novel

□swee†birthday
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「んー・・・みっちゃん・・・?」
「あ・・・武瑠・・・。」
すぐ傍らで眠っていたのは、MITSURUの恋人である武瑠だった。
眠たそうに目をこすり、起き上がった。
「おはよう!」
「おはよう、じゃなくて・・・、これ・・・」
「あー、えっと、俺今日誕生日じゃん?」
「そうだねぇ。」
武瑠は甘えるようにMITSURUの首に抱きつく。
そして、MITSURUの頬にキスをした。
「だから、プレゼントにみっちゃんをもらおうと思って。」
「あー・・・うん・・・なるほど・・・。」
よく見てみれば、そこは武瑠の家の寝室だ。
昨夜のことを思い返してみる。
(そういえば・・・、昨夜は武瑠がコーヒーをいれてくれて・・・、そこらか思い出せない・・・。)
昨夜は泊まる予定ではなかった。
彼の誕生日のために、色々と準備をするためだったのだが・・・。
「みっちゃん、大好きだよ!みっちゃんもだよね?」
「ああ、もちろん。だから、ケーキを作ろうと思ってるからほどいて?」
「ケーキ・・・!?」
「うん。あと、武瑠の大好きなパスタも作ってあげる。」
ニッコリと笑い、悪意のない素振りを見せる。
武瑠は困った顔をした。
(よし、もう一押し・・・)
「それにね、縛られたままじゃ君を抱きしめられない。」
「ほどく!」
「ありがとう。」
彼が、手近にあった雑誌を手に取る。
いかがわしい雑誌だった。
(月刊SM・・・。)
それをパラパラとページをめくり、とある見開きのページをMITSURUに突き出した。
MITSURUに施してある縛り方の詳しい手順が載っている。
「あのね、ほどき方分からないから、一緒に考えて?」
「その本に載ってないの?」
「来月号に載るって書いてあるけど、俺来月まで待てない。」
『俺もだよ・・・』と内心で呟き、面では笑した。
「はさみとかで縄切ればいいじゃん?」
「えー、再利用できなくなっちゃうじゃん!それに、縄丈夫だし・・・。」
「再利用・・・?」
「再利用。」
MITSURUは思った、自分がどうにかしなくては何も変わらない、と。
まず、雑誌のページを見た。
「再利用するかしないかは、置いたとして・・・。この手順の逆をたどっていけばいいんじゃない?」
「逆・・・?こういうこと?」
武瑠は、結び目に手をかける。
「そうそう。それで、こうやって。」
「こう?こう?」
「そうそう、いい感じ!」

「いっただっきまーす!」
「しっかり食べてね。」
試行錯誤の末、なんとか縄から解放されたMITSURUは、約束の通り、まずは武瑠を抱きしめてから食事作りに取りかかった。
武瑠の好物ばかり作り、テーブルに並べると、彼の少年のような瞳が輝いた。
「それにしても・・・、何で縛ったの?」
「みっちゃんを俺のものにしたかったから?」
「あー・・・、うん。それであの夢か・・・」
「んん?夢?」
モグモグと口をせわしなく動かしながら、武瑠は首をかしげる。
MITSURUの目が泳いだ。
「・・・教えてよ。」
「んー・・・、ちょっとね。」
「・・・実は睡眠薬残ってるんだよね、数回分。」
「あ、教えます。」
イタズラな口調に、あっさりと負けてあの悪夢を白状した。
問い詰められて、それは丁寧に話してしまう。
「・・・っていう感じ。ごめんね、なんか・・・。」
「ねぇ、みっちゃん。」
食器を置いた、武瑠の手にはあの縄があった。
「・・・それ、実現させてみない?」
「・・・え?」
彼が立ち上がり、ニッコリ微笑む。
もう、食事は平らげて、済んでいた。
一歩ずつ、MITSURUに迫ってくる。
「いやー、あの・・・。」
「みっちゃんは、その夢の通りに俺をしてくれていいから、さ。」
「いや、駄目だって・・・って・・・。」
壁まで追い詰められて、下からの恋人の色めいた視線に息をのんだ。
「夢の続きを見よう?」

甘い台詞を吐く唇にキスをして、耳元で囁く。
「誕生日、俺をあげる。だから、君はもう俺から逃げられない。」
出口のない迷路だ、と武瑠は笑った。


END☆
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