novel

□Life 2 Die〜yuji's Happy Birthday〜
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「そういう大切な日・・・何で教えて下さらなかったんですか?」
「え、必要? 俺にとってはmasatoといる毎日が大切だけど。」
思わぬ台詞に、つい反論の言葉を失って、顔を朱に染める。
すると、彼はニヤニヤ笑いながら、初心な少年の頭を撫でた。
「違った?」
「違わないです、けど・・・お祝いとかあるじゃないですか。ほら、プレゼントもちゃんと考えて渡したいですし。」
「んー・・・、プレゼントか。」
頭を撫でる手が、肩にまわって、彼に抱き寄せられる。
「お前がいてくれるだけでいいよ。」
「yujiさん・・・ッ!」
彼の一歩先をいくような言動は、いつもmasatoを甘くときめかせた。
どんなにありきたりで恥ずかしいこともさらりとしてみせるyujiに、masatoは毎日のように恋している。
共に過ごす時間も、離れている時間でさえも彼にひかれていて、常に好意を募らせてしまっている。
だからこそ、彼を祝いたい。
「・・・何だよ、何かコメントしてくれねーと俺、微妙じゃん。」
「あ、はいッ! えっと・・・。」
そっとyujiの背中に手をまわした。
「僕・・・そんな風に言ってもらって、とても嬉しいです。でも、僕もyujiさんが好き・・・だからこそ、お誕生日を祝わせてほしいです。」
「・・・・・・。」
何も言わずに、masatoの肩を押して、2人が離れる。
きょとんとしていると、yujiは仕方なさそうに笑っていた。
「別に、欲しいものなんてなんにもねぇよ。」
「そう言われると困っちゃいますよっ!図書カードとかにしたらいいですか?」
「あー・・・、確かに嬉しいかもな。」
「そういえば・・・、先程のお手紙の中にも、カードの他に何かが・・・」
封筒の中の紙包みを出して、yujiに見せる。
開けていいよというアイコンタクトを受け取って、ゆっくり封代わりのテープをはがした。
中に入っている2ツ折りの紙には、masatoも見覚えがある。
よく図書カードが入っているものだが、案の定そうだった。
それに、masatoが見たことのないような多額だった。
「あ・・・、もうありますね。」
「・・・・・・。」
苦笑しているmasatoから図書カードを渡してもらい、しぶしぶ仕舞う。
「yujiさんの欲しいものがよく分かってらっしゃるんですね。」
「分かっちゃいねーよ。」
背けた顔は、照れたようでもなく、すねているようでもなかった。
彼は、寂しさに押しつぶされそうな表情をmasatoにかくして、無表情を取り繕っていた。
「では、僕は違うものを考えますね。」
「・・・・・・いらねぇって。」
微かに震えている彼の身体をmasatoは思い切って抱きしめる。
それが自分に出来る精一杯の支えだった。
少しだけ背の高いyujiは、masatoの存在を確かめるように後頭部や腰に手をまわした。
「yujiさんが喜ぶものを絶対選んでみせますね。」
「・・・・・・。」
何も言うなと言わんばかりに後頭部を胸板に押しつけられ、それ以上は口をつぐんだ。


次の日の土曜日は、午前中から店に訪れて、masatoはレジのカウンターで勉強をしていた。
yujiは仕事関係で出掛けてしまい、留守番も兼ねているから今は1人だ。
(う〜ん・・・、yujiさんのプレゼント何にしよう。)
ふと手を止めて、頭を抱える。
よく考えてみると、masatoはyujiの趣味を知らなかった。
(せめて一つでも分かってたらな・・・。)
プルルル・・・
「あ、電話。」
レジの近くの子機を手に取り、耳にあてる。
「もしもし。」
『あ、masato君?俺・・・銀侍だけど。』
「あぁ、お久し振りです。」
電話をかけてきたのは、yujiの双子の弟の銀侍だった。
masatoは未だ会ったことはないが、yujiとよく似ているらしい。
「どうされました?あいにく、yujiさんは外出されていまして・・・。」
『マジか・・・。兄ちゃんがマンガの新刊買ってるかなんて知らないよね?』
「すいません、分かりません・・・。」
『そっか〜・・・。ごめんね?』
銀侍は、yujiよりも物腰が柔らかい。
とて、声はよく似ているから、おもしろいのだ。
『まぁ、兄ちゃんに伝言してくれない?あ、誕生日の件も含めて。プレゼント考えとけだけでいいから。』
「あ・・・! そうだ、銀侍さん。ちょっと提案いいですか?」
『ん、何々?』
急に降臨したアイデアに、masatoはつい笑顔になった。

「スーツなんて何年ぶりに着るんだろうな。」
「yujiさん、とても似合ってます・・・! かっこいい・・・!!」
その日の夜、yujiとmasatoは食事に出掛けた。
それも、ドレスコードのある高級店だ。
masatoの家族からのプレゼントらしい。
「6時半に予約なので、早く行きましょう。」
「ああ・・・。masato、やけに楽しそうだな。」
「えへへ、そうですか? ・・・そうかも知れませんね。」
ニコッと微笑む彼も、真新しいスーツを纏っている。
未だ着慣れていなくて似合ってないが、立派な姿だった。

「お、masato君こっち!」
「銀侍!?」
「お待たせしました。」
2人の到着を待っていたのは、yujiによく似た青年。
無論銀侍なのだが、yujiはその顔を見るなり、頭を小突いた。
「何でお前がいるんだよ!」
「何だろ・・・、masato君とデート。」
「えっ!?」
「てめー、ブッ殺す。」
冗談を言うところは、yujiとは似ていないようだ。
しかし、意外とまんざらでもなさそうな銀侍は、masatoの肩を抱いた。
「それにしても、masato君って美少年だね〜。兄ちゃんには勿体ない!」
「ええッ、そんな・・・ッ」
「汚れた手で触るな。」
2人を引きはがして、masatoを保護する。
肩を片手で払ってあげていると、弟がひどいっ!と文句を吐いた。
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