Syugo-kyara!

□Experience Kiss
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「ねぇ、なぎひこ」


「ん?どうしたの?」


「…ぁ…えっと…」


「?」


一言目はいつも通りの口調だったのに、
二言目はりまにしては珍しく、言いよどんでいる様だった。
そんなりまに疑問を抱くなぎひこは、
次の彼女の言葉にさらに驚愕することになる。


「キスに味なんてあるの?」


「えっ!?」







Experience Kiss












「ばかっ!これよ!これっ!」



羞恥に耐え難かったのか、少々苛立った様子で
なぎひこに、あるページを開いた本を押し付けた。


「…あぁ…そういうことね」


開かれたページを黙読した。
それはいかにも、女子が好みそうな恋愛小説で、
そこに出てきたのが、"キスの味"という表現だった。

現になぎひことりまは、
元初等部ガーディアンと同じメンバーで組織されている、
中等部の生徒会の仕事中である。
しかし書棚の整理の途中でりまは、
仕事を中断し読書を始めたのだった。


「なぎひこは、知ってるの?」


書棚にもたれ掛かり、なぎひこと向かい合う。
「キスの味を」と強調するりまの目は、
既になぎひこを睨む様で、知ってるとか言ったら許さないわよ
とでも言っているようだった。


「もちろん知らないよ!だって、まだ僕たち…キスしたことないでしょ」


「ふーん…」


一見無関心の様に見えるりまだがこれでも、
なぎひこが否定したことで、なぎひこに自分以外の女と
そういった経験がないことに安堵していた。現に自分もまだ体験したことがないのだが。
今の一言になぎひこの、いかにも残念そうな心境が読み取れるが、
当のりまは気が付かない。


「りまちゃん」


「なに」


なぎひこは、微笑みながらりまのふわふわとした髪に手を絡めた。


「キスの味、知りたい?」


りまももうお年頃で、中学3年生で既に
キスの経験をしている友達は少なくなく、
明白にしたいとは口にできないが、
恋人がいるのだから興味くらいはあった。


「あのさ、悪いけど…誘ってるようにしか見えないよ?」


なぎひこはりまの後ろに本棚があることをいいことに、
りまにじりじりと近づいていった。


「…!べ、別に誘ってなんかないわよ!」


「でも、ホントは内心期待してるんでしょ?」


いつの間にか、本はりまの手元から離れ本棚に戻されていた。
りまは右も左も逃げ場を失って、耳元で囁くなぎひこに色を感じていた。

いつもはどこでもにこにこしていて、
女の子みたいなくせに、こういう時に限って普段は見せない、
男気というか、キラキラしたかっこよさとはまた違った、
かっこよさを表に出すから憎いのだ。


「一緒にキスの味ってやつを、確かめてみない?」


澄んだ瞳が宝石のようにか細い光をみせる。
ちらりと見せた赤い舌に、漂うフレグランスに、
心臓が壊れそうなくらいどきどきする。


「…………っ」


額がぶつかりそうな距離にお互いの顔があり、視線が至近距離で交わる。
りまは自分の顔が熱くなるのがわかった。


「…僕とするのが嫌なら、今すぐここから逃げて」


今ならまだ間に合うから、と。

逃げてとは言っているものの、
なぎひこの両手が、自分を捕らえるように
本棚についている今の体勢に、
りまの逃げる隙などない。

りまは平然を装うように、冷たく言う。


「…意地悪。別に、いっ、いやじゃないわ…。」


「…本当?」


こくんとりまが肯定を意味して、縦に首を振る。


「目…閉じて?」


「なぎひこも閉じてよ。」


「うん…」


少しずつ近づく二人。
なぎひこは両手をりまの頬に添える。


「・・・・・・。」


閉じてと言った目は、結局唇が触れ合う
寸前までお互いを捕らえていた。

そっと唇に触れた。ただ合わせるだけのキス。
ほんの2,3秒繋がった二人は、うっすらと目を開け、
もう一度お互いをみた。

りまは恥ずかしそうに頬を染めていた。
照れる仕草が、どうしようもなく愛おしくて
なぎひこはもう一度彼女にキスをした。


「んぅ…んん…っはぁ」


「…ん、りまちゃん…」


角度を変えて、何度も重なる。
先ほどよりも激しいキス。
カクンと身体から力が抜け、立っているのが
精一杯だったりまを、なぎひこは抱いて支えた。

二人はようやく離れ、なぎひこは自分の胸に
りまを収めて、彼女が落ち着くまでの間
そっと背中を摩っていた。


「りまちゃん、ぼーっとしちゃって可愛い。」


りまはクスッと微笑む、余裕そうな表情が悔しくて
なぎひこを睨みつけた。

なぎひこだって初めてのはずなのに…。


「…大丈夫だよ。これから毎日練習しようね?」






結局、キスの味はよくわからなかった。
頭はぼーっとするし、息は苦しいし。
でも、なぎひこをずっと感じられて、
ちょっと気持ち良かった。

…なんて、なぎひこには言わないけど。

そして初めての経験で一つだけわかったことがある。

なぎひこはキスが上手かった。

男の子ってそんなものなのかしら?



end


まとめが下手でごめんなさい。
ついに念願の初ちゅー((ワー、ぱちぱちー
なぎひこは器用だから、きっと初めてでも
キスが上手いと信じてる。

 

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