novel

□Life 2Die
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「わっ!」
さっきまで1人分程空けて座っていた少年が、一気に距離を縮めてくる。
キラキラと大きな瞳を輝かせて、男性を見つめた。
少年の突然出した声に反応して、母親たちが、一斉に、ベンチに座る2人を、疑いに満ちた視線を向ける。
慌てて、ジェスチャーで黙らせた。
「ちょ・・・ッ!違うって。君、誰?」
「んーとね、武瑠。ねぇねぇ、俺をどこか遠くへ連れて行ってくれない?」
「武瑠・・・?どこかで・・・。」
少年は、見れば見るほど可愛い顔をしていた。
推定年齢は、15歳から17歳くらい。
名門私立高校の制服を、自己流に着崩していた。
シャツの胸元から、蝶と思わしきタトゥーが覗く。
『どこかで・・・』という、違和感が否めれず、記憶を遡っている最中に、するりと腕に抱きついてきた。
彼の金髪が風に揺れる。
金色の間から、銀色に光るピアスが、垣間見えた。
「・・・思い出した。某会社の社長の二男の子だよね?」
「・・・。」
図星、と察した。
お喋りな少年が、露骨に黙ったからだ。
腕を抱きしめる力が、強まった。
「ねぇ、連れてってよ。身代金、けっこー張るよ?」
「そんなこと、簡単に言ったらいけない。君は、凄い立場なんだ。」
「・・・そんなの、俺が決めた訳じゃないし、関係ないよ。」
『どうせ、二男だしね。』笑った顔にえくぼが浮かぶ。
『今は、家に帰りたくない。』覚悟した目だった。
『ねぇ、いいでしょ?』すがるように言われる。

目撃者は多数。
しかし、誰もが記憶に薄いという。
証言によると、高校生くらいの男子が、20代前半から半ばの男と、その男の車に乗り込んでどこかへ行ってしまったらしい。
また、その男子は、自ら楽しそうに車に乗り込んだそうだ。
ナンバーは見ていなかったらしい。
車種もありきたりで、曖昧、結局は不明。
翌日、家に帰って来なかった息子が心配になった両親が、警察に通報して、誘拐事件として捜査が始まった。
本来、犯人からの電話などのアプローチがない限りは、誘拐として扱われることはないのだが、少年の両親が地元の有力者だったため、捜査本部が立ち上がった。
「すぐ、捕まえてやるで・・・!」
1人の刑事も、その一員だった。
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