novel

□生贄彼氏〜HAPPY 製造日〜
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「…髪、変えてみた。」
「すごく似合っていると思うよ!」
「マジ?安心した…。」
折角のサプライズだったのに、逆に驚かされてしまった。
それでもyujiは驚いてくれてるようだ。
「まーたん、俺の誕生日忘れてるのかと思ってた…。」
「ああ、あのアンケートの時?気にしてたの、ごめんね。」
「いや…。でも、ガチかと思った。」
yujiの大好きな料理ばかり並べたダイニングテーブルをはさんで、向かい合った椅子に座る。
彼の目が輝いた。
「美味そう…!」
「どうぞ召し上がれ。」
「うん…!いただきます。」
僕はyujiの食べている姿が大好きだ。
すぐにお皿を空っぽにしてくれる。
作る方としてはすごく嬉しいし、何よりyujiの幸せそうな顔が好きだ。
(いつまでも、こうしていられたらいいのにな…。)
まぁ、彼は変わっていかないのだろう。
僕自身はいつまでも今のまま、という訳にはいかない。
「ねぇ、まーたん。俺さ、髪型以外にも変わったところ分からない?」
「…え?」
食べる手を止めたyujiは僕を見つめている。
しかし、僕は首をかしげた。
「ごめん、分からないかも…。うーんと、ヒント!」
「えっと、今日にちなんで全体的に変わってるかな。」
「全体的…。」
今日、ということはyujiの誕生日。
そのヒントをもらってもよく分からない僕は、当てずっぽうに思い付いたことを言ってみる。
「もしかして、年とってるの?」
「そう正解!」
「ええ!? 本当に!?」
yujiは何喰わぬ顔で『うん』とうなづき、そして真剣な表情をした。
「まーたん、俺のこと正直あきてきてない?」
「…え?そんなこと、全然ないよ!」
「…ならいいんだけどさ。」
あきるなんて、考えたこともない。
いつだって、僕はどんなyujiでも好きだと思っている。
「…人間って、あきるんだろ?」
「え?ああ、まあ…。」
「俺らはさ、そのあきるっていう機能がねぇからよく分からねぇんだよね。ま、俺が人間でもまーたんのことあきるなんて、絶対ないんだけど。」
「う、うん。」
生贄彼氏は究極の彼氏。
だから、その持ち主をずっと愛すように設計されているのか…。
「…でさ、まーたんは人間だからあきる訳じゃん。ぺーさんに、ずっと同じだったらあきられるって言われて…。」
「それで髪型変えたの?…もう、心配性なんだから。」
「そりゃあ…。俺、機械だから何の変化もないし、まーたんのこと分かってるつもりだけど、人間のことはよく分からないし…。」
心配なのは僕だけじゃなかった。
yujiはyujiなりに色々考えてくれていたんだね。
「yujiの言葉をかりるなら、僕は人間だけど、yujiのことあきるなんて絶対ないよ。」
「ああ…、ありがとう。」
「でも、新しい髪型のyuji好きだよ。あ、勿論前のも!」
「どっちが好き?」
難しい質問。
僕は応えに迷った。
「…どっちも。」
一番素直な言葉にyujiの頬が染まる。
「…ありがとう。」
「うん!」
「これからは、いっしょに年とってくれる?」
「も、勿論!」

僕の彼氏は生贄彼氏。
これからも、ずっといっしょ。

END
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