Maria†Holic
□これは恋だ
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とある日の、夏の夕暮れ。遠くでは微かに蜩が鳴いている。
俺はそんな鳴き声も全く頭に入ってこないほど、弓を引くことに集中していた。
キン…
と静かに自分の手から真っすぐに放たれた矢。
それは数メートル先にある的のど真ん中に突き刺さった。
ふっ…と集中を切らすとじわじわと蜩の声が耳に入ってくる。
一人だと部活でいつも弓を引いているときより、物凄く静かに感じる。
俺以外の部員はもう活動を終え、それぞれ帰って行った。
しかし俺は寮には戻らず、一人で自主練習をしていた。
いつもは残って練習などしないのだが今日は特別。
全ては俺のルームメイトのためだった。
弓を引く俺の少し後ろで見物しているのが、ルームメイトの変態百合女かなこ。
今日はそのかなこが珍しいことに「弓道を見てみたい」言ってきたので、わざわざ部員がいなくなったこの時間を設けてやったわけだ。
最初はコイツのことだから弓道部の部員の方に興味があるのかと思っていたのだが、「部活が終わってからでいいよ」などと言うのだから驚いた。
そのことがわかった俺はほんのわずかだが感心をしたので、特別大サービスで見学を許可したわけだ。