novel
□不完全Xmas eve
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不完全XmasEve
TVの中で、女性アナウンサーが中継でイルミネーションの紹介をしている。
masatoは、家事をしながらそれを見て、目を輝かせた。
「yuji〜、見てみて。」
「んー・・・。」
眠たそうな表情の彼は、昨夜は夜勤だったらしい。
寝ころんでいたのを、ソファから起き上がり、TVの画面を見る。
「・・・あ、イルミネーション。今日はクリスマスイブだな。」
「うん!」
嬉々とした声に、yujiはつられて目を細めた。
「どうする? 今から行くか?」
「うんん、いい。だってyuji疲れてるでしょ?」
アイロンがけの手を止めて、yujiの方を見る。
新たな会社で彼は最近、頑張り過ぎていた。
夜勤明けの日くらいは、体を休ませてあげたい。
「それにね、2人きりで過ごすのも悪くないかなって。」
「・・・そうだな。ありがとう。」
「うんん。」
丁度作業が終わったから、yujiの隣りに腰かける。
「・・・他の人達はどうしてるかな?」
「他の人達?」
「決まってるじゃん。・・・あの人達。」
―
「みっちゃん、何作ってるの?」
「あぁ、これ?」
店は開店時間までの束の間は、仕込みに追われていた。
今日もその途中なのだが、今日は少し違う。
店主MITSURUは、大量のケーキにフルーツを盛りつけていた。
普段見ないケーキ達だった。
「今日はクリスマスイブでしょ? 特別なメニューを作ったんだ。明日からは年末年始で休もうと思っているから・・・。」
「ふ〜ん。」
真っ白な丸い筒状の可愛らしいケーキ。
その上にクリームを絞って、そしてベリーを盛りつけていく。
ワクワクしながら手付きを目で追っていると、声をかけられた。
「じゃあ、武瑠も手伝って?」
「うん、いいよ〜。」
「ハート型のチョコを作ったから、それを冷蔵庫から出して、ケーキに盛りつけてくれる?」
「は〜い。」
言われた通りにして、MITSURUがベリーを盛りつけた後からチョコをのせていく。
ハート型のそれには、白い文字で英語のメッセージが書かれていた。
それは、クリスマスの挨拶や、愛の告白だった。
「可愛いね、これ!」
「ありがとう。ちょっと要望が多かったから、カップル限定ケーキなんだよ。」
「へ、へー・・・。」
聖なる夜に、カップル限定ケーキ、もう完璧な演出といえる。
武瑠は、自分とMITSURUで当てはめた恋の物語を想像して、つい口元がゆがんだ。
「・・・あ、もしかして食べたい?」
「え・・・?」
「じゃあ、一つとっておこうか。」
「え、え、ちょっと・・・っ!」
完成したケーキの一つを冷蔵庫にしまいに行こうとするMITSURUを引き止めて、朱い顔で弁解する。
「そういう訳じゃないっていうか・・・っ」
「あ、そうだった? ・・・結構自信作だったから、武瑠にも食べてもらいたかったんだけどな。」
眉をひそめて苦笑する彼を見て、言葉につまった。
「・・・、前言撤回します。ケーキ食べたいな〜。」
「ありがとう。」
「で、でもっ!」
MITSURUの片腕をつかんで、ギュッと抱きしめる。
彼は、少しだけ赤らめた顔で、武瑠を見つめた。
「その・・・カップル限定なんだから、俺1人では食べたくないから、みっちゃんとがいいな・・・なんて。」
「武瑠・・・。」
何て言われるかと内心冷や汗をかいたが、次の瞬間、武瑠はMITSURUの腕の中にいた。
彼は、ケーキを一度テーブルに置いて、武瑠を抱きしめる。
「うん、そうしよう!」
「えへへ・・・。」
「でも・・・、とりあえず店が終わってからだね。」
「・・・うん。」
現実に戻ってしまうと、少しガッカリしてしまう。
そんな複雑な感情を織り込んだ笑みを彼に向けた刹那、唇を奪われた。