novel

□Life 2 Die〜yuji's Happy Birthday〜
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―数が欲しい訳じゃない。欲しいのは、いつも一つなのに・・・。


その日のyujiの目覚めは、最悪の一言に尽きた。
理由は当人も分からずに胸のモヤモヤだけが残っている。
(・・・んだよ。)
セミダブルサイズのベット、yujiは上半身を起して髪をかき上げた。
(夢見た気もするけど、覚えてねぇ・・・。)
重たい体にむち打って、ベットから抜け出す。
ふと、壁に適当に掛ったカレンダーを見た。
(・・・お、今日masatoの塾ねぇ日だ。)
そう分かった途端、ほころぶ口元。
さっきまでのモヤモヤも忘れて、待ち遠しさに浸った。
今日は、10月19日の金曜日だ。

(・・・もうすぐ来るか?)
「こんにちは〜。」
「あ・・・、masato・・・!」
訪れた少年の姿を一目見て、yujiの顔がホクホクとする。
彼は、すぐにレジカウンターの中に入るyujiに駆け寄った。
「あ、一旦帰らずに来たのかよ?」
理由は、彼が制服姿だったからだ。
いつもなら、一度家に帰っているため、私服なのだ。
「早くyujiさんに逢いたくて・・・」
「そ・・・、そうか。」
それから、小さい声で「俺も。」と伝えた。
「まず・・・店閉めるか。」
「い、いえ!おかまいなく・・・。」
言い合っているうちに、扉が開く。
「あ・・・、お客さんのようですね。」
「・・・チッ。まぁ、いいけど。」

「よし、定時!閉店!」
6時、店の客足も途絶えて、看板をCLOSEに返した。
「なんか今日は、客多かったな・・・。」
「もうかってるってことですよ。」
masatoも手伝って、なんとか間に合ったが、1人だと厳しかっただろう。
安堵しながら、店のパソコンをチェックする。
メールを開いてみると、取り寄せていた商品の運送を知らせるメールが届いていた。
「あ・・・、ヤベ。不在だったのか?」
「僕、郵便受け見てきますね。」
「あ・・・、頼むわ。」
扉を開けて出ていった背中に言う。
本当に気がきく少年だ。
少しして戻ってきた彼は、いくつかの郵便物を持って帰った。
「不在連絡票ありました! あと・・・、これはお手紙ですかね?」
「・・・手紙?」
「わあ、可愛い封筒。えっと・・・HAPPYBIRTHDAY・・・?」
「!!」
言葉に反射したようにyujiはその封筒を奪って、住所を見ずに捨てる。
masatoは慌てた。
「そんな・・・! yujiさんに折角届いたものなのに、ひどいですよ・・・!」
「関係ない。」
冷たく吐き捨てるような言い方にムッとする。
yujiから封筒を奪い返して、胸の所でギュッと抱きしめた。
「じゃあ、捨てるのなら僕が拾って保管します。」
「・・・いいから、返せって。」
「嫌です!だって、送った人はyujiさんのことを思って送られたはずです。人の気持ちを邪険には扱えません・・・!」
珍しく反論する少年に、小さく舌打ちしたyujiは仕方なさそうに言った。
「送り主、見てみろ。」
「え・・・?」
言われた通りに従い、封筒を裏に返す。
そこに記されていたのは、yujiと同じ名字だった。
「もしかして、これは・・・。」
「・・・分かったか?」
こくん、とうなずくが、驚きが隠せない。
それは、彼の実家から届いたものだった。
masatoは、yujiと両親のことを知っていたから、目を丸くする。
「そんなもの・・・、心なんてこもっちゃいねーよ。・・・数稼いでるだけ。」
「どういうことですか、数って・・・?」
「そ、それは・・・。」
ふいに脳裏をよぎる、過去の記憶。
よみがえる幼少の中の自分がつぶやいた。

『いっぱい ほしいんじゃなくて、ひとつでいいのに・・・。』

(・・・るっせえ、黙れ。)
「yujiさん・・・?」
「あ・・・!!」
悪夢から現実に返してくれたのは、その声と、片手に感じる手のぬくもりだった。
「・・・悪い。」
「いえ。どうされたのですか?急に顔を真っ青にされて・・・、どこか具合が・・・」
「うんん。・・・何でもねえよ。」
優しい彼だが、人よりも頑固らしい。
yujiと繋いでいない方の手には、未だ手紙が握られていた。
「・・・それ、どうする気?」
「ええっと・・・。」
「・・・・・・。」
一瞬のスキをついて、手紙を奪う。
yujiは、それをゴミ箱に・・・捨てずに封を開けた。
「いいんですか?」
「俺のためにじゃねぇ、masatoのため。俺はこれっぽっちも興味ねぇし。」
そうぶっきらぼうに言って、中身を丸ごと渡す。
中には、カードと、もう一つ包まれた何かが入っていた。
手を離して、2ツ折りのカードを開いてみると、流れるバースデーソング。
「この歌・・・!って、yujiさん、お誕生日なんですか!?」
「え? あー・・・日曜だったか、2日後の。」
「早く言って下さいよ!」
masatoは、yujiの片腕を握って、もーっと頬をふくらませた。
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