novel

□Alterna.
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「よう、yuji。思ったより早かったな。」
「ちょっ・・・ッ!俺の職種とか後でいいから、このビルのどっかにmakko居たりする!?」
社長室に通されたyujiは、子供のようにそわそわと落ち着かない様子だった。
折角、今日のために買った少し高級なスーツも、整髪剤でセットした髪も、すっかり緊張しきったyujiの顔では台無しだ。
「ちょいお前。緊張ほぐさんかい。」
「つっても・・・。makkoが所属してる事務所に居ると思うと・・・。」
(あーあ・・・、折角男前やのに。)
内心残念に思いながら、Chiyuは、はぁ・・・と溜め息をつき苦笑する。
「まぁ座れや。もーちょい時間あるし。」
「それより俺、ここ色々見てまわりたいんだけど・・・。」
「す・わ・れ! あ、そこの2人掛けの左側に座れや。makkoお気に入りの席やで。」
「えぇッ!? そんな高貴な座席に俺が座っていいの!?」
予想通りの反応に、ニヤリと笑うChiyu。
「ああ、モチええよ〜。もしかしたら、お前がマジメに働き続けたら、makkoからご褒美もらえるかも知れへんで。」
「うっわ!マジか!」
「マジやマジ。」
だってお前はmakkoの・・・、言いそうになって喉元で止めた。
「さて、俺は先方迎えに行ってくるわ。」
「ん?社長のお前より偉い人っぽいじゃん?誰だよ、先方って。」
「あ〜・・・、まぁ、ぶっちゃけ俺より権力あるかもな・・・。まぁ、連れてくるから、大人しく待・・・」
コンコンッ
「ッッッ!!?」
ドアを叩くノック音に、Chiyuは顔を青くした。
yujiにジェスチャーで立てと合図する。
半信半疑のまま立ち上がると、同時にドアが勢いよく開いた。
「ねぇ、ちょっと!遅い!!」
「え・・・―?」
yujiは自身の目を疑い、何度かこすったが、目の前のその人はどうやら幻想ではないようだ。
「ま・・・makko・・・!?」
小さくつぶやいてみても、実感なんてちっともわかなかった。
ただしかし、突然現れたその人は実に美しい容姿の持ち主だった。
短めのボブヘアに切り揃えてある緑の黒髪に、淡い桃色のノースリーブのドレスの袖口からのぞく白くて細い腕。
そして顔のパーツは、まるで造り物のように整っていた。
茶色い大きな瞳を囲う長い睫毛と、高すぎもせず、低すぎもしない鼻、元々が赤く形の良い唇、柔らかそうだがすっきりとした形の豊頬・・・。
それらのパーツがバランスよく配置されている。
アジアンビューティーに分類される美人だった。
その美人の視線が、ふとyujiに向く。
目を細めてなめるような艶めかしい視線に、yujiはたじろいだ。
「・・・ふうん。」
「ちょ、makko! お前来るの早いっちゅうねんッ!応接室で待っとれ言うたやろ!」
「だって、遅いんだもの。ねぇ、それより新しいマネージャーは?」
(あ、れ・・・? makkoってこんなキャラだっけ・・・?)
過去のインタビュー等を思い返す。
その誌上やテレビの中では、いつも聖母のように微笑んでいるイメージしかなかったのに。
今、チラリと盗み見ると、唇をやや尖らせて、不機嫌そうな表情を浮かべていた。
(ヤベぇ・・・。すんげー可愛いいんだけど・・・ッ!!)
初めて見る一面に胸が高鳴る。
Chiyuの発言や態度から、この人が本物のmakkoだということは、とっくに察しがついていた。
「・・・まさか、彼が新しいマネージャーなんて冗談言わないでね?」
「いや、・・・そのまさかやねん。」
「はぁ!? ・・・本気で言ってるの?」
「俺は嘘つかへんわッ!本気やで。」
この時、ただmakkoを見つめていたyujiには、その会話の意味が分からなかったが、とりあえずmakkoの生声をしっかりと耳で聴きとめた。
美人は声も美しい。
TV越しとは印象が少し違う。
「すいませんッ!遅くなりましたッ!」
「やっほー。マネージャー見に来てやったよ〜。」
「ぺーちゃんッ!!・・・となんや、お前も来たんか、武瑠。」
部屋に入ってきたのは、暗い茶髪でスーツ姿の華奢な青年と、テレビでも見たことある(気がする)金髪の青年だった。
スーツの青年は、ぺーちゃんと呼ばれていて、Chiyuを見るなり、ハッと何か気付いて彼に歩み寄る。
「社長、ネクタイ曲がってますよ?」
「お、・・・ありがとな、ぺーちゃん。」
何故かお互いの語尾にハートマークがあるかのように感じたyuji。
二人の関係がナゾめいたものになった。
「ね・ね・ね、makkoの新マネージャーって、このさえなさそーな奴?」
「は?俺ぇ?」
金髪の武瑠と呼ばれた青年が、yujiをいろんな方向から物色するように見る。
それから、プッと笑った。
「ええ〜!?マジなの?とぼけた表情してるし、なんかダッセーし・・・、makkoにつり合わない!」
「な・・・ッ!お前なんなんだよ!?」
「なんなんだよって、知ってるでしょ〜? 今をトキメク人気演技派、若手俳優の武瑠クンに決まってんじゃん!」
と、生意気な青年はビシッとポーズを決める。
まるでポスターのようだが、yujiは全くの興味も持てなかった。
「あー、なんかmakkoの出てるドラマに出てた気がする。」
「はぁ〜!?気がするって何だよ!主演だっつの、makkoとダブル主演なの!恋人役だってのに!」
「あー、もう、お前らやめんかい!makkoがいるんやぞ!」
にらみ合っていた2人は、一瞬で姿勢を整える。
「・・・ねぇChiyu。とりあえず、その安っぽいスーツどうにかしてね。じゃあ、また明日ね。おつかれ。」
「あ、待ってよ、makko!」
涼しげな表情でスタスタと部屋を出ていくmakkoの後を、武瑠が追っていく。
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