた。
「俺は名無しが猫だったら困るな。猫は水が嫌いだろ?だから海に連れていけなくなる。」
先程まで舐めていた貴方の手が私の顎を掬いあげた。
「それに…、」
唇が重なる。
貴方の舌が私の唇を割き、私のそれを絡めて吸い上げた。
「接吻した時に舌がザラザラするのもゴメンだ。」
甘い余韻に漂う私を口角を上げた貴方が悪戯っぽく笑う。
「そう、ね。……ねぇ、もう一回しましょ。」
今度は私から、腕を首に回して唇を寄せた。
そうすると貴方は噛みつくように私の唇を貪った。
一瞬の激情に身を任せて
発情した猫のように
end