novel

□不完全BirthDay
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「そういえば、武瑠の誕生日っていつ?」
「え?タンジョウビ?」
武瑠はポカンとした顔でMITSURUを見た。
午前11時。
自宅。
未だ開店には早過ぎる時間だし、自宅の一階では、今ごろmasatoとshinpeiが店を開店したくらいだ。
寝るのが好きな武瑠はいつも、11時や、12時、それ以上寝る日もある。
しかし、今日に限っては10時にはすでに意識もハッキリしていたし、MITSURUが未だ寝ててもいいよ、と甘やかしてくれても、すっかり目は覚めていた。
珍しく、朝食と呼べる時間に二人で食事をとった。
その途中、ふとMITSURUに問われて、戸惑う。
「この前・・・えっと2ヶ月前にはぺーさんのタンジョウビ祝ったよね。」
「そう、アレだよ。いつなのかな〜って。」
「さぁ〜・・・、俺も分からない。」
「あ・・・、そうなんだ。」
少しさみしそうな表情のMITSURUを見ていると、武瑠も同じような気持ちになる。
必死でフォローの言葉を探した。
「え、えっと!ぺーさんとか人間って、どんな風にタンジョウビ決めてるの?」
「自分で決めるものじゃないよ。母親のお腹から産まれた日が誕生日。」
「ふ〜ん・・・。俺はいつ、何から産まれたんだろう。」
目についたカレンダー。
今日は五月の上旬。
「・・・決めた!俺、明日産まれたことにする!」
「ああ、いいね。じゃあ今日は10日だから、11日だね。」
MITSURUは立ち上がると、カレンダーの11日に一言書き加えた。
「明日、みんなでお祝いのパーティーしようか!」
「うん。そうする!!」


「・・・って訳なんだけど・・・。」
流行りのカフェには、他にも客は大勢いたが、丁度6人が揃っていた。
カウンターの奥に2人と、ランチを食べに来た4人。
まず、絶賛したのはmasatoだった。
「いいね!武瑠だってお祝いしたいもんね。」
「えへへー。」
「明日って平日やーん。・・・ってことは夜やな。」
「じゃあ、明日はお休みにしよ?まーたん。」
「そうだね〜。一緒にごちそう作ろうか!」
masatoの提案に、shinpeiは目を輝かせた。
「どうせなら、土日とか大安とかに考えろよな〜。急なんだよ。」
と、yujiはアヒル口を突き出した。
・・・が。
「ねぇ、yuji。今日仕事早く終われない?」
「え?多分、大丈夫・・・だけど?」
「待ち合わせして、武瑠のプレゼント買いに行こ?」
「ま、待ち合わせ!?」
魅惑のフレーズにときめきが隠せずに、yujiはうんと首を縦に振る。
一気に機嫌をなおし、挙げ句ノリ気になったyujiは少しだらけた表情でmasatoを見つめた。
「えー・・・!プレゼントとか、別にいいよ?いきなり決まったんだし・・・。」
「誕生日なんだから、ちゃんと祝わなきゃ!ね、Chiyu君。俺も買いに行きたいな〜。」
「う、うん!ほな、今日早めに切り上げるから・・・。」
4人があれこれ計画を立てているのを、なるべく聞かないようにしながら、その様を嬉しそうに見ている武瑠。
不意にMITSURUに左手を握られた。
「え、何!?」
「ごめん。夕方までには絶対帰ってくるから、俺も今からプレゼント買いに行っていい?」
「え・・・、あぁ、うん・・・!ありがと。」
お礼はまだ早いよと笑われた。

・・・その時。

yujiの携帯電話が不意に鳴る。
それは、職場からだった。
「・・・悪りい。俺、明日泊まりで仕事入った・・・。」
通話を切ったyujiが、申し訳なさそうにつぶやく。
「ええ〜ッ!マジかよ〜。」
「・・・あ、ぺーさん。俺らも駄目やん!」
続いて、Chiyuは携帯電話のスケジュール帳を見て言った。
「え?何かあったっけ?」
「温泉行くやんか。2泊3日。」
「ああ!!そうだ!まーたん、言うの忘れててごめんね。明日、お休みもらってもいい?」
「うん、分かった。2人で行くの?」
masatoの質問に、shinpeiは首を横に振った。
「お父さんとお母さんもいっしょ!」
「あぁ、家族旅行ね。・・・僕も、そういえば同窓会いつだっけ!?」
「え!?同窓会とか行くの!?」
誤魔化すように笑いながら、masatoはカウンター下から一枚のハガキを出す。
「えっと・・・、あ、明日の夜だって・・・。」
「え、行くの?会いたい人とかいるの?」
「んー、まぁね。ってことで、僕も明日無理だ〜、ごめんね。」
「じゃあみんな無理じゃん!?どういうことー??」
武瑠は、はぁ・・・、と溜め息をついた。
「俺は大丈夫だよ。」
MITAURUのフォローに、武瑠は目を輝かせる。
「さっすが、みっちゃん!!」
「でも、みんなでお祝いできる日もなくちゃね。」
「うん・・・、ねぇ、今晩なんてどう?」
全員が、いっせいに提案者shinpeiの方を見た。
「ど、どうかな・・・っ!」
「うん・・・!!いいんじゃないの?」
いきなりの提案だったが、口々に賛成していく様を見て、shinpeiは照れたように笑った。
大人に近づいた恋人の姿に、Chiyuの口元がゆるむ。
「ほな・・・、また今晩8時頃に、ここに再集合でどうや?」
「うん、分かった。」
MITSURU以外も同様に賛成した。
「武瑠、どうする?誕生日、今日にする?」
「う〜ん・・・、いいや。今のまんまで!」
「そ、そう・・・か。」
俺しかいないけどと付け足しても、武瑠は日付をズラそうとはしなかった。
(だって、みっちゃんいるじゃん。)
ただニコニコ笑うだけで、それ以上は口にしなかった。
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