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□雨と音
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※現パロ
















強い水音で目を覚ます。

薄い灰色のような、ぼんやりとした意識の中で耳を傾けた。

それは雨音のようで、あえて言葉で表現するとズサーッという感じ。





別に雨は嫌いじゃない。

だけど妙に心がざわつく。


なぜ?


思いだそうとしてもそれは朧気で、例えるなら遠い昔、生まれる前のような感覚。








「起きたの、佐助?」



腕の中の愛しい名無し。

いつの間に目が覚めたのか、大きな二つの瞳が俺を見上げていた。





「雨で起きちゃった。名無しちゃんは?」

「私も。ずっと聴いてたんだ。」

「ずっと?」

「うん、佐助の鼓動と雨の音をね。」



相変わらず雨音は消えない。

でも雨音に名無しの声が響いて溶けて、気にはならなかった。





「なんかさ、世界には雨の音と佐助の鼓動だけみたいで幸せだった。」

「名無しちゃんってばずいぶんロマンチストだね。」




世界には二人だけ。

それはなんて寂しい幸せなんだろう。


だけどそれも悪くないなんて思えるのはこの雨のせいなのか。






「ねえ、名無しちゃん。今日はお仕事休んじゃおっか?」

「お仕事大好きなのに珍しいね?別にいいけどさ。」

「ん、じゃあもう一眠りしよ。」







強く名無しを抱き締めて霞みに意識を手放す。

もう雨音は聞こえない。






end

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リハビリ文。

立派な五月病(笑)




 

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