Maria†Holic
□これは恋だ
2ページ/5ページ
*
気がつけば20分ほど矢を射っていた。
その間にかなこは一言も喋りかけてはこなかった。
少し様子が気になったので後ろを振り返ってかなこを見たその刹那。
丁度かなこと目が合った。
少しドキッとした。
まさかそれほど凝視されているとは思っていなかったし、それにアイツの表情。
頬がわずかに赤くて、瞳はとろんとしていた。まるで酒にでも酔っているみたいに。
「な…なんだよその顔。気持ちわりぃなぁ」
不本意で自然と出た悪口。
でも本当は不器用な照れ隠し。
コイツはメス豚なクセに稀にこんな感じで、ドキドキさせる時があるからムカつく。
するとかなこが笑って
「鞠也なんだかかっこいい」
と言った。
「当たり前だろ。俺様だからな。弓道着姿から何まで全部美しいだろ?」
こんなこと落ち着いた素振りで言っていても、頭ん中は愉悦感でいっぱいだった。
かなこの口からもっと"かっこいい"と言わせたい。
別にかなこだけに言われたいとかじゃなくて。
誰でもいいんだ。
きっと。
でもアイツに言われることで、こんなにもキュンキュンするのは何故だろう。
そんなこんなで、だんだん弓道に集中が出来なくなってきたので今日の練習は終わり。
かなこのおかげで色々と考えさせられ集中力が切れた結果、最後の一発は的の真ん中からひどくズレた所に刺さった。