novel

□super kawaiiii 〜ぺーさんお誕生日のお話〜
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super kawaiiii

これは、某年の三月十九日のこと。

特に何もない平日のようだが、実はその次の日は休日になっている。
今をときめく人気バンド『SuG』は、明日はオフのため(?)にその日もせっせと働いていた。
今日は雑誌の取材だ。
だって明日は大切な日なのだから・・・



ギタリストのyujiとmasatoがインタビュー中のため、控室には、すでにインタビューを終えたボーカリストの武瑠と、ベーシストのChiyu、そしてドラマーのshinpeiが個々に暇を潰していた。
一応5人揃って解散の予定だった。
すでに撮影は終わっているため、私服で髪のセットも化粧もナチュラルな巣に近い姿の3人だった。
「あ、そーだ。ぺーさん、これあげる。」
「え?」
武瑠が取り出したのは、大きな紙袋で、中に衣服のような物が入っていそうだった。
「え、何で?」
「だって、ぺーさん明日誕生日でしょ?開けて見て!」
「ありがとう・・・ッ!」
早速、紙袋の中の物を取り出す。
やはり布製で、黒く、一枚だけじゃなかった。
(武瑠君のことだし、服なんだ〜、凄いな〜。)
しかし、それを広げてみたshinpeiは、呆気にとられる。
それは、女の子が着るような、いわゆるメイドさんのコスチュームだった。
黒くて、白のレースがついたミニスカートのワンピースと、その下にはくパニエ。
そして、純白のエプロンもセットだった。
「こ、これは・・・ッ」
「えへ―ッ、可愛いでしょ?他にもいろいろセットだよ。」
紙袋をひっくり返してみると、白いフリフリのニーハイソックスや、メイドさんが付けていそうなカチューシャが出てきた。
「き!て!み!て!」
「ええやん、せっかくだし着てや!」
「え〜、Chiyu君まで・・・?」


「わ〜ッ!!ぺーさん、可愛い〜ッ!」
武瑠が目を輝かせる。
その視線の先には、メイドさん・・・の格好をしたshinpeiがいた。
そして、武瑠の隣りには真っ赤な顔で食い入るように見つめるChiyu。
「そうなのかな・・・?」
「Chiyuもそう思うでしょ?」
「当然やん・・・ッ!!」
武瑠に褒められた時も単純に嬉しかったけど、Chiyuだと、なんだか別の意味で嬉しい。
(ちょっと恥ずかしくなってきた・・・。)
「さ〜、俺、ギターんとこ行ってこよっかな。」
武瑠は、にやにやしながら、Chiyuの肩にポンッと手を置いた。
「今日、ぺーさんお持ち帰りOKだから。」
「えぇッ!?ちょッ!?武瑠〜!?」
「明日、まともなプレゼントの方あげるね〜。」
であ、と言い残して、武瑠は出ていってしまった。
2人きりの部屋。
気付けば他3人の荷物は武瑠の計らいなのか無く、だとしたらギタリスト達は帰ってこないだろう。
(でも・・・、この格好で帰るのはちょっと・・・。)
shinpeiの荷物の脇にはゴシックな黒いコートがたたんであった。
「・・・・・・。」
カチューシャを外して床にたたきつける。
そして、私物を片付け始めた。
着替えようにも、今まで着ていたものが見あたらない。
しょうがなく、例のコートを纏った。
「コート着ても可愛い・・・。」
「帰る。」
「え・・・ッ!?」
「だって明日は誕生日なんだもん。」
shinpeiは明らかに不機嫌だった。
「ちょッ、ぺーさん待ってやッ!」
「明日ってオフだよね。俺ひきこもるから、電話もメールもしないでって伝えて。」
明日はメンバー内で、shinpeiには内緒のパーティーを予定している。
「誕生日が明日の人に、祝われるはずの人にメイドって何!?間違ってるよね?」
「そうかもだけどやな、武瑠かてぺーさん(とかまあ俺とか自分とか)が喜ぶと思ってプレゼントしたんちゃうの?」
「じゃあ嬉しくない。またね。」
「ちょっと待ってって!」
とっさに、去ろうとするshinpeiの体を抱きしめた。
「ちょ・・・Chiyu君・・・?」
「えっと・・・、すいません。ごめんなさい。」
「謝ってもらっても・・・。」
「うん、そうやな。・・・すまん。」
とて、Chiyuは腕の力を緩めなかった。
「その・・・、えっと。その服、めっちゃ可愛いって思う。」
「え、これ!?」
「うん。それに・・・、やっぱ祝おーや?年に一回の大切な日やん?俺かて祝いたいし・・・。」
「う・・・ん。」
shinpeiは背後から抱きしめられている。
怒っているのだから、その腕を振り払えばいいのだが、そっと手を添えた。
「あ、そうや!俺、武瑠からぺーさんの服、奪還してくるわ!それなら、ええやろ!?」
突然手を離して、今すぐにでも部屋を飛び出そうとするChiyu。
shinpeiが手首をつかんで、それを止めた。
「ねえ、この格好好きなの?」
キレた声音と口調である。
「え?はいッ、めっちゃ可愛いと思います・・・。」
「・・・なら、行かなくていいや。このままでいてあげる。」
「どういうこと!?」
「ご飯おごってよね。」
機嫌が直ったかは分からないが、取りあえず行ってしまうのだけは逃れたようだ。
「じゃあChiyu君、準備してよ。」
「あ、はいッ」
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