novel

□Boom Boom Neat
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いくつか日が経っても、Shinpeiは気が付かない。
部屋の壁にかけてあるカレンダーは9年前の6月で止まっているからだ。
カーテンが閉まりきったままの窓の外なんて、しばらく見ていないけど、差し込んでくる光から察して朝だった。
ノックの音に反応して、目を覚ます。
「おはよう、武瑠だけど。」
「あ・・・、うん。」
訪ねてきたのは、幼馴染みで今や唯一の友達の武瑠。
ベットから抜け出して、扉の鍵を開けた。
そこにいるのはいつもと変わらない、幸せそうな青年。
「はっぴーばーすでー、ってことで。」
「ああ、うん。入って。」
彼は王国に入ることを許されている人だ。
年下とて、気が合う彼はよく遊びに来てくれる。
「はい、これプレゼント!」
扉をきっちりしめたShinpeiに、紙袋を差し出す。
「ありがとう。開けてみていい?」
「うん!」
やはり、いくつになってもプレゼントをもらうのは嬉しい。
わくわくしながら中を見ると、数枚洒落た服が入っていた。
「ありがとう。でも俺、知ってると思うけど、外出なん・・・」
「まーまー!! 多分ね、着てくれる日がくるよ。」
武瑠はShinpeiを足元から始まって全身を見た。
ダボダボのジャージ、肩の高さより少し長い髪、顔半分を覆い隠すほど長い前髪。
「・・・サイズ、合ってればいいんだけど。ぺーさん思ったより華奢だったね。」
「どういう意味・・・?」
Shinpeiの顔色が変わる。
彼は密かに細身なことを気にしていた。
「あーっえっと・・・。実はもうひとつあるんだよね。」
「え、そうなの?」
「うん!あのね、おじさんとおばさんから。」
それを聞いて、『いらない』と言い出すと思っていたのに、逆に目を輝かせたShinpei。
キラキラした瞳をして、両手を差し出す。
「なになに?」
「・・・それがさ、ちょっと大きくて入りきらなかったから、今部屋の外にあるんだけど・・・。」
「今すぐちょうだい!」
「・・・はぁ。」
期待に満ちた顔から目を背け、武瑠は「取ってくるね。」と部屋を一度出る武瑠。
そして、すぐに帰ってきて、再びコンコンっと扉をたたく音がする。
「も〜、武瑠なんでしょ?早く、早く〜」
「はいはい・・・。」
扉が開いて彼が入ってくるが、手には何も持っていない。
だが、その代わりがあった。
「失礼しますー。」
「・・・・・・。」
身長、170センチ以上はあるであろう長身で金髪の男が、武瑠に続いて部屋に入った。
愛想良さそうに笑っているが、彼は不法侵入だ。
Shinpeiが許していない者が部屋に入ることは許されない。
しかし、いとも簡単にその掟を破られてしまったのだが。
「ぺ・・・ぺーさん・・・?」
「・・・・・・。」
無言で、くるっと2人に背を向けたShinpeiは、そのままベットにダイブする。
武瑠は慌てた。
「ちょ、ぺーさん!そんなに落ち込まなくても・・・。」
「・・・・・・。」
「まずは、話を聞くだけでも・・・って。」
「・・・すぅ。」
聞こえてきたのは微かな寝息。
武瑠は、振り返って苦笑を長身の男にみせた。
「・・・寝た。起こした方がいいよね?」
「あ、ああ・・・。」
向き直し、うつ伏せのShinpeiの身体を激しく揺らしながら、大きめの声で名前を呼ぶ。
「・・・今、Shinpeiは寝てるので何も聞こえないです。」
「こらー、現実逃避しないの!ちょ、ねぇ、何か持ってきたって言ってなかったっけ?」
後半は、長身の男に向けていた。
『ああ』と反応して、彼は手に持っていた紙袋から、箱を取り出す。
「Shinpei君、今日誕生日やって聞いたから、プレゼント持ってきたんやけど。」
「・・・・・・。」
「・・・えっと、Shinpei君ゲーム好きって聞いたから、俺の知り合いのおすすめゲームやねんけど・・・。」
ピクンッと小さな肩が『ゲーム』という言葉に反応して震える。
「今日発売みたいやし、Shinpei君もまだ持ってへんかなって思って。」
「!!」
起き上がるとすぐに長身の男の方を向いた。
彼が持っている少し大きめの箱を見て、目を輝かせる。
「・・・ぺーさん、嬉しいみたい。」
「あ、そうなん?」
そう言って微笑むと、彼はShinpeiにその箱を持たせた。
「これ、プレゼント。」
「・・・・・・。」
彼は、箱を受けとるとためらうことなくギュッと抱きしめる。
そして、少しだけ幸せそうな表情でソファに座った。
ソファは、大きなテレビの前にある。
「ちょ・・・、ぺーさん。お礼くらい・・・」
「ええよ、気にせんで。」
「でも・・・。」
そんな2人の会話なんて全く聞いていないかのように、Shinpeiは、慣れた手付きでゲームを開封していた。
「・・・今はそれでええ。最初なんて、拒否られるのが普通やし。」
「・・・そう・・・か・・・。」
長身の男は穏やかに微笑みを浮かべたまま、Shinpeiの近くに、ソファに腰かけた。
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