novel

□Boom Boom Neat
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「ねぇ、Shinpei、聞いて。」
開けない扉のむこうで、彼の母は呼びかける。
返事は、しなかった。
「あなた・・・、もうすぐお誕生日よね?」
知るか、と心の中でつぶやく。
「プレゼントって何がいいの?」
「・・・・・・。」
この件に関しては、後に意思を示さなければならない。
きっと、メモ書きを扉のむこうに張るだけだけど。
「実は、一つだけもう準備してあるの。」
「・・・え。」
小さな声をあげてしまったことさえ、不覚だった。
慌ててテレビゲームの音を大きくしてごまかす。
「お誕生日に、分かると思うわ。」
「・・・・・・。」
ただ、黙って母が下の階に降りていくのを待った。
音で察するに、そうなった頃、開けない扉を少しだけ開ける。
(あった、あった。)
ポツンと置かれたポテトチップスの一袋をつかんで、部屋に引きこんだ。
扉の境界線以降は、彼は出ることができない。
10畳と少し、それから風呂・トイレのある自室は彼のテリトリーだから、許された人しか入ることができない。
「・・・さて、」
扉を閉めれば、彼の王国が動きだす。
まず、途中だったゲームをセーブして、それからベットにダイブした。
(もーちょっと寝よ。)
一度眠ると、十二時間はそのまま夢うつつ。
起きたら、ポテトチップス、
ゲーム、テレビやPC、その他、もしくは二度寝。
夜になれば、残りのポテトチップスをつまみながら再びゲーム。
テレビやPC、その他、もしくは朝まで三度寝。
(・・・・・。)
しかし、その日に限っては恐ろしいことに、なかなか寝付けなかった。
不眠症になる程の悩み事などほとんどないような生活だ。
しかし、ただ一つだけ、その原因になり得そうなことがその日にはあった。
「・・・誕生日って、いつだっけ。」
起き上がり、PCの所まで、のそのそと歩いていく。
四六時中、起動しているそれの、検索エンジンにとある日付を打ち込んだ。
(・・・やっぱり。)
その日、Shinpeiにとってはとても大切な日だった。
(ゲームの発売日じゃん・・・!!)
Shinpeiの口元がほころぶ。
軽快な手つきで別ウィンドーを開いて、とある通販サイトのページを開いた。
(じゃあ、俺がしてる予約は取り消していいよね。)
ワンクリック、『予約取消』。
完了の文字を見て、更に満たされる。
(・・・案外、分かってるよね。)
開いていたウィンドーをすべて閉じて、PC前の椅子から立った。
今度こそ、ちゃんと寝付ける気がしてベットにダイブする。
それはその通りで、目をつむるとすぐに眠れた。
そしてそのまま、次の日の朝まで目覚めることはなかった。
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