novel

□swee†not Birthday
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Masatoの一つ年下の彼氏は、あまり積極的ではなくて。
行事もMasatoがはたらきかけないと、何もしないかも知れない。
だから、その日もあきらめていた。
とある五月の下旬だった。

「あ、そうそう。これ!」
カフェでお茶を楽しんでいたある時、向かいに座るShinpeiが小包をMasatoに差し出した。
「え、え、何?」
「もー、明日誕生日でしょ?」
「・・・そうだっけ。もう誕生日か・・・。」
『ありがとう』と笑って受け取った。
「明日は、ちょっと渡せないから・・・。」
「明日、何かあるの?」
「・・・CHIYU君と日帰りで旅行なんだ!」
お互いにゴールデンウイークは多忙で仕事づめだったらしい。
それで、人の少ない今の時期らしい。
「へぇ〜、いいじゃない。」
ふと、自分達のことを思い返す。
ゴールデンウイーク中には、何度か休みが重なった。
しかし、一度もどこかへ連れていってもらっていない。
「・・・いいな〜、ぺーさんは。」
「え、何で?」
「yuji、インドア派でどこにも行かないから・・・。」
さみしそうに笑うMasatoに、Shinpeiは眉をひそめる。
その表情を見て、『勿論不満はないよ!』と付け足した。
「でもね、クリスマスもお正月も・・・いつも僕が何かしなくちゃ始まらなくて。」
「あー・・・うん・・・。」
「・・・そういえば、告白したのも僕だし。」
Shinpeiは何を言っていいか分からないという様子で、Masatoを見つめている。
これ以上、彼に愚痴を吐くのは非常に思えて口をつぐんだ。
「・・・ごめんね。毎日幸せだけど、欲が出ちゃって。」
「yujiも明日はちゃんと考えてるんじゃない?」
「・・・だといいけど。」
口では笑いながら、そんな期待は微塵もしていなかった。
「・・・ごめん、僕、そろそろ。」
「あ、ああうん。」
「帰って、yujiにご飯作ってあげなきゃ。」
もう日は傾き、夕方だ。

材料は家にある、ケーキはいらない。
買い物はせずに帰った。


「ただいま〜って、あれ?」
数年前から、yujiと同居していた。
大抵、休日の夕方に帰ると、寝巻きのままのyujiが出迎えてくれるというのに、その日は真っ暗で、電気もついていなかった。
留守なのか、または寝ているのか。
「まー、いいけど。」
始めから何も期待していない。
とて、yujiのことが嫌いなわけでもないし、むしろ好きだ。
Masatoは靴を脱いで、電気をつけながらリビングまで行った。
無言で暗いリビングに入り電気をつける。
「・・・え?」
ダイニングのテーブルの上に目がいった。
いつもは片付けてあるそこに、2人分のご馳走があった。
「・・・yuji・・・?」
中央には、小振りな純白のケーキがあって、『お誕生日おめでとう』とチョコレートがのっていた。
無意識のうちに手にしていた携帯電話でyujiをコールする。
『あ、もしもし、まーたん?今日は夕飯の買い物とかいらないから・・・』
「すぐ帰ってきて・・・!」
『え、もう帰ってる!?』
yujiは、あせったように『すぐ帰る』と通話を切った。
その場に力なく座り込む。
(うそ・・・、信じらんない・・・。)
どれくらいの間、そうしていたのか分からない。
玄関の方から物音が聞こえた時、急に力が涌きでて、立ち上がる。
「yuji!」
廊下に駆け出した。
買い物袋を片手に持つ彼が、靴を脱ぎかけている。
駆け寄って抱きついた。
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