novel

□LOVE BIRTHDAY PARTY
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「・・・はぁ。」
「おはよっ!あれ〜、みっちゃん元気ないみたいな?」
登校中、駅で背後から声をかけてきたのは、いつも通りぺーさん基、shinpeiだった。
俺の親友で、よく理解しあえる仲だけど、最近は彼と最もラブラブな時期らしい。
朝から若干顔がにやけていた。
「昨日から恋人が泊りに来るんじゃなかったっけ?」
「あーうん、武瑠は泊りに来てるよ。」
しかし、彼は俺の仕度を待たずに先に登校してしまった。
そのことも含め、shinpeiに話すと、笑われた。
「わ〜ッ!いっときの俺と同じことしてる〜!」
「あー・・・、そうだったね。」
そういえば、朝早くに迎えに来いって言われたこともあったな〜っと思い出す。
その時、shinpeiは彼氏兼弟のChiyuと少しあったのだった。
「それって・・・、どうやって解決したんだっけ?」
「ふふふ。Chiyuがねー、俺の部屋に来て告白してくれたの。」
「ああ、そうか。」
俺はハッと気付いて、目を見開いた。
「みっちゃん達、付き合ってるんでしょ?」
「うん、きっと。ちょっと、そのChiyuの手段マネさせてもらうね。」
丁度ホームに滑り込んできた列車に乗り込む。
俺は、武瑠が思っているよりもはるかに彼のことが好きだった。

中学生の彼は、俺よりも下校時間が早い。
いつもは、武瑠が中学校の門の前で待っていてくれるのだけど、今日はいなかった。
(わかってたけど・・・ヘコむな〜。)
仕方なく、1人で帰宅して、俺は早々に自室に向かう。
彼がリビングにいないことは予感していた。
それはまた、当たっている。
「武瑠・・・。」
「・・・・・・。」
床の布団の上で寝転んでいる彼は、俺をひと目だけ見て顔をそらした。
憮然とした表情の彼の少し空いた隣りの空間に昨夜と同じように寝転がって、目の前の華奢な身体を抱きしめる。
「な、何・・・っ!?」
多少暴れても離れないように腕に力を込めた。
そして、ひどい言葉を投げかけられるより先に、彼の耳元で『好きだよ』という。
ケンカになるより前に言っておけばよかったんだけと、俺は自信が無かった。
彼も彼だ。
自らを捧げてくれる人のことを、嫌いなはずがないのに。
「・・・ごめんね、武瑠。」
それでも、きっと世の中には口にしないと伝わらない想いもあって。
分かっていて、伝えきれなくて、誤解させてしまった俺が悪い。
「みっちゃん・・・。」
彼の手が、俺の手と重なる。
あたたかい手から、鼓動がとくとくと伝わってきた。
ドキドキとしている俺と、ほとんど変わらないくらいの速さで、彼の鼓動も鳴っているのが嬉しくて、彼の肩口に顔を埋めた。
「武瑠が『俺をあげる』なんて言ってくれたのは嬉しかったけど、君に俺のことを好きなままでいてもらう自信が無かったんだ。」
「・・・そんなの、おあいこじゃん。俺だって・・・。」
彼が、少しのスキをついて俺と向き合うように体の向きを変える。
吐息も感じるくらいに、近い距離で見つめ合った。
「好きでいてもらう自信なんて・・・ないよ。でも、だから想いを伝えるために、言葉とか行動で示すんでしょ?」
細身の腕が、首にまわって、抱しめられた。
不完全な安心感に浸りたくて、目をつむる。
「・・・っ!?」
しかし、それは彼にとって別のサインだと受け取ったらしく・・・口付けられた。
甘い感触は心から脳まで溶かしそうなくらい。
少し長めのキスを終えると、少年ははにかむように笑っていた。
久々(・・・っていっても数日かも
しれないけど)に見る彼の笑顔に、俺は嬉しくて後頭部に手をまわして、押し付けるように抱き寄せる。
「誕生日に、武瑠とケンカしてるなんてことにならなくて良かった。」
「うんうん。」
俺らはそのまま、しばらく抱き合っていたのだった。


「はっぴーばーすでーとぅーみっちゃん。」
いつも通りの朝、shinpeiと駅のホームで合流する。
彼は鞄から包みを取り出して俺に渡した。
「プレゼント!」
「ありがとう。」
受け取ろうとした俺の表情を、shinpeiは楽しそうにのぞきこんだ。
「昨日と違うね。・・・ってことは、いいことあった?」
「分かる?武瑠と仲直りできたんだよ。」
「本当?よかったね〜!」
俺達のおかげだねっ!と得意気に笑う彼にうなずく。
「え〜ッ、そんな顔に言われたら、ちょっと照れるっていうか・・・。」
「うんん、本当にそう。」
「えへへ。・・・でも、今日で武瑠帰っちゃうんじゃなかったっけ・・・?」
「えっと・・・。土日延長ってことになりました。」
きょとんとしている彼を残して、俺は丁度いいタイミングで来てくれた電車に乗り込んだ。
「あ、待ってよ!っていうか、どういう意味?」
「そのまんま!」
「・・・ま、最高の誕生日になりそうだね。精神的にも、肉体的にも。」
「・・・精神的にね。」

放課後、中学校の門の前にいた少年は、俺を見ると、走り寄ってくれる。
それが、幸せなことだと俺は改めて分かった。
幸せな誕生日の夕方、手を繋いで帰る。


END
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