novel

□Boom Boom Neat
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「それじゃあぺーさん、あとはそいつと話してね!俺はもう帰るから。」
「え・・・。」
「じゃあね!」
武瑠は、顔をあげたShinpeiに満面の笑みを向ける。
そして、手を振りながら部屋を出ていった。
「・・・薄情者め。」
「や、Shinpei君。俺はこういう者です。」
「・・・・・・。」
彼は、小さな紙・・・名刺を差し出していた。
無論、それを無視して、ゲームを開始する。
「・・・ま、じゃあゲームやりながらでええし、なんとなく聞いててな?」
「・・・・・・。」
「まず、俺はCHIYUって言います。NPOの一環『Boom Boom Neat』の者やねんけどな。」
Shinpeiは、新たなセーブデータを作成し、最初のプロローグをじれったそうに見ていた。
「そっから、俺はご両親の依頼を受けて、Shinpei君のところにハケンされたんや。何でかわかる?」
やっと中半まできたプロローグ。
主人公らしき少年が、さも勇敢そうだ。
「それは・・・Shinpei君に更正してもらうためや!」
「・・・ふぅ。」
自動的に進行するプロローグのアニメーションを終えて、やっと自由に行動ができるようになった。
横目でCHIYUという名の彼を見ると、苦笑をしている。
仕方なく、ゲームの説明書の上に重ねられた名刺を、説明書を取る振りをして手に取った。
「・・・ふーん。・・・CHIYU君・・・。」
「そうやで。君付けって、ちょっと新鮮やな・・・。」
「・・・っ!」
Shinpeiは、少しだけ考えて、ハッと気がつく。
そういえば、CHIYUは年上かも知れないのだ。
それに、初対面の彼に君付けはどうだろうか・・・。
「・・・・・・。」
「ま、俺の紹介はこんなとこやな。」
「・・・ふぅ。」
変わらぬ調子で話を続けていくCHIYUに聞こえないような大きさで、安心の溜め息をついた。
ゲームを再開して、画面を見る。
「・・・で、他に何かある?」
「そーやな・・・。あ、俺今、『Shinpei君』って呼んでるけど、もし嫌やったら変える?」
「は・・・?」
「例えば、さん付けとか。勿論、君付けのままでもええし、いっそ呼び捨てとか・・・」
CHIYUの方を向いたりはしないが、Shinpeiははっきりとした声で言った。
「ぺーさん・・・。」
「え?それ?」
「・・・・・。」
黙ってしまうShinpei。
前髪にかくれそうな唇を、キュッと噛みしめていた。
「わ、分かった!ぺーさんな。」
「・・・・・・。」
「呼び方ってな、思ってる以上に大切やねん。2人の距離を表すって・・・あれ?」
ゲームがセーブ中の画面になった時、Shinpeiの横顔を彼が見つめる。
「・・・ぺーさん。」
「え?」
つい振り向くと、長い前髪の奥の瞳と、彼の瞳の高さが合った。
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