novel

□Special Valentine With Alterna.
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「・・・あ、ちょっとyuji。」
「どうしたの?」
その日の帰り道、台本を覚えていたmakko・・・基、masatoは、yujiが運転する車が信号で止まった時に顔を上げた。
「ごめん。ここで降ろしてくれない?」
「え、いいけど、買い物?ちゃんとした所に停めて・・・」
「いい。あと、先に帰っててね。じゃあ。」
伊達メガネをかけて、ファーのコートの彼は、歩道側のドアを開ける。
「・・・夕ご飯は、一緒に食べよ。」
「え、う、うん・・・っ!!」
yujiが笑ったのが分かって、自分自身も笑ってしまった。
それが恥ずかしくて、何も言わずに車を降りる。
赤信号が青に変わり、ピッタリ扉が閉まったyujiの車が駆け出していった。
(・・・あーあ・・・、すっかり恋人同士みたいになっちゃった。)
ベージュのコートのファーが風になびく。
ほんの少し寒い。
(何買ったらいいんだろう。)
masatoは、待ち合わせの場所まで急いだ。

「あ、こっちこっち〜!」
「あ・・・、うん・・・。」
2人が、こちらに向かって手を振っている。
1人は、スーツの華奢な青年、つまり、shinpei。
しかし、もう1人は・・・
「た・・・、武瑠?」
小声でたずねると、彼は満足そうにうなずいた。
彼、といっても、ロングのウェーブした茶髪の、ワンピースを着た女の子。
・・・男性であるが。
羽織ったトレンチコートのすそを少しつまんで、すましたポーズをする。
「可愛いでしょ?バレンタイン仕様。」
「明日、その格好して見せてあげればいいのに。」
「明日はもっと可愛い格好するもん。・・・2人には見せられないけど。」
「見せられない・・・って。」
どんな格好なのだろう、と考えて、すぐに振り払った。
見せてあげる、というのは、彼の恋人のMITSURUに、だ。
「それじゃ、行こうよ。ぺーさんは、もう用意してるんだって。」
「そうなの?参考までに、何にした?」
「ワインと、そのワインに合うチョコレートです。」
「あ〜、Chiyuはお酒好きだもんね〜。」
計画性のある彼のことだから、ずっと前から計画していたのだろう。
しかし、参考にするために聞いたものの、yujiはあまり酒を好まないことを、masatoは知っていた。
「う〜ん・・・、どうしよ〜・・・。」
武瑠についてやってきた、デパートの地下。
女性でごった返しているバレンタインのイベントスペースで、makko達はさまよう。
「俺はね、もう何にするか決めてるんだ。」
「え、そうなの?」
「うん。この間、みっちゃんとTV見てて、食べてみたいねーって2人で話してた、バレンタイン特集で紹介されてたチョコ。」
にこっとえくぼを頬に浮かべて、彼は笑う。
内心で、masatoはあせった。
(どうしよ・・・、僕だけじゃん!決まってないの・・・)
「あの・・・、yujiさんがお好きな食べ物とか、分からないんですか?」
「え?あー・・・、えっと・・・」
考えてみても、思いつくのは料理ばかりで、masatoはハアッと溜め息をつく。
「・・・ダメだ、分かんない。」
「そうですか・・・。」
苦笑をし合ったが、makkoとしては穏やかでない。
(恋人の好みが分からないって・・・。)
肩を落とすと、shinpeiが慌ててフォローする。
「で、では嫌いな食べ物とかはどうですか?」
「えーっと・・・、あッ!」
目を輝かせたmakkoは、shinpeiの手をとって握った。
「そうだよ!yuji、くるみ食べちゃダメだった。」
「アレルギーとかですか?」
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