novel

□もうひとつの契約彼氏、生贄彼氏
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俺がぺーさんのことを好きと自覚したのは、もう覚えとらへんくらい、昔やけど。
ぺーさんがアイツのことを好きと知ったのは、自覚してしばらくたったくらいやった。
うぶな高校生やった俺は、結局ぺーさんに告ることなく2人は離ればなれになってしまう、ぺーさんの留学が決まったからや。
「ぺーさん、手紙書いてもええかな?」
名残り雪が足元に積もる中、2人で並んで歩いた。
「うん。電話もメールもして。あ、でも国際電話になっちゃうか・・・。」
「かまわへんよ。」
ぺーさんのためやったらな。
ぺーさんがしてって言ったら、何でもするんやで?
俺っちゅー奴は。
「そーいや、ぺーさん。武瑠は?」
「え・・・?」
と、彼は白く透き通った頬を、淡い朱色に染める。
表情も一気に大人っぽい恋するようなのに変わった。
ホンマずるいわ・・・、ぺーさん。
その表情、俺だけに見せてくれたらええのに。
そもそも、武瑠の話題なんてださなければよかったんや、と俺は今更後悔した。
「今日は、用事があるんだって!だから2人で帰って・・・って。」
「そうんなんや。」
ぺーさんの留学が決まってから、アイツはやけに用事が多い・・・っ!
ここ最近の放課後はたいてい、『ゴメンッ!用事があるから、先に帰ってて!』の一点張り。
そんな忙しい高1どこにおんねんっ!
とツッコミを心の中でいれた。
絶対に、俺の気持ち、気付いてる・・・。
「でも、こうやっての〜んびりぺーさんと下校できるのも、あとちょいか〜。」
「そうだね〜・・・。」
彼の視線が空に向いた。
3月の空は儚い。
「もう・・・冬も終わりやな。」
彼が首に巻いた黒と白のしましまマフラーを見て、フッと笑う。
「そういえば、ちゆ君。俺があげたマフラー、ずっと巻いててくれてるよね?」
「ん・・・、宝物やから。」
でも、俺は知ってるんやで?
アイツに渡そうと思って徹夜して編んだのを。
アイツに渡す勇気がなかったのを。
俺の首に巻いているマフラーは黒一色やった。
「有り難う・・・。そんな下手クソなのに。」
「否、ぺーさんすごいで?むっちゃあったかいわ〜。」
「本当・・・?」
と、めちゃくちゃ可愛くはにかむぺーさん。
頬が朱のままやから、尚更。
「・・・ぺーさん。」
「ん?」
「・・・いや、ごめん。何でもないわ・・・。」

結局、ぺーさんも俺も想いを明かすことなく季節は春を迎えた。
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