novel

□Alterna.
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「・・・―はいッ!カット!」

その場を割れんばかりの拍手と、異句同音の歓声が包んだ。
カメラのレンズに映った麗人が微笑む、『お疲れ様です。』。
その頬笑みは華が咲き誇ったように美しく、また自信に満ちていた。
ファイナルカットを撮り終えたスタジオでは、主演女優を中心に和気あいあいとしていた。
最も、主演女優より周辺の方が盛り上がっているのだが。
「makko、おつかれ様〜」
助演の俳優が満開の花束を抱えて歩み寄った。
手渡す様は、報道陣がいっせいにシャッターを押すくらいに絵になるものだった。
「有り難う。」
また、ふわりと笑えば、スタジオに響くシャッターの音の嵐。
1人のアナウンサーが2人に歩み寄り、取材を始めた。
「今回、お2人は恋人役を演じられましたが、どうでした?」
「武瑠さんは演じることに対して、とてもストイックで・・・。年が近いのに、尊敬しちゃいます。」
女優、makkoの言葉に対して、俳優、武瑠は少し破顔させた。
飛び交うシャッター音。
「makkoさんは、むちゃくちゃプロっていうか・・・! 演技の全てがmakko色なんです。俺もそういう演技がしたいです!」
makkoは照れた様子もなく笑った。
「ナイスコンビでしたもんね!これからの『Reprica&Lie』はどんな展開になりますか?」
「くわしくは未だ言えませんが・・・。主人公の2人が互い惹かれあっていくんですけど、大人のカケヒキが進展します。」
「素直で可愛い彼と、大人な彼女がどう距離を縮めていくか見所です!」


「これからも見逃せねぇ!」
液晶画面に喰い入るようにして見ている青年は、キラキラと目を輝かせながら、叫ぶように言った。
特に、女優の方に目が釘付けのようだ。
「makko、やべ〜!」
「オイ、yuji。キモいで、お前。」
「わッ! Chiyu!」
「よっす。」
yujiと呼ばれた青年は、ビシッと格好良く仕立てられた背広をまとったいとこ、Chiyuを見上げた。
身なりが正反対である。
yujiはいつ買ったか分からないTシャツに、よれたジャージ。
対して、大手芸能事務所を経営しているChiyuとは訳が違った。
「・・・もうかってんじゃん。」
「ん?まぁな。」
余裕そうに歯を出して笑われた。
元々の顔が整っているからして、余計にムカつく。
「なんだよ、お前・・・ッ」
「にしても、お前makko好きなんか〜。俺なんて、毎日生で顔見てんのに。」
「・・・はァッ!!?」
空耳のようなうわ言を述べるChiyuに怒り・・・というか嫉妬を感じたyujiは、勢いよく立ち上がり、彼の肩をつかんで激しく揺らす。
「どーいうことだよッ!? お前ズルいんだよっ!」
「ちょっ・・・ッ! ほ、ほんならウチの事務所で働くか?」
「え、マジ?」
パッとyujiの手が離れた。
「makko・・・やっぱ綺麗だろうな〜・・・。」
「あ〜・・・、まぁ一応女優やしな。」
Chiyuは未だクラクラした視界のまま、虚ろ気につぶやいた。
その言葉を聞いて、yujiの瞳の色がキラキラと輝きだす。
「あのー・・・、yujiさん。事務所の人間になったとしても、makkoに毎日逢えるかどうかは
・・・。」
「でも逢えるかもしんねーじゃんッ!!」
「あぁ・・・、うん。そうやな・・・。」
「つー訳で、求人は俺も視野に入れるように!」
強引に約束をさせられたChiyuだったが、内心ではすでに心当たりがあった。
(もしかしたらコイツ・・・向いとるかもしれへんな、案外。)

その一週間後、yujiはChiyuの経営する事務所に呼び出された。
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