novel

□sweeToxic
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「ええ!?」
つい、ソファから立ち上がった。
武瑠がMITSURUに何か耳打ちすると、彼は再び奥へ行く。
「うそですよね!? そんな、死ぬなんて・・・。」
「だってもう飲ませたんでしょ?」
「う・・・。」
甘い毒の本性を知った。
甘いだけじゃなくて、あの媚薬は毒なのだ。
「・・・まぁ、その前に君・・・えっと、shinpeiが死んじゃったら話は別だけどね。」
「え・・・。」
つまりは、身代わり、だそうだ。
万が一、期限内に恋が実らなければ、何も知らない彼が死ぬ。
しかし、それより前に、自分が死ぬと、相手は死なずに済むらしい。
その期限は、1ヶ月。
「万が一の際には、こちらをご使用下さい。」
いつのまにか傍らにいたMITSURUが差し出してきたのは、小さな小瓶だった。
以前もらった小瓶と違って、白いラベルが貼ってあった。
ピンクのくまが、縄で拘束されて、目がハート型になっているイラスト。
まるで、恋に溺れているようだった。
中には、白いトロッとした何かが入っている。
「それは、俺特製の毒。苦しむことなく死ねる。」
「・・・・・・。」
恋を叶える毒も作れる彼だから、そんなもの作れるだろう。
受け取り、ハンカチに包んで鞄にしまった。
「でも・・・、やっぱり生きたいよね?」
「・・・欲を言えば。」
「じゃあさ、それ飲んだ後、やっぱり生きたかったら、ここにおいで。助けてあげられるかも知れないからさ。」
肩をたたきながらそんなことを言われても、shinpeiの表情は晴れない。
「でも・・・、好きにさせれば無問題でしょ?」
「それが出来るなら、誰も苦労しな・・・」
「ん、大丈夫ー! 今から、色々レクチャーしてあげる!」
「・・・え?」


次の日の朝、いつもとは違うあいさつを試みた。
「Chiyu君、おはよっ!」
そっと、彼の肩に手を触れる。
デスクに鞄を置こうとしていたChiyuは一瞬驚いていたが、すぐにshinpeiに笑みを返してくれた。
(これは・・・効果あるのかな?)
ぬすみ見た横顔が心なしか朱い。
そして、整ったその顔を見つめるshinpeiの顔も朱くなっていく。
(どうしよう・・・!いつもよりもカッコいい気がする! いつももカッコいいけど!)
慌てて顔を正面に向けて、仕事に集中する振りをしながら、横目でチラチラ見続けた。
すると、上司に呼ばれて、席を立ってしまう。
(珍しいな・・・、Chiyu君が呼ばれるなんて。)
普段からミスなどするような彼ではないから、きっと何か手柄を立てたのだろう。
(あ〜あ・・・、だとしたら、またChiyu君が遠のいちゃう。)
しかし、デスクに帰ってきた表情は、あまり嬉しそうではない。
心配になって、shinpeiは見つめるが、目が合った彼が返してくれたのは笑みだった。
(・・・考えすぎかな、Chiyu君が落ち込んでいるなんて。)
すぐに彼は仕事に取り掛かったから、shinpeiも同じように前を向いた。


(・・・何だったんだろ、今日って・・・。)
結局、その日はこれといったアピールも出来ずに時だけが過ぎていった。
なぜなら、肝心の彼が今日一日は多忙そうだったからだ。
話し掛けるチャンスがなければ、本末転倒もいい所だ。
一日を反芻して、肩をガックリと落とす。
(まぁ・・・、明日があるよ、明日が。)
駅に着いて、改札口前でパスケースを探し・・・。
(あれ、ない・・・?)
鞄の中やポケットを探っても見つからない。
今朝にはあったから、きっと会社に忘れたのだろう。
(あ〜ッ! どうしよ・・・!!)
途端に、shinpeiの顔が真っ青になる。
理由は、中にあった。
(中を見る人はなかなかいないと思うけど・・・。)
それでも、shinpeiは慌てて会社に戻る。
誰かに見られては一大事だからだ。
(特に、Chiyu君には絶対に・・・!!)
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