novel
□masato's birthday with 生贄彼氏。
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「一応、頑張ってはみる。」
「うん・・・、お願い。」
速攻でshinpeiに相談したら、すぐに自宅まで迎えに来てくれたのだった。
動かない生贄彼氏と、その契約彼氏をのせて、yuji曰く『実家』へ向かった。
一通り調べた後、shinpeiはつぶやいた。
「・・・もう限界かもしれない。」
溜め息交じりに言った彼の表情は、親のようだった。
「うそ・・・でしょ?」
信じられないmasatoには、同じ言葉しか言えなかった。
「yujiはね、俺が初めて作った機体だから・・・、もう古い。」
まるで心が無いように、茫然とつぶやく。
ボソボソしたしゃべり方は上手く聴き取れなかった。
「まずはyujiを入院させる。出来る限り、頑張るから。」
「・・・・・・。」
「万が一、直らなかった時は代わりの生・・・」
「そんなものいらない。だから・・・、直して・・・!!」
悲願する瞳に、NOとは言えず、shinpeiはうなづくしかなかった。
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『実家』からの帰り道、masatoはそのまま武瑠のマンションへ行った。
いつも相談にのってくれたり、いいmasatoの親友。
世間的には、若手の一流小説家として知られている。
『武瑠』の名が彫られた万年筆がトレードマークだった。
大切な人からのプレゼントらしいが、その贈り主は誰も知らない。
「そっか・・・、yujiがそんなことに・・・。」
彼が作ってくれたパスタは相変わらず美味しかった。
「まぁ・・・、大丈夫だって!ぺーさんなんだよ?」
「・・・だといいけど。」
「こんなこと初めてでさ、ぺーさんも驚いているだけなんだよ。」
「・・・うん、そうだよね。」
彼の目の下には長年の疲れを表すくまが、くっきり浮き出ていた。
もしかしたら、締め切りが近いのかもしれない。
なのに、自分のために時間を割いてくれた親友の優しさに、鼻の奥がツンと痛んだ。
「・・・ありがと。」
「俺?うんん、全然!」
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yujiがいない日が数日続いた。
少しの間だと辛抱して、耐えたのに、悲劇は重なる。
「ごめんね、夜分遅く・・・。」
「yujiに・・・何かあったの?」
「今すぐ迎えに行くから、来てくれるかな?yujiが・・・っ!」
ふるえたshinpeiの声から、よくないことを察したmasato。
shinpeiは来なかったが、『実家』から来た車に乗り込む。
(お願い・・・!もう一回、yujiと会いたいよ・・・。)
着いてすぐ、待っていたshinpeiに案内されて、一つの部屋の前。
masatoは部屋に入るなり、青い顔をした。
「ゆ、yuji!?」
黒いカーテンに囲われて、照明が薄暗い部屋の中央にはベットのような台が置いてある。
その上には、yujiが寝そべっていた。
「うそ・・・。」
無機物な表情は格好良かったけども、見たくはない。
彼の首を抱きしめた。
「誕生日・・・、祝ってくれるって言ったでしょ・・・!」
その時、時計の針がカチッと動く。
直後、アラームのような音が短くピピッと鳴った。
「!!」
masatoは夢によく似たキセキを、身をもって感じた。
(え・・・?yuji・・・?)
また再びyujiの力強い腕で抱しめられる日が来るなんて。
本当に、夢なのかもしれない。
しかし、腕はあたたかかった。
「お誕生日、おめでとう。まーたん。」
「yuji・・・?」
パッと照明が一斉について、黒いカーテンが全て開く。
浮かぶカラフルでメタリックな風船達、ファンシーなハッピーバースデイの看板、そして見覚えのある面子共・・・。
「ハッピーバースデー!!」